子どもに音楽が与える効果とは?おすすめのおもちゃ・アプリや習い事、リトミックも紹介
私たちが生きてきたなかで出会ったさまざまな音楽は、体や心で音楽を楽しむ喜びを教え、人生をより豊かにしてきました。そして、著しい発達を遂げる幼児期の子どもたちも、音楽によって多くの影響を受けることがわかっています。
子どもの発達と音楽
音楽との出会い
赤ちゃんは、首がすわり、寝返りやハイハイができるようになり、つかまり立ちをして歩けるようになっていきます。身体の発達と同様に、周りの音や声を耳で受け止め、言葉も習得していきます。乳幼児期は、このような目覚ましい発達とともに、耳に入ってくる音楽やリズムも自然と体で受け止めているといいます。やがて成長につれて多くの音楽にも出会います。音楽を聴いて、それを声に出して歌うことで感じた喜びを表現できるようになります。この世に生まれて第一声となる産声は、赤ちゃんにとって「歌うための声の第一歩である」ともいえるのです。
音楽と出会うこの時期は、乳幼児にとって音楽を素直な心で受け入れることがとても重要です。そのためにはお母さんやお父さんをはじめ、周りにいる大人の役割はとても大きいといえます。子どもと一緒に感動を分かち合い、喜び、歌うことで、子どもも音楽を楽しむ喜びを知るようになります。この経験こそ、子どもの今後の人生にプラスとなり、音楽に支えられながら豊かに生きることにつながるのです。※1
乳幼児の音楽活動
赤ちゃんが生まれる前から音楽を聴かせたお母さんやお父さんも多いことでしょう。これは胎内教育(胎教)というもので、妊婦の精神の安定によって胎児に良い影響を与えると考えられています。
生まれてからも、赤ちゃんの聴覚はさらに著しく発達します。産後は育児に追われて音楽を楽しむ余裕はないかもしれませんが、歌を口ずさんだり、短時間でも赤ちゃんと一緒に音楽を聴いたりするだけでいいのです。胎教からの音の出会いを、乳幼児期にも継続することが大切です。※1
子どもに音楽が与える効果
運動との関係
音楽は、幼児の運動発達にも良い効果をもたらす可能性が考えられています。私たちは音楽を聴いていると「楽しい気持ち」になり、自然と音楽に合わせて身体が動かしていることがあります。これは音楽によって起こる心の変化が身体を通して現れたもので、心と身体は密接に結びついていることを意味しています。特に乳幼児は、心の動きが直に身体の動きとなって現れます。音楽を聴くと嬉しそうに足をバタバタさせるのも、そのひとつといえます。歩き始めた乳幼児に向けて「あんよがじょうず、あんよがじょうず」と歌ったり、手を叩いてリズムを作ったりすることも、音楽によって身体の動きが引き起こされることと関連しています。音楽やリズムは、運動の機能がまだ発達していない乳幼児の動きを習熟させていく過程で有効な手段となり得るのです。※2
認識・表現との関係
大人が何かを表現しようとするとき、最初にあるのはイメージで、それを表現するのにふさわしい素材を選びます。一方、5歳以前の乳幼児はまず素材そのものに触れ、特性を知ることで自分の身体と環境の特性を理解していきます。どの段階においても表現と認識は表裏一体であり、認識することで表現が促され、表現することで認識が深まっていくのです。乳幼児の場合、音楽に合わせて自身の体を動かすことは「表現すること」であり、ものごとを認識するうえで重要な意味を持っているといえます。
音楽的要素のほか、数字や数量の概念を認識するときにも遊び歌などの音楽が関係していると考えられます。例えば、数字が含まれる歌遊びを繰り返し体験することで、乳幼児は数量の概念を形成し、数字の形を認識していく可能性が示唆されています。また、九九の覚え歌に代表されるように、音楽には記憶を助長する働きがあるといえます。※2
コミュニケーション
音楽はコミュニケーションの方法にもなります。例えば、特定の音楽と決まった言語的情報を結びつけ、音楽を合図として用いることで、言語的なコミュニケーションのような意味内容のあるやり取りができます。ほかにも、音楽を共有することで生まれる一体感が、コミュニケーションになることもあります。これは歌遊びをする幼児によく見られ、共通に知っている歌は子ども同士のコミュニケーションを円滑にする役割も担っています。言葉によるやり取りで思うように気持ちを表現できない幼児期においては特に、音楽はコミュニケーションとしての役割が大きいと考えられます。※2、3
