子どもの上手な叱り方とは?効果的なコミュニケーション方法やアプローチについて解説
子どもを叱ることは、子育てや子どもの成長において避けて通れない道です。しかし、子どもの成長において重要な役割を果たすからこそ、適切な方法で叱る必要があります。この記事では、子どもを叱る際の効果的な方法やコミュニケーションの技術、叱ることによる心理的な影響について詳しく解説します。
叱り方の基本
叱る前に一息つく
怒りやイライラが先行すると、子どもに対して不適切な言動をとってしまう可能性があります。ご両親が感情的にならずに冷静に叱るためにも、まずは一息つきましょう。
叱る前には、自分の感情を整理する、心を落ち着けるために深呼吸をする、言葉を発する前に6秒待つなどの方法を取り入れましょう。こうすることで、叱る前の時間を長く取ることができます。それから子どもの顔を見ると、「うちの子なりにがんばっているんだな」などの思いが沸き起こってくることでしょう。子どもも、冷静になろうとしているご両親の様子を見て、お父さん・お母さんなりに冷静になろうと努力していることを感じ取るようになります。※1
叱る理由を明確にする
子どもを叱るときは、どのような行動が望ましくないのかを明確に伝えるようにしましょう。子どもが理解しやすい言葉を使い、なぜその行動が良くないのかを具体的に説明します。例えば、「お友達にあいさつをしなかったね。それは、ほかの人に失礼な行動なんだよ」というように、具体的な例を挙げて説明するとよいでしょう。
さらに、子どもには自分の行動が周囲の人や状況にどのような影響を与えるのかを教えることも重要です。例えば、「おもちゃを投げるとほかの子が怪我をする可能性があるから、おもちゃを投げないでね」というように、行動の結果や影響についても伝えます。これにより、子どもは自分の行動が他人や状況に与える影響を考える力を身につけることができます。
叱るときに使えるコミュニケーションの技術
言葉選びに注意する
言葉を選び、適切な言葉遣いで叱ることは、子どもの自尊心や自己評価に大きな影響を与えます。否定的な言葉やレッテルを避け、建設的で前向きな表現を心がけましょう。
叱るときには、感情に任せて子ども心を傷つけるようなことは言ってはいけません。子どもの反応を見ながら、叱る言葉を選ぶのです。※2
子どもは、「~すべき」「~しなければいけない」といった、義務感を刺激される言葉を嫌います。そのため、「~してくれたらうれしい」という言葉を使うようにしましょう。また、子どもに理由を尋ねるときも、怒った口調で「なぜ?」と聞いても子どもの気持ちを縮こませるだけです。子どもが話しやすくするためにも、優しく興味深い表情で「なぜ?」と尋ねるようにしましょう。また、コミュニケーションが煮詰まってくると、逆説的な発言で叱ってしまいがちです。例えば、「片付けないなら捨てるよ」などの言葉は、子どもをイラつかせたり萎縮させたりするだけです。子どもの心を考えて、そうあってほしい方向にいくような言葉がけをしましょう。※1
「ダメ!」「違う!」をできるだけ使わない
子どもは「ダメ!」とか「違う!」といった否定的な言葉を聞き続けると、脳が脅威を感じて戦闘モードに入り、フラストレーションが爆発しやすい状態になります。「ダメ!」と口走る前に、まずは子どもが何をしたかったのか、何を言いたかったのかを理解し、「そうだったんだね」「わかるよ」と共感することから始めましょう。※3
目線を合わせる
子どもの目線に合わせて叱ることで、話を聞いていると感じさせ、より効果的なコミュニケーションが可能になります。叱られているときであっても、ご両親と同じ高さで目線が合うと子どもは安心し、話を受け入れやすくなります。子どもは、自分が理解されていると感じることで、親に対してより開放的になります。また、目線を合わせるとご両親にとっても子どもの視点や感情に共感することができるので、より深い関係を築く助けになります。
聞き手になる
一方的に叱るのではなく、まずは聞き手に回って子どもの話を聞くようにしましょう。子どもの感情や考えを理解し、信頼関係を築くことができます。子どもがなぜそのような行動をとったのか、子ども自身が発する言葉を通して理解しようとすることは、コミュニケーションにおいて重要です。子どもの言葉を尊重し、気持ちを共有することで、より深い理解と信頼を築けるようになります。
また、子どもの感情や考えを理解するためには、適切な質問も大事です。質問を通じて、子どもがなぜそのような行動をとったのか、どのような思いを抱いているのかを探ります。また、言葉だけでなく、非言語的なサインや表情も注視すると、より詳細な情報を得ることができます。
さらに、子どもとのコミュニケーションをより活発にするために、子どもの興味や関心に合わせたトピックで話すことも効果的です。例えば、好きなアニメやゲームを例に挙げながら話すことで、子どもは自分自身を表現しやすくなります。
子どもを上手に叱るための肯定的なアプローチ
叱るときには、子どもが前向きに受け止められるように肯定的な態度で臨むのがおすすめです。ポイントを3つご紹介します。
ほめることも忘れずに
叱るだけでなく、正しい行動をしたときには必ずそれを認めてほめるようにしましょう。ほめられることで子どもは自尊心を高め、良い行動を続ける動機付けになります。子どもが正しい選択をしたときには、その行動を具体的に指摘し、その行動がどのように良かったのかを説明しましょう。例えば、「部屋をきれいに片付けてくれてありがとう。とても助かるよ」と具体的に伝えることで、子どもは自分の行動が評価されていると感じ、今後も同じような行動を取りたくなります。
また、子どもががんばっているときや、努力しているときにも積極的にほめるようにしましょう。例えば、宿題に取り組んでいたり、勉強に集中していたりするのを見かけたら、「がんばっているね。努力が報われるよ」と言ってあげましょう。子どもは自分の努力が認められることで、より一層がんばる励みになります。
