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子どもに数を教える方法とは?数の概念や効果的な遊び、モンテッソーリ教育における数の教え方について解説

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幼児の成長とともに、数を理解するためのポイントや方法は変わります。小学校受験のペーパー試験においても「数」は頻出の分野であり、普段の遊びや日常生活に楽しく学びを取り入れるのがおすすめです。この記事では、数の概念や日常のなかでの取り組み、モンテッソーリ教育における数の教え方や教具など、効果的に幼児に数を教える方法を紹介します。

数の概念を理解するポイント

数の概念

数を学ぶ際の基本的な概念の理解は、ゆくゆくは数学的な思考の土台となります。1978年にゲルマン(Gelman)とガルィストル(Gallistel)によって、子どもが数の概念を理解する際の基本的な原理が明らかになりました。※1
これらは「ゲルマンの5原理」として言及されています。

一対一対応の原理

物の集まりを数えるときに、一つの物に一つの数字が対応することを意味します。例えば、リンゴを数える際に「1、2、3」と数えることで、各リンゴに一つの数字が対応することを学びます。

安定的な順序の原理

数字は一貫した順序で数えられるべきであるという原理です。つまり、「1、2、3……」という固定された順序で数を数えることが重要です。

基数の原理

数を数え終わったときの最後の数が、その集まりの全体の数量を示します。具体的には、「1、2、3」と数え終わった後の「3」が、3つのリンゴがあることを示すという概念です。

抽象の原理

数はどんなものにも使うことできるという原理です。これは、数字が具体的な物の種類に関係なく適用できることを意味します。例えば、3つのリンゴや3本のペン、3台の車など、具体的な物の種類に関係なく、「3」という数の概念が使えるということです。

順序の関係の原理

物を数える順序は、集合全体の数量に影響を与えないという原理です。例えば、おもちゃ箱に入っている動物のおもちゃを数える際に、犬、猫、ウサギの順番で数えても、ウサギ、猫、犬の順番で数えても、同じ「3」という数になります。

ゲルマンの5原理は、子どもが数の概念を自然に獲得する過程における普遍的な原理として明らかにされました。これらの原理を通じて、子どもは数学的な思考の基礎を築いていきます。

日常生活で数を学ぶ取り組み

すごろく

数を学ぶ取り組みをどのようにして日常生活や遊びのなかに取り入れるか、具体例をご紹介します。

日常生活のなかで数を取り入れる

幼児に数を教える初期段階では、日常生活のなかで自然に数を取り入れることが大切です。例えば、階段を上がる際に一緒にステップの数を数えたり、おもちゃを片付ける際に数を数えたりします。
また、「3秒だけ待ってね」「時計の長い針が10のところに来たら帰ろうね」などの声かけを通して、時間の感覚を身につけさせることも有効です。こうして日常生活のなかで数の概念に触れることによって、子どもの脳に数の概念が備わっていきます。※2

実際の活動を取り入れる

数学の概念は、実際の活動を通じて学ぶことでより深く理解できます。例えば、クッキーを焼く際に材料の量を計ったり、公園で遊びながら遊具の距離や高さを計ったりすることで、実践的に数の概念を学べます。

おはじきやすごろくなどのおもちゃを使用する

おはじきやカード、トランプ、すごろくなどを使うと、数字や形に親しむ時間を持つことができます。子どもが算数を身につけるには、遊びながら数の感覚を養うことが大切です。例えば、おはじきで遊びながら「赤いおはじきは今何個ある? 3個だね。あといくつあれば5個になるかな?」などの簡単な問いかけをするのもよいでしょう。具体物に触れ、遊びを通して、子どもは自然に数の感覚を身につけることができます。
このような遊び方を日常的に行っていると、小学校に入学して算数を習いはじめたときにもスムーズに学習が進みます。例えば、「リンゴが3つあります。あと何個あれば5つになりますか?」という問題に対して、指を「4、5」と折らなくても感覚的に答えることができます。※3

