早期教育とは?メリットやデメリット、種類、注意点について解説
早期教育は、教育意識の高まりや受験戦争の低年齢化などを背景に今注目されています。早期教育のメリットとデメリットをご紹介し、さまざまな習い事の種類や、早期教育を実施する場合の注意点についてもご説明します。
早期教育とは
早期教育とはどんな教育?
早期教育とは、胎児から小学校入学前に行う教育のことです。脳が柔軟な幼い時期に教育することで子どもの好奇心を促し、高い知識や技術を得た優れた人間を育てるという理念に基づいて行われます。※1、2
多くは市販の教材を使ったり、幼児教室に通ったりしながら知識や技術を得ます。近年では小学校入学前から英語教育を行う家庭も多く、未就学児を対象とした体操教室やリトミック、サッカーなどのスポーツ教室も増えています。※1
また受験戦争の低年齢化の影響により早期教育に力を入れる家庭も多く、「早期教育」は注目を浴びています。※1
早期教育と幼児教育との違い
早期教育とよく似た言葉に「幼児教育」というものもあります。
幼児教育は、幼稚園や保育園、家庭、地域などのあらゆる環境において学ぶ教育のことです。日常生活や遊びなどを通して子どもの可能性を引き出し、将来にわたる学習の基礎づくりを目的としています。※3
一方、早期教育は子どもに多くの知識やスキルを身につけさせることを目的としています。そのため早期教育では、大人は自らの働きかけに対して子どもの反応を強く期待してしまう傾向にあります。※2
早期教育が求められる理由
多くの親が早期教育に注目する理由はいくつかあります。※1
- 学校教育への不安や不備
- 子育ての不安や自信のなさ
- 一人一人の子どもに対する期待の向上
- 個々の能力を最大限に引き出したい
- 金銭的なゆとりが生まれた
など
このように、早期教育の背景には親の不安解消のほか、子どもの可能性を最大限引き出したいという思いがあると考えられます。特に英語教育においては発音やヒアリング、音楽においては絶対音感など、幼いころから取り組むことが有効である場合もあります。※1
早期教育のメリット
早期教育にはさまざまなメリットがありますが、主なものを3つ挙げます。
- 早くから習うほど自然と身に付きやすい
- うまくいけば得意分野となり自信へとつながる
- 親と子が触れ合う時間が増える
子どもは胎児のときからさまざまな能力を備えています。脳の発達スピードも速く、多くのものを吸収しやすい時期でもあるため、その時期に刺激を与えることは有効であるといわれています。早期教育は脳を鍛え、脳の発達を促進させることにつながります。早くから取り組むほど、自然に身に付きやすいというメリットもあります。※1
いまや英語は小学校の授業でも行われていますが、乳幼児期から取り組んでいると、小学校や中学校の授業に遅れることは少なくなります。その結果楽しく学ぶことができるため、スキルも向上し、得意分野となりやすいと考えられます。授業に追いつけない教科があると、子どもの学ぶ意欲は薄れ、苦手教科になりやすいです。※1
早期教育を通して親と子が触れ合う時間が増え、親子の絆が深まるというメリットもあります。※1、2
早期教育のデメリット
早期教育にはメリットがありますが、じつはデメリットもあります。3つ例を挙げます。
- 子どもの「本来の遊び」が少なくなる
- 自発性や思考力、創造力が抑圧される
- 早期教育費用をかけ過ぎると将来の生活が苦しくなる可能性がある
ここでいう子どもの「本来の遊び」というのは、自発的・主体的に行う遊びのことです。子どもが自ら作り上げていく遊びは思考力や判断力が身に付きます。また集団遊びによってコミュニケーション力や協調性、社会性なども育むことができます。※1、2
しかし、早期教育によって「準備された(受動的な)遊び」を経験している子どもは自分で考えることが少ないため、自発性や思考力、創造性が抑圧される可能性があります。※1、2