結果に焦点を当てた叱り方
子どもを叱るときは、やったことが間違っているからであって、あなたのことが嫌いだから叱っているのではないことを伝えます。人間は誰しも間違いを犯すものです。それに、避けられない事故もあります。そういうときには、頭ごなしに子どもを叱りつけないようにしましょう。大切なのは、子どもが失敗から学べるように導くことです。※2
行動の結果に焦点を当て、その結果がどのように子ども自身や他人に影響を及ぼすのかを教えることが大切です。例えば、友達のおもちゃを壊してしまった場合、「おもちゃを壊すと、友達が悲しむよ」と伝えることで、子どもは自分の行動が他人にどのような影響を与えるのかを理解し、将来的に同じ過ちを繰り返さないようになります。
親の気持ちを正直に伝える
「わたしメッセージ」とは、相手を批判したり否定したりせずに、「私」自身の気持ちを中心に自分自身がどう感じているか、またその理由は何であるかということを伝えながらコミュニケーションをとる方法です。例えば、外出前になかなか支度をしてくれない子どもに対して「朝、時間通りに出かけられると、私は(お母さんは/お父さんは)安心するよ。遅刻すると教室の邪魔になるから、次からは時間通りに出かけられるように一緒にがんばろうか」というように伝えます。ご両親自身が自分の気持ちを正直に提示し開放することで、子どもが相手の感情を思いやるきっかけとなり、円滑な人間関係を築く力が身につくといわれています。※3
モデリングとサポート
子どもの成長のためには、ただ叱るだけでなく、ご両親が模範的な行動を見せたり継続的にサポートしたりすることが重要です。
モデルとしての振る舞い
ご両親が自ら良いモデルとなり、望ましい行動を示すことで、子どもは正しい行動を学びます。例えば、ご両親が物を大切に扱ったり、丁寧な言葉遣いを心がけたりするのを子どもはよく見ています。さらに、良いモデルとなるためには、日常生活のさまざまな状況で良い行動を実践する必要があります。公共の場でのマナーを守っている様子や他人への思いやりなどを示す様子を、子どもは「見て学ぶ」のです。
継続的なサポートを提供する
叱った後も、子どもが改善できるように継続的にサポートします。叱って終わりにするのではなく、子どもが問題行動を改善するために必要なステップや具体的な方法を一緒に考えてあげましょう。例えば、友達との関係を改善するためのコミュニケーションの方法を教えたり、時間管理を身につけさせたりと、ご両親のサポートは多岐にわたります。また、子どもが小さな成功をおさめたときには、その成果を認め、励まし続けるようにしましょう。さらに、子どもが困難な状況に直面したときには、サポートを提供するだけでなく解決策を一緒に考えることも大切です。
叱る頻度とタイミング
頻繁に叱ると、その効果が薄れる可能性があります。しかし、適切なタイミングと頻度で叱ることは重要です。小さな過ちには日常的に注意を促す一方で、子どもがより深刻な問題に直面したり危険な行動を取ったりしている場合は、その問題点や危険性を理解するためにもしっかりと叱る必要があります。
叱るタイミングとしては、子どもがリラックスしているときや良い気分のときを選ぶのではなく、問題行動が起こった直後に行うと効果的です。子どもたちは自分の行動が問題であることを理解し、改善する意欲を持ちやすくなります。
ほかの大人との協力
ご両親やそのほかの家族、教師など、子どもの周りにいる大人が一貫した対応をとることで、子どもに明確なブレない軸を提供することができます。子どもに対するルールや期待を、子育てに関わるすべての大人が共有し、それを一貫して適用します。そうすると子どもは混乱せず、何が期待されているのかを理解しやすくなります。
さらに、大人たちは子どもに対して積極的に関与することも重要です。例えば、子どもが問題を抱えた場合、大人たちは解決策を見つけるために協力し、サポートを提供することができます。また、大人たちは子どもの成長や発展を促すために、興味や才能に合わせた活動や学習の機会を提供することもできます。
自己反省の重要性
子どもを叱る際は、ご両親も自分自身の行動や言葉遣いも振り返り、必要に応じて改善するようにしましょう。時には、大人自身の行動が子どもの問題行動の原因となっている場合もあります。自分の行動や叱ったときの子どもの反応を振り返ることで、より良い模範となるためのヒントや、より効果的な伝え方を見つけることができます。
自己反省は、私たちの成長に欠かせない要素です。反省を通して自分自身の弱点や改善点を見つけたり、他人の視点や感情に対する理解を深めたりすることができます。
適切に叱ることで子どもの成長と学びをサポートしよう
叱るという行為は、子どもの行動を修正し、適切な行動の基準を示す貴重な機会です。子どもは叱られることで、自分の行動が周囲に影響を与えることを理解し、責任感を持つようになります。また、自己制御やルールを守る能力を身につけることにもつながります。日々の忙しさや子育ての難しさのなかで、イライラせず冷静に叱るのは難しいと感じるかもしれませんが、子どもが健全な社会性を発展させ、自尊心を育むことができるようにサポートしましょう。
参考資料
※1 西村則康(著). (2013). 頭のいい子の育て方 御三家・灘中合格率日本一の家庭教師が教える. アスコム.
※2 ドロシー・ロー・ノルト(著), レイチャル・ハリス(著). (2003). 子どもが育つ魔法の言葉. PHP研究所.
※3 島村華子(著). (2020). モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くした オックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方. ディスカヴァー・トゥエンティワン.