また、すごろく遊びも数の概念を学ぶのに役立ちます。例えば、「さいころで3が出ればゴール」という場面では、子どもに「ゴールまでのマス目の数」を意識させるのもよいでしょう。10のマス目が「上がり」だとすると、7のマス目に止まっているとき、ゴールするには3が必要です。現在自分のコマが止まっている7のマス目、それに続く8と9、そしてゴールが10のマス目なので、関連するマスの数は 4つありますが、必要な目は3です。「あと 3つでゴール」というとき、どこを「ひとつ目」として数えるのかは、子どもにとって直感的に理解しにくいポイントなのです。「3日間」「3日目」「3日後」の違いを理解するときにも役立つこうした感覚は、すごろく遊びなどを通して自然に理解できるようになります。

リズムと歌を利用する

リズムや歌には数学的な要素が多く含まれています。子ども向けの数の歌やリズムゲームを普段の遊びに取り入れることで、楽しみながら数を学ぶことができます。
子ども4人全員を東京大学理科三類に合格させた教育評論家の佐藤亮子さんは、著書『3歳までに絶対やるべき幼児教育 頭のいい子に育てる』のなかで次のように述べています。

九九は歌で覚えるのが一番です。いろいろな C Dが発売されていますので、子どもと一緒に楽しく歌えそうなものを選びましょう。2の段から9の段までを通して何度も聞かせて、みんなで歌うと楽しいですよ。なんと言っても、今までに聞いたことのない、童謡にはない歌ですから、子どもたちはかなりノリノリで歌います。※4

数にまつわるクイズを取り入れる

数にまつわるクイズを通して、楽しく学びましょう。おはじきやおもちゃなどの具体物の数を答えさせたり、手をたたいた回数を答えさせたり、子どもの理解度に合わせてクイズを楽しみましょう。ゲーム感覚で楽しむこと、間違えても大丈夫だと伝えることで、苦手意識をなくすことができます。

数についての理解がもっと深まり九九に挑戦できるようになったら、九九で勝負をしたり、「答えが12になるのは?」というような逆算問題を出してみたりするのもおすすめです。九九のポスターを見ながら覚えるよりも、「12になるのは?」と問われて、「2×6と、3×4かな」と答えるほうが頭を使いますし、ゲーム感覚で楽しめます。正解すると達成感を覚えるので、子ども自身も「算数は楽しい」「九九は得意!」と感じるようになります。※5

繰り返しとポジティブなフィードバックが重要

日常生活で数を学ぶときには、「繰り返し」と「ポジティブなフィードバック」を意識しましょう。子どもは繰り返しのなかで学びます。同じゲームや活動を何度も繰り返すことで、数の概念を定着させることができます。また、正しい答えを出した際や、新しい概念を理解したときには、積極的にほめてあげましょう。間違えたことを叱ったり、できないことを否定したりしてはいけません。ポジティブな声かけを通して、子どもの学びのモチベーションを高めることができます。

家庭で数を教えるときの注意点

単に「1、2、3」と数を数えるだけでは、本当の意味で数の概念を理解することはできません。家庭で数を教えるときには、以下の3つのポイントを意識しましょう。

  1. 数唱:イチ、ニ、サンという呼び方
  2. 数量:具体的な現実
  3. 数詞:1、2、3という数字そのもの

実物や絵(数量)と数字(数詞)を同時に見せながら、「〇〇がイチ、ニ、サン」と発音(数唱)するのが、子どもにとって効果的な方法です。※2

スモールステップで取り組む

スモールステップで無理なく数を学べる遊びを、教育家の小川大介さんの著書『1日3分! 頭がよくなる子どもとの遊びかた』から4つ紹介します。

数え上げ遊び:指を折りながら1から一緒に数えよう

1から10を数え上げます。お風呂で行うのがおすすめです。リラックスでき、声がよく響くため、楽しく数えることができます。お父さん・お母さんも、「いーち、にー、さーん……」と一緒に声を出しましょう。片手の指を折りながら数え、5本折り終わったらもう片方の手に移り、同様に5本ずつ折りながら数えます。10本の指は折ったままにしておくのがポイントです。指を使って数えることで、数の量とつながる感覚を身につけることができます。※6

