公立小学校にはない私立小学校の特徴とは?メリットやデメリットについて解説
近年、充実した英語教育やICTの活用などに積極的に取り組む私立小学校は、人気が高まっています。公立小学校とは違った多くの魅力があるので、子どもを通わせることで大きな成長につながる部分もあるでしょう。
私立小学校には独自の教育理念やカリキュラム、充実した教育設備などさまざまな特徴があります。小学校選びの参考になるよう、この記事では私立小学校のメリットやデメリットなどをご紹介します。
私立小学校とは
国が運営する国立小学校や地方公共団体が運営する公立小学校とは異なり、私立小学校は学校法人が運営しています。私立学校は、独自の特色ある教育を行いたいという志をもつ人々が、自分の財産や賛同してくれる人々からの寄付を集めて作る学校です。※1
2023年度現在、私立小学校の数は全国で244校校あります。国立小学校は全国で67校、公立小学校は全国で18,669校ありますので、私立小学校の割合は1.3%となります。※2
私立小学校のメリット
私立小学校のメリットとして、さまざまなことが挙げられます。先生から授業を受けて友達と交流するといった基本的な学校生活の流れについては、公立小学校とそれほど大きく変わりません。しかし、私立小学校には独自の教育理念があり、教育内容に力を入れているのが特徴です。だからこそ、子どもが大きく成長できるきっかけにもなります。
独自の教育理念・方針
私立小学校には創立者の建学の精神があり、その精神に基づいた独自の教育理念・方針があります。各学校の教育理念は異なるため、理念に沿った教育がそのまま各学校の個性となります。情操教育や一貫教育、宗教教育など、さまざまな教育方針があり、公立小学校と大きく異なります。私立小学校は学校法人が運営している一方で、公立は市町村など地方公共団体が運営しています。そのため、公立では学校間で格差のない均質な教育が求められます。どのような子どもに育てたいか、子どもにどのような教育方針で学んでほしいかといつた教育環境を選べるのが、私立小学校の魅力です。
カリキュラムが充実している
教科専科制や宗教、充実した英語教育など、私立小学校のカリキュラムには充実した教育カリキュラムがあります。教科専科制のある学校ではその教科を専門とする教師が指導するため、専門性の高い授業を受けられます。公立小学校では一般的に担任教諭がほとんどの科目を指導しますが、音楽や図工、家庭科などの科目については専科の教員が教えており、2022年度からは小学校高学年において教科担任制が始まっています。その一方で、私立小学校では1年生から全教科で実施している学校もあります。
専科の教員が指導する授業のなかでも、例えば音楽の授業でヴァイオリンを使用したり、オーケストラを編成したりといった特色のある私立小学校もあります。また、2020年度から小学校でのプログラミング学習が必修化されましたが、私立小学校のなかには1年生からICT教育を行う学校もあります。英語の授業についても、公立小学校では小学校3年生から行いますが、私立小学校では1年生から週2時間の英語の授業を行う学校もあります。
私立小学校には、キリスト教(カトリック、プロテスタント)、仏教などの宗教教育を行う学校もあります。教育基本法の第9条には、「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教活動をしてはならない」とあり、国立および公立の学校では宗教教育が禁止されていますが、私立では禁止されていないため、宗教教育を行うことが可能です。
一貫教育を受けることができる
一貫教育も私立小学校の特徴です。大学附属の私立小学校の場合は16年間、小中高一貫校の場合は12年間の一貫教育を受けられるので、長期的な視点で教育を構築していくことが可能です。また、大学附属の私立小学校であれば、中学受験・高校受験・大学受験がないため受験勉強に追われることがなく、長期的な目標を設定して多様な個性や資質を育むことができます。
また、小学校と中学校の交流がある学校や、小学生から大学院生までが1つのキャンパスで学ぶ学校もあります。小学校と中学校が共同で行事を行ったり、多様な世代のさまざまな価値観を持つ人々と触れ合ったりすることで、学校の枠にとらわれずに交流ができます。これにより、学生同士の連携が深まり、スムーズな進級や学習環境の継続が可能になるというメリットがあります。