子どもにおすすめの音楽系おもちゃ・アプリ
乳幼児向けに作られた小さなサイズの楽器や、音の出るおもちゃやアプリがあれば、音楽をもっと楽しむことができます。おすすめのおもちゃやアプリをご紹介します。
KAWAIの子ども向け楽器
くまのっもっきん、ねこのもっきん
純国産と安全性にこだわって作られた木琴で、熟練の職人によりひとつひとつ丁寧に仕上げられています。対象年齢は3歳以上で、音階は1オクターブです。バチは両端が丸く加工されているため、にぎりやすく安全です。
URL:https://www.kawai.jp/product/kumanekoxylophone/
シロホンピアノ
木琴(シロホン)とピアノが一緒になったハイブリッド設計のおもちゃです。木の鍵盤を指で叩くことで木琴を打つことができ、直接バチで叩いて遊ぶこともできます。対象年齢は3歳以上で、音階は1オクターブです。こちらもバチは両端が丸く加工されているため、にぎりやすく安全です。
URL:https://www.kawai.jp/product/xylophonepiano_g/
グランドピアノ ナチュラル
32鍵のグランドピアノのおもちゃで、本物のグランドピアノと同様に屋根が開きます。正確な音程が特徴で、ピアノメーカーであるカワイならではの弾きやすさとデザイン性が魅力です。天然木の木目が美しいナチュラルタイプのほか、高級感のあるブラックタイプも販売されています。
URL:https://www.kawai.jp/product/minipianogp_natural/
音楽を楽しめるおすすめアプリ
Eテレ おやこでリズムあそび(一部無料)
NHK教育テレビジョン(Eテレ)が開発した知育ゲームアプリです。本物の楽器を演奏して収録した「がっきあそび」は対象年齢が8か月で、親子でさまざまな楽器を楽しむことができます。「リズムあそび」は対象年齢が3~5歳で、楽譜に合わせて親子で演奏できます。番組オリジナル曲でリズムゲームを楽しめるほか、人気キャラクターが登場するのも魅力です。
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ピアノあそび学習・知育音楽ゲーム(基本無料)
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あかちゃんから小学生まで、だれでも演奏できるピアノの知育音楽ゲームアプリです。0歳から遊べる「どこでもたっちOKモード」と、3歳からの「ピアノレッスンモード」があり、童謡や人気アニメの主題歌なども収録されています。正解の音のみ演奏できる独自システムを採用しており、ガイドに合わせてタッチするだけで正確にメロディを演奏することができます。
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音楽系の習い事
ヤマハ音楽振興会と慶應義塾の前野隆司教授が行った調査では、習い事の経験が将来の幸福度や生活満足度、多様性適応能力に影響することがわかりました。子ども時代に音楽系の習い事を経験した大人は幸福度が高く、幸福感を構成する要素のひとつである「つながり」と「感謝」を大切にした人生を送っているという結果が報告されています。さらに多様性適応力のスコアが高く、その中でも信頼度関係構築力のスコアが高いという結果も得られました。多様性適応力は、グローバルネットワーク社会において求められる能力のひとつとされています。※4
幼児教育として人気の高い音楽系の習い事をご紹介します。
ピアノ
有限会社さわだスポーツクラブが保育園に子どもを預けている親を対象に行った「子どもの習い事に関する調査」によると、ピアノは勉強・芸術系の習い事のなかで、英語・英会話に次いで第2位(42.7%)となりました。※5
文化系の習い事の王道であり、お母さんやお父さんのなかにも子どものころにピアノを習った経験がある方も多いのではないでしょうか。ピアノを習い始める時期は、指の筋力がついて鍵盤がおさえられるようになる3歳以降が適しているといわれています。