机の上にいくつあるでしょう遊び:あるもの全部持ってきて

1から10まで数えられるようになったら、実際に目の前に物を置いて、数えて遊びます。机やテーブルなどに10個以内の物を置いて、子どもに数えてもらいましょう。おもちゃ、リモコン、新聞、ペットボトルなど、子どもが持ち運べるものや触りたがるものを選ぶのがおすすめです。子どもに「いくつあるか教えて」と質問し、慣れてきたら一つずつ数えながら持ってきてもらいます。「ひとつ、ふたつ、みっつ……全部でやっつだね」のように声かけを行うと、子どもは張り切って遊びを楽しみます。※6

1つ飛ばし遊び:1、3、5、7……

数を飛ばしながら数える遊びです。お父さん・お母さんが「1、3、5、7、9」と数を言い、子どもにバトンタッチします。最初はお父さん・お母さんが数えながら、指折りや身ぶりで数を飛ばしている様子を表現すると理解しやすくなります。何度か繰り返し、数を飛ばしている規則性に気づいた様子が見えたら、今度は「一緒に数えてみようか」と声をかけましょう。子どもが「言えた!」と達成感を味わえるように、お父さん・お母さんは「いち、さん、ご、なな、きゅう~?」と、最後の数字を伸ばして発音します。子どもが数を言うまで待つのがコツです。51ぐらいまで数えられるようになったら、2つ飛ばしや3つ飛ばしにも挑戦してみましょう。※6

数え下げ遊び

数え上げができるようになったら、数え下げにも挑戦してみましょう。例えば、「100から下がっていこう」と声をかけ、「100、99、98、97……」と一緒に数え下げていきます。慣れてきたら、「100から90まで来て」と数え下げのゴールを指定したり、「70、69、68、次は?」とバトンタッチしながら数え下げをしたりするのもおすすめです。

数遊びを通じて、足し算と引き算が裏表であることを感覚的に理解することにもつながります。※6

モンテッソーリ教育における数の教え方

モンテッソーリ:数の敏感期

モンテッソーリ教育には、さまざまな「敏感期」があります。数について本格的に理解しはじめる「数の敏感期」は、4~6歳にあたります。数を教えるのは小学生になってからで十分だと思っていると、大切な数の敏感期を逃すことになってしまうのです。数の敏感期に数や量、数字などについて触れ、数とはどういうものなのかを理解できている子どもは、成長してからも数に対して苦手意識を持たず、入学後に学ぶ「算数」にもスムーズに移行できます。

数の敏感期には、子どもは以下のようなことを楽しいと感じるようになります。子どもの好奇心を逃さず、さまざまな工夫をして数に親しむ機会を作りましょう。

1から10まで数えることが楽しい

数の敏感期にいる子どもは、何度も10まで数える姿が見られます。日常生活のなかでも、「おはじきは何個あるかな?」「にんじんは何本ある?」などの声かけをして、物を数える機会を意識して作ってみるのもよいでしょう。

数を作るのが楽しい

「5だよ」と言いながら5個の石を持ってくるなど、数を構成する姿もよく見られます。一緒にスーパーマーケットへ行き、「みかんを2つ入れてね」などお買い物を一緒に楽しむのもよいでしょう。実生活を通して、数を作る機会を作ることにつながります。

大きい数まで数えるのが楽しい

数えることに慣れてくると、今度は10以上の大きい数を数えることが楽しくなっていきます。例えば、「1からいくつまで数えられるかな?」とか、「いくつまでの数字が書けるかな?」など、大きい数を数えることに挑戦してみましょう。家にある絵本の数を数えたり、長い階段の段数を数えながらのぼったりと、身近にあるものの数を数えてみるのも良い体験となります。

