小学校受験と
幼児教育の
専門メディア

公開日:

シュタイナー教育とは?特徴やメリット、デメリット、おすすめの教材を紹介

はてなブックマーク LINE twitter facebook




英才教育のイメージが強いシュタイナー教育。一方、その具体的なカリキュラムや特徴は、あまり知られていないかもしれません。じつはシュタイナー教育は、英才教育とはいっても、テストや通知表がないことをご存じでしょうか?
この記事では、シュタイナー教育のメリットや事前に知っておいたほうがよいデメリット、カリキュラムの特徴やおすすめの教材を紹介します。

シュタイナー教育とは

シュタイナー教育とは、オーストリアの哲学者ルドルフ・シュタイナー(1861~1925)が提唱した、「すべての子どもはユニークな個性をもって生まれてくる」という理念を基にした教育法です。ルドルフ・シュタイナーはドイツを代表する文豪・ゲーテの研究者でもあり、「アントロポゾフィー(人智学)」という思想を確立するなど、教育をはじめ、農業や経済などさまざまな分野で研究と実践を行った人物です。

ルドルフ・シュタイナーは1919年、ドイツに世界初のシュタイナー学校である「自由ヴァルドルフ学校」を設立しました。以降、シュタイナー教育は世界中に広まり、現在は世界70か国に1,200以上の学校と、59か国に1,900以上の幼稚園があります※1。

日本や海外にもシュタイナー教育を受けた著名人はたくさんいます。日本では斎藤工さんや村上虹郎さん、海外では女優のサンドラ・ブロック氏、ポルシェデザイン創業者のフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ氏、アメリカン・エキスプレス元CEOのケネス・シュノールト氏などが有名です※2。

シュタイナー教育の特徴

シュタイナー教育の素数の糸掛け

シュタイナー教育は、「人は7年ごとに成長し、それぞれの発達課題がある」という考え方から、7年周期で区切られています※3。0〜7歳では「からだ」や「意志」、7〜14歳では「こころ」や「感情」、14〜21歳では「あたま」や「思考」を育てることを重視し、21歳を過ぎたあとも、一生にわたって成長課題があると考えられています※3。

シュタイナー学校のカリキュラムには、国語や算数といった一般科目のほかに、特徴的な科目がいくつかあります。「オイリュトミー」と「フォルメン線描(せんびょう)」がその代表です。

オイリュトミーとは、言葉の子音や母音、音楽のメロディーやリズム・拍子・動きを、体全体を使って表現するアートです※4。フォルメン線描では、直線や曲線、幾何学模様を描くことによって集中力をつけ、文字や幾何学の基礎を身につけます※5。

テストや通知表がないのも特徴です。それは、シュタイナー教育の目的試験で高得点を取れる知識を身につけさせることではなく、“全人(ぜんじん)”としての人間を育むことだからです※6。

日本におけるシュタイナー教育

シュタイナー教育が日本に浸透しはじめたのは、1970~80年代でした。1987年には、日本初のシュタイナー学校として「東京シュタイナーシューレ」が東京都内に設立されています。

現在は日本全国に7つのシュタイナー学校と60のシュタイナー園(日本シュタイナー幼児教育協会の加盟園)があるものの、公教育にシュタイナー教育が浸透しているとまではいえません。学校については、7校のうち学校法人は2校にとどまり、ほかはフリースクールかNPO法人となっています※7。

シュタイナー教育のメリット・デメリット

シュタイナー教育の主なメリットには、次の3つがあります。

  1. 感性が豊かになる
  2. 自ら道を切り開き、生きる力が身につく
  3. 将来的に学力の高い子どもに育つ可能性がある

シュタイナー教育には、音楽や工作、手あそびや歌、水彩画やフォルメン線描など、子どもの感性を育むカリキュラムが豊富です。そのため一般の学校に比べて、お子さまの感性が豊かになる可能性があるといえるでしょう※8。

また、100年近く実践されてきた卒業生調査の結果では、シュタイナー学校の卒業生の多くは学力が高く、他者への共感に優れ、リーダーシップやコミュニケーション力のある大人へと成長していることがわかっています※9。自ら道を切り拓く意志と「学ぶ意欲」が土台にあるため、テストや通知表がなくても結果的に学力の高いお子さまに育つ可能性があります。

一方、シュタイナー教育のデメリットとしては、次の3つがあります。

  1. 一般的な学校とプログラムが異なる
  2. 保護者に時間的・精神的な余裕が必要
  3. 受験対策には向かない

シュタイナー学校のカリキュラムには、毎朝110分のエポック授業やオイリュトミーなどの専科があります。一般的な学校とは時間割や学ぶ目的が異なるため、万が一引越しや転勤で他校へ移った際は、お子さまが慣れるのに時間がかかるでしょう。

また、シュタイナー教育は園や学校だけではなく家庭でも取り組む必要があります。デジタルデバイスは極力与えない、大半の学校では給食がない(お弁当持参)など、お父さん・お母さんにも時間的・精神的な余裕が必要です。また、受験対策やテストがないため、中学受験を目指すご家庭にも向かないでしょう。

シュタイナー教育の教材

シュタイナー教育では自然の素朴さやあたたかさを大切にしているため、プラスチック製のおもちゃは基本的に使いません。図画工作でも、木材やねんど、木綿、羊毛といった自然素材を使います。これらは「生(なま)の教材」と呼ばれています※10。

ここでは、そんなシュタイナー教育の教材を4つご紹介します。

ウォルドルフ人形

ウォルドルフ人形

ウォルドルフ人形は、世界初のシュタイナー学校「ヴァルドルフ(ウォルドルフ)学校」の名にちなんだ、シュタイナー教育を代表する手づくりの人形です。 子どもにとってウォルドルフ人形は自分自身を投影する存在であり、成長にしたがってお世話遊びの相手にもなります。人形の中身は、子どもの肌に近い弾力とぬくもりを感じられる羊毛。そのときどきの子どもの気持ちに寄り添えるよう、目と口が小さいのが特徴です。

ウォルドルフ人形をつくるのは、「子どもにとって身近な人」が望ましいとされています。自分が大切にされていることをお子さまが知る機会となり、人形に対する気持ちにも反映されるそうです。

ライアー

ライアー

ライアーは、オイリュトミーで使われる木製のハープです。繊細で美しいひびきに子どもたちは耳を澄ませたり、自ら奏でたりして感性を磨きます※11。スタジオジブリの長編アニメーション映画『千と千尋の神隠し』(宮崎駿監督)のエンディングテーマで、木村弓さんがライアーを演奏したことでも知られています。

シュトックマー社 みつろうブロッククレヨン

シュトックマー社 みつろうブロッククレヨン

シュタイナー学校や幼稚園でも使われている、シュトックマー社のみつろうクレヨンです。主成分はみつろうで、適切な加熱処理もされているので、万が一小さなお子さまが口に入れても害がありません。ゲーテの色相環に基づいた色展開が特徴で、大地や海、空、森といった自然界に存在する色が豊富に入っています。ブロッククレヨンは、広い面と角を使い分けて、「線」と「面」の見え方の違いを発見するきっかけになります。

プレイクロス

プレイクロス

プレイクロスというシルクのスカーフも、シュタイナー教育において代表的な教材のひとつです。お子さまが手に持ってダンスをしたり、マントにしたり、帽子のように巻いたり……使い方は無限大。オイリュトミーでは、服の上につけるシュライアー(羽衣のようになびく布)として使われることもあります。値段もお手ごろなものが多く、初めてのシュタイナー教材としてもおすすめです。

シュタイナー教育で「生きる力」を育む

シュタイナー教育は、7歳まで知的教育をしない、学校でテストがないなど、日本の一般的な学校とは考え方や方向性、カリキュラムが異なります。一方で、シュタイナー教育で育まれる「感性の豊かさ」や「生きる力」は、近年注目されているSTEAM教育の「Arts(リベラルアーツ)」とも共通しています。

現在の日本はどこに住んでいてもシュタイナーの学校や園に入れる環境ではありませんが、まずはシュタイナー教育の書籍を読んだり、ご家庭で教材を取り入れたりして、その雰囲気を味わってみてはいかがでしょうか。

参考資料

※1 Waldorf World List – Directory of Waldorf and Rudolf Steiner Schools, Kindergartens and Teacher Training Centers worldwide 2021 May
※2 ヴァルドルフ/シュタイナー教育100周年 MESSAGES
※3 一般社団法人日本シュタイナー幼児教育協会 シュタイナー幼児教育とは
※4 東京賢治シュタイナー学校 オイリュトミー
※5 学校法人シュタイナー学園 カリキュラム
※6 学校法人シュタイナー学園 よくある質問
※7 日本シュタイナー幼児教育協会 全国の会員団体
※8 佐々木浩江、倉賀野志郎 子どもの感性を伸ばす表現教育の実践 その2: シュタイナー教育の可能性を探る 釧路論集:北海道教育大学釧路校研究紀要 第43号 2011-12
※9 今井 重孝、イマイ シゲタカ 教育方法に関する一考察 : シュタイナー教育を中心として 川口短大紀要 第32号 2018-12-25
※10 裵芝允、須谷弥生 シュタイナー教育にみる教育実践の新たな展開可能性 ―身体と言語の視点から― 広島大学大学院教育学研究科紀要 第一部 第68号 2019-10
※11 井藤元、山下恭平、徳永英司 シュタイナー教育において楽器演奏がもたらす効果 脳波測定による分析 日本教育学会大會研究発表要項 第79巻 2020
※12 日本私立大学協会 アルカディア学報No.721 文理融合を促すリベラルアーツ教育~STEMからSTEAMへ

原 由希奈

原 由希奈

1986年生まれ、札幌市在住。北海道武蔵女子短期大学英文科卒、在学中に英国Solihull Collegeへ留学。幼児教育、小学校教育、ICT教育やプログラミング、オルタナティブ教育、絵本などのジャンルで執筆するインタビュー・コラムライター。ダイヤモンド・オンラインなどのWebメディアで執筆。2016年生まれ・2018年生まれの男児を育てる2児の母。

Read more