教育施設・設備が充実している
私立小学校には、充実した施設が整備されていることも特徴です。冷暖房はもちろんのこと、学校によっては体育館や運動場、プールなども新しい設備を取り入れているところがあります。さらに、テニスコートや日本文化を学ぶための和室などがあるほか、図書館の蔵書数が多い学校や、音楽の授業で使える楽器の種類が多い学校などもあります。
また、ICT教育やオンライン授業に対応できる施設が充実している学校や、タブレット端末を1人1台貸与するなど時代に合わせた教育を行う学校もあります。
教員の異動が少ない
公立学校の教員は地方公務員であり、4~6年程度で県内のほかの学校へ異動するのが一般的です。一方、私立学校では教員の異動が少ないので、教育方針が安定しやすく、質の高い先生に継続して教えてもらうことができます。教員の異動が少ないことで、その学校ならではの校風が表れやすいのも特徴です。
いじめや学級崩壊に繋がりにくい
複数の教師が一つのクラスの授業を担当することにより、担任教諭以外の教師も含めて複数の視点でクラス内の人間関係や雰囲気を把握することができます。担任教諭の目が行き届かないところまでカバーすることができるため、いじめや学級崩壊に繋がる可能性のある些細な行動や言動を未然に防止することができるようになります。
私立小学校のデメリット
私立小学校には数多くのメリットがありますが、デメリットが一つもないわけではありません。通学時間や学費など、公立小学校と比べた場合にデメリットに感じることもあるため、私立小学校を選択する際に検討しておく必要があります。
通学時間が長い
公立小学校については、ほとんどの場合は近隣の学校へ徒歩で通学することになるため、通学時間が短くて済むことが一般的です。一方、私立小学校の場合はバスや電車を利用して通学するケースもあるため、通学時間が長くなることがあります。1都3県に在住し、子どもを私立小学校に通わせている母親330名を対象に、アットホーム株式会社が行った「私立小学校の通学時間」等に関する調査では、私立小学生の通学時間は平均36分で、1時間以上かけて通学している子どもも2割弱いました。※3
通学時間が長くなることで、友達と遊ぶ時間や、習い事や勉強にかける時間が限られることは、私立小学校に通うデメリットといえます。
高額な学費がかかる
入学金、設備費、授業料などがかかるため、私立小学校は公立小学校よりも高い学費が必要になります。文部科学省が行っている「子どもの学習費調査」では、1年間に保護者が支出した子ども一人あたりの学習費について、以下の結果が公表されています。※4
令和3年度
学校の種類 | 合計費用 | 学校教育費 | 学校給食費 | 学校外活動費 |
---|---|---|---|---|
私立小学校 | 約166.7万円 | 96.1万円 | 4.5万円 | 66.1万円 |
公立小学校 | 約35.3万円 | 6.6万円 | 3.9万円 | 24.8万円 |
私立小学校は公立小学校と比べると約5倍の費用がかかるので、家庭の収入によっては将来の資金計画や生活設計を考慮することが大切です。
人間関係が狭まる可能性がある
公立小学校には、同じ地区に済むさまざまな家庭環境で育った子どもたちが集まります。一方、私立小学校には家庭環境や教育水準などが同じような子どもたちが集まるので、交友関係が狭まってしまうことがあります。
また、公立小学校であれば、友達と近所で一緒に遊ぶ機会も多いですが、私立小学校だと電車やバスで通学する場合もあるので、近所の人間関係がなかなか作れないこともあります。
家庭の教育方針を決め、子どもに合った教育環境を選びましょう
私立小学校には、公立小学校にはないさまざまな魅力があります。私立小学校には公立小学校にはない独自の教育理念やカリキュラムがあり、充実した教育設備を備えていることが多いです。
しかし、私立小学校に通うためには、通学や学費について十分に考慮する必要があります。また、学校によって特徴やカリキュラムが異なるため、家庭の教育方針や子どもの性格や能力をよく考慮し、子どもに合った教育環境を選ぶことが重要です。
参考資料
※1 文部科学省 私立(しりつ)学校について教えて!
※2 一般財団法人日本私学教育研究所 学校数の推移
※3 アットホーム株式会社 「私立小学生の通学時間」等に関する調査
※4 文部科学省 令和3年度子供の学習費調査