スパイラル学習とは?サピックスでも行われている効果的な学習法
スパイラル学習とは、発達や学年の段階に応じた反復学習のことであり、サピックスなどの学習塾でも採用されています。この記事では、スパイラル学習のメリットや注意点についてご紹介します。
スパイラル学習とは
2008年に告示された学習指導要領より、理数教育の充実に関するトピックとして「反復(スパイラル)による教育課程」が盛り込まれるようになりました。「反復(スパイラル)による教育課程」は、発達段階や学年の段階に応じて算数・数学の内容に系統性を持たせ、内容の一部を重複することで知識を確実に定着させるような教育課程の編成を目指す文言として使われています。※1
スパイラル学習とは、発達や学年の段階に応じた反復学習のことです。同じ教材や内容を使いながら、何度も繰り返し勉強することで、少しずつ難しい内容に挑戦する学習方法です。同じ内容を何度も勉強することで覚えやすくなり、さらに少しずつ難しくしていくことで理解が深まるというメリットがあります。
サピックスで導入されている復習中心の学習法
有名中学を中心に高い合格実績を誇る進学教室サピックスでは、学習の定着度を持続させるために、カリキュラムを「らせん状(スパイラル)」に構成しています。授業で学び、家庭で復習した単元が、時間をおいて忘れかけたころに、異なる視点かつ難易度も少し上がって再び出てきます。そこで再度学び、復習するということを繰り返します。学年のなかで同じ単元が何度も繰り返し扱われ、学年が上がるごとに内容もより高度になっていきます。※2
このスパイラル方式のカリキュラムが、サピックスの特徴でもあります。
スパイラル学習の例:英語
スパイラル学習は、学校や進学塾だけで用いられるものではありません。スパイラル学習の例として、英語学習を取り上げます。
英語学習にスパイラル学習を取り入れる場合、同じ題材を異なる複数のレベルで学び、英語力を引き上げていきます。レベルが上がるごとに、文章の長さや難易度が増しますが、複雑な英文も段階を踏むことで無理なく理解できます。
例えば、一度ですぐに理解するのは難しい英語の長文が読めるようになるまでに、3つのレベルを設定します。最初のレベルでは、より簡単な語彙を用いて文型のシンプルな文章から学びます。次のレベルでは、同じシチュエーションや同じテーマの文章でありながら、よりネイティブが普段使う語彙に近い単語を用いたり、応用的な文型を用いたりします。具体例を挙げると、レベル1では「~is coming soon」というよく耳にする語彙を学び、レベル2では同じニュアンスの「~is being held soon」という語彙を学び、最終レベルでは「~is just around」のような、よりネイティブに近い語彙を学んでいきます。これらのレベルを順番に学ぶことで、最後のレベルでは、難しい英語の長文も一度で理解できるようになるのです。
やさしく短い文からスタートするので、挫折せずに取り組めます。繰り返し学習することで、聴解・読解力が確実に定着するのもメリットです。※3
スパイラル学習は幼児教育にも活用できる
スパイラル学習を幼児教育に取り入れている例もあります。
バンビバイリンガル幼稚園を主体とするオンライン英語幼稚園「Peek-a-Boo」では、同じ題材をさまざまな方法で繰り返し学習するというスパイラルラーニングを活用しています。歌やダンス、ゲームやロールプレイといった遊びを通して、らせん階段を上るように前に習ったことを復習しながら語彙とリスニングを積み重ねるため、子どもたちは飽きることなく英語を身につけることができます。スパイラルラーニング効果として、リスニング力や発音が身につき、異文化に対する興味関心や英語に対する意欲を持てるようになるとしています。※4
スパイラル学習の注意点
スパイラル学習のメリットを活かすには、前に習った内容を充分に理解できていることが必要です。なぜなら、次に出てくる内容は、今よりもレベルの高いものになっているからです。
スパイラル学習では同じ内容を繰り返し何度も学習します。そのため、「この内容はまた出てくるから、次に出てくるときに理解できればいいや」と考えてしまいがちです。しかし、次に習うときはより高度な問題を扱うため、基礎ができていないと何も理解できなくなってしまうことがあります。スパイラル学習において大切なのは、「次に出てくる内容は、今よりもレベルが高くなっているので、それまでに十分に理解しておくことが必要だ」と考え、きちんと復習することです。
そのため、スパイラル学習でうまくいかない場合は、基礎をもう一度習いなおすことをおすすめします。例えば、前に習った内容を復習することで、より深い理解を得ることができます。また、新しい学習内容を習う前に、事前学習をすることも有効です。そうすることで、スパイラル学習で得た知識をしっかりと定着させることができます。
幼児教育においてスパイラル学習を取り入れるときも、次に同じ単元が出てくるまでに基礎をしっかりと復習することを意識し、お父さんやお母さんがお子さまの学習をサポートしてあげるとよいでしょう。基礎ができた単元は、少し難しい内容に挑戦したり周辺の知識にも広げたりすることで、スパイラル学習の効果を高めることができます。「この問題、知ってる!」「これ、前にもやった!」という気づきは、お子さまの自信やモチベーションにもつながるので、ぜひ取り入れてみてください。
参考資料
※1 角田直樹, 吉井貴寿, 下平将揮. スパイラル学習を意図した教材の一提案 -授業デザインのための理論構築を目指して. 上越数学教育研究. 2012; 27: 199-210.
※2 SAPIX 効果的な学習法
※3 株式会社ジャパンタイムズ スパイラル英語トレーニング
※4 ONLINEえいごようちえんPeek-a-Boo