また、子どもの早期教育に熱中するあまり費用をかけ過ぎてしまうことで、本来必要な生活費や子どもの将来にかかる教育費などが足りなくなったり、自分たちの老後生活が苦しくなったりする可能性も考えられます。※1
早期教育を始める際は、これらのデメリットがあることを理解したうえで、親も子も無理のない範囲で行うことが大切です。
早期教育の種類
では、早期教育の一環として子どもたちが実際にどんな習い事をしているか見てみましょう。
株式会社バンダイが行った「子どもの習い事に関する意識調査」(習い事をしている3~6歳の未就学児童と小学生の子どもを持つ親700人を対象)をまとめてみました。
子どもに人気の習い事は1位から順に、「水泳(41.0%)」「学習塾(27.0%)」「ピアノ(24.9%)」「英会話(22.0%)」となっており、「習字」「体操・新体操」「サッカー」「そろばん」「ダンス」「テニス」なども続いています。※4
文部科学省が発表した「早期教育等の状況について」という資料においても、「習い事の種類(1歳児~6歳児)」という項目で以下のような習い事があることがわかります。※5
学習系:通信教育、英会話教室、一括購入教材、学習塾、習字、そろばんなど
運動系:水泳、スポーツクラブ・体操、バレエ・リトミックなど
芸術系:ピアノ、バイオリン、絵画など
また、習い事を始める時期は「小学校入学前」が約5割を占めており、特にスポーツ系の習い事は早いうちから始めるご家庭が多いようです。習い事を始めるきっかけは「親の意向で始めた」が約6割、理由は「体力づくり・運動能力向上のため」という意見が多くありました。※4
早期教育の注意点
メリットもデメリットもある早期教育ですが、実際に始めるにあたっての注意点を3つ挙げます。
子どもの自発的な発達を妨げてしまわないよう、見守ることも大切
子どもの自発性・主体性を無視した強制的な指導や訓練、競い合いは、逆に子どもの能力を損ねてしまう可能性があります。親が子どもに対し一方的に刺激を与え続けることはできるだけ避け、子どもの自発的な発達を見守ることも大切です。自発性や自主性、創造性が失われると、何に対しても受け身の姿勢になってしまう可能性があります。親は子どもの「心が育つ過程」を大事にしながら教育することが必要です。※1、6、7
子どもを追い込むような過度な早期教育はしない
早期教育は将来の見返りを期待して行われることが多く、手段や方法がエスカレートしがちです。子どもの時間を奪ってしまう場合もあるので、子どもを追い込んでしまわないよう注意しましょう。※7
自己肯定感や自分らしさを大切に、子どもが楽しく学べる工夫を
親の期待に応えようとする子どもが増え、親の期待や評価を気にするあまり、幼児期に育まれる自己肯定感や自分らしさを失ってしまう可能性があります。無理やりやらせるのではなく、子どもが意欲をもって楽しく学べるように工夫しましょう。※1
発達段階や家庭の環境に合わせた無理のない早期教育を
早期教育を始めるなら、子どもの発達段階に合わせた教育内容で、無理なく行いましょう。また、子どもが楽しく安心して学べるような環境を整えてあげましょう。親は子どもとしっかりコミュニケーションをとり、子どもの育つ能力を妨げないように関わっていくことが大切です。※1、2、6、7
参考資料
※1 長尾みゆき, 村上昌美, 元木順子, 早期教育について. (2011). 中村学園大学短期大学部「幼花」論文集. (3), 1-7.
※2 須森りか. (1999). 早期教育が幼児の発達に与える影響と今後の在り方. 東北学院大学教養学部総合研究論文.
※3 文部科学省 第2節 幼児教育の意義及び役割
※4 株式会社バンダイ 「子どもの習い事に関する意識調査」結果
※5 文部科学省 早期教育等の状況について
※6 繁枡算男, 内田伸子, 酒井邦嘉, 中室牧子, (2020). 早期教育の光と影. 教育心理年報. (59) .253-264.
※7 小西行郎(著). (2004). 早期教育と脳. 光文社新書.