ピアノを習うメリット:音感が身に付く、地頭が良くなる
バイオリン
大人と同じ大きさの楽器で練習をするピアノと異なり、バイオリンは子どもの身長に合わせて小さく作られた分数バイオリンから練習を始めます。弦には音を把握する目印がないため、より正確な音感が身につきやすいです。バイオリンを習い始める時期は、身体や精神面も成長してくる3歳以降が適しているといわれています。
メリット:音感が身に付く、姿勢が正しくなる
ギター
アコースティックギターとエレキギターの2種類があり、いずれも子どもの体格に合わせて作られたキッズギター(ミニギター)があります。体格にもよりますが、早ければ3歳から始めることも可能です。
メリット:音感が鍛えられる、親しみやすい曲から始められる
ボーカル、合唱
呼吸、発声、発音などのボイストレーニングの基本を習いながら、さまざまな曲に対応できるボーカルテクニックを学ぶことができます。合唱団などに入る場合は、協調性や自信が身につき、地域交流にも役立ちます。
メリット:表現力が豊かになる、正しい歌い方を身につけられる
リトミック
指導者が演奏する音楽を聴いて、さまざまな身体運動を通して表現します。音楽能力や表現能力だけでなく、創造力や創造性、注意力、集中力、思考力も引き出すことを目的とした音楽教育です。
メリット:0歳から習うことができる
リトミックとは
リトミックは、スイスの作曲家エミール・ジャック=ダルクローズ(1865-1950)によって考案された音楽教育法です。音楽教育にリズム運動を取り入れ、音楽に反応して動くことで感じる心や想像力を養い、身体の協調・調和を作り出すことを目的としています。
音楽教育法としてのリトミックが初めて日本に導入されたのは、大正から昭和初期といわれています。現在では全国各地のリトミック教室で習うことができるほか、多くの幼稚園や保育園でも音楽教育として広く取り入れられています。※6、7
幼児期に音楽を通して遊ぶことは健やかな心を育てるとともに、そこから得られる成功体験は子どもの意欲を育てるといわれています。リトミックは、音楽能力だけでなく運動能力と社会適応力、そして何事にも積極的に取り組む気持ちなどを育み、豊かな人生を送るための基礎作りに役立つという効果もあります。
リトミックでは、多様なパターンの音楽に合わせて主体的に身体を動かす遊びによって、音楽感覚や創造力、表現力を高めることができます。さまざまな動きを身に付けるだけでなく、動きの可能性を広げ、体と心の発達にも良い影響を与えます。例えば、友達と一緒に活動することで社会性や協調性を学んだり、音を聴きながら身体を動かす中で集中力や記憶力などを身に付けたりする効果も期待できます。※8
参考資料
※1 菅原峰子. (2018). 生きる第一歩と音楽の力. 豊岡短期大学論集, 15, 87~96.
※2 白石昌子. (2016). 乳幼児の発達と音楽の関係. 福島大学人間発達文化学類論集, 3, 13-25.
※3 中川華那, 片山美香. (2015) 音楽による幼児と表現活動の意義と保育者の援助に関する研究. 岡山大学教師教育開発センター紀要, 5, 73-82.
※4 一般財団法人ヤマハ音楽振興会、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 ヒューマンラボ 子ども時代に「音楽系の習い事を経験した大人」は、「幸福度」が高い。-「幼児期・児童期の音楽学習と幸福度やグローバルネットワーク社会への適応力との関係性に関する調査」-
※5 株式会社PR TIMES コロナ禍の習い事、習わせたいのは何?出せるのはいくら?運動不足は心配?保育園児の親に徹底調査!
※6 今井晥, 吉村夕里, 堀内詩子. (2010). 幼児の音楽発達とリトミックに関する一考察 京都文教大学 臨床心理学部研究報告, 3, 17-30.
※7 板野靖子. (2015). 日本の音楽教育へのリトミック導入の経緯―小林宗作、天野蝶、板野平の関わりを中心に. 風間書房.
※8 高牧恵理, 松井いずみ, 荒金幸子. (2021). 幼児期におけるリトミック活動の身体的影響について : 4歳児の活動を中心に. 武蔵野大学しあわせ研究所紀要, 4, 75-87.