これらの活動はお勉強ではなく、いずれも遊び感覚で楽しく行うことができます。大切なのは、4~6歳の「数の敏感期」に、子どもが数に興味を持ち、楽しむことです。※7

モンテッソーリ教育の数の教具

数とは、実際に存在するものではなく抽象的な概念です。例えば、1という数字を私たちは概念として理解していますが、実際に手に触れて確認することはできません。抽象的な数の概念を子どもが理解するには、触覚や視覚などの五感を用いて具体的なものに触れながら確かめる必要があります。

モンテッソーリ教育においては、さまざまな教具が活用されています。特に、数の教具は数学的な構造を持っているのが特徴です。棒やビーズには具体的な数字は書かれていませんが、正確な長さや分量で作られており、規則的な変化をするように設計されています。※8
代表的なモンテッソーリの数の教具を2つご紹介します。

数の棒

数の棒

10本の棒で構成される「数の棒」は、数の領域において最初に提供する教具です。10本の棒は10 cmずつ長さが変化しており、最も短い棒は10cm、最も長い棒は1mとなっています。1から10までの量を感覚的にとらえ、数字と一致させていくことを目的に作られています。※8

金ビーズ

金ビーズ

量の違いを理解するのに役立つ教具が「金ビーズ」です。この教具を通して、1、10、100、1000の量の違いを実感することができます。例えば、1のビーズはイクラ一粒程度の大きさになっており、それを10個つなげることで、直線的な10のビーズを作ります。さらに、10のビーズを10本つなげることで、平面的な100のビーズを作ります。最後に、100のビーズを10枚積み上げることで、立体的な1000のビーズを作ります。子どもたちはそれぞれのビーズを手に取り、量の違いを感じ取ることができます。※8

「数の棒」や「金ビーズ」などは、数と量を一致させることを目的とした教具です。初めての子どもでもわかりやすいように大きく作られていますが、理解が進んだ子ども向けの教具は徐々に小型化していきます。完全に数の概念を習得して足し算や引き算をするころには、卓上サイズになります。

また、「数の棒」は量に比例して実際の大きさが変化するのが特徴ですが、このしくみを体得した子ども向けのほかの教具は、1であろうと1000であろうと同じ大きさです。子どもは教具の実際の大きさという助けを借りなくても、量を想像できるようになっているからです。

このように、理解の段階に合った教具を使って活動することによって、子どもは自然に抽象的なものへの理解を深めていきます。数との交流を楽しむうち、年長になるころには1000の位の足し算や引き算、あるいは簡単な掛け算や割り算ができる子どもも見られるようになります。※8

楽しみながら数を学ぼう

数に限った話ではありませんが、幼児期の子どもにとっては楽しく学ぶことがモチベーションにつながります。理解の段階を無視して高度な内容を教えようとしたり、机にかじりついて問題を解かせたりしても、なかなか学びは進みません。日常生活や遊びを通して楽しみながら、無理なく自然に学ぶことが理想です。

参考資料

※1 王 暁曦. (2008). 幼児・児童における数概念の発達に関する研—望–計数と加法の発達を中心に. 早稲田大学大学院教育学研究科紀要 別冊 / 早稲田大学大学院教育学研究科 編, 16-2, 185~195.
※2 伊藤 美佳(著). (2018). モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方. かんき出版.
※3 西村 則康(著). (2017). [中学受験]やってはいけない小3までの親の習慣. 青春出版社.
※4 佐藤 亮子(著). (2019). 3歳までに絶対やるべき幼児教育: 頭のいい子に育てる. 東洋経済新報社.
※5 佐藤 智(著). (2023). SAPIXだから知っている頭のいい子が家でやっていること. ディスカヴァー・トゥエンティワン.
※6 小川大介(著). (2017). 1日3分! 頭がよくなる子どもとの遊びかた. 大和書房.
※7 北川 真理子(著). (2021). いちばんていねいな はじめてのおうちモンテッソーリ. KADOKAWA.
※8 堀田はるな(著). (2018). 子どもの才能を伸ばす最高の方法モンテッソーリ・メソッド―――「自律した子」の育て方すべて. あさ出版.

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