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遊びから始める! 幼児が楽しく身につける足し算学習法

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数の概念を「目で見て」「手で触って」理解する

子どもが足し算を学ぶタイミングに正解はなく、「○歳からがベスト」という基準はありません。小学校に入る前に足し算を完璧に理解している必要もないため、子ども一人ひとりの発達や興味に合わせて学びはじめるのがよいでしょう。

数に興味を持ちはじめるタイミングには個人差がありますが、一般的には、3~4歳ごろから「1、2、3……」と物の数を数えてみることに喜びを感じる子が増えてきます。指を使って数を数えようとしたり、おやつの数を「全部でいくつかな?」と気にしたりする様子が見られたら、足し算の学習を導入してもよいでしょう。

もちろん、5歳を過ぎても数にあまり関心を示さない子もいますが、無理に「教えなければ」と焦る必要はありません。興味が見えたときに、少しずつ足し算の概念を織り交ぜてあげれば十分です。子ども自身のペースを尊重する姿勢こそが、学習意欲を長続きさせるコツです。

足し算の学習を進める前に、まずは数の概念を理解し、具体物で体験することが重要です。具体物を取り入れた2つのステップをご紹介します。

ステップ1. 具体物を用いた数の体験

子どもが足し算を理解するためには、「目で見て」「手で触って」操作できる具体物が欠かせません。まだ抽象的なイメージを描くのが難しい幼児期には、ブロックや積み木、ビーズ、お菓子など、自分の手で増やしたり減らしたりできるものが最適です。具体物の例をご紹介します。

積み木3つ+積み木2つ = 5つ

例えば、積み木を机に並べて「1、2、3……はい、あと2つ足すと全部で5つだね」と声を出しながら数えます。

ビーズ5つ+ビーズ3つ = 8つ

例えば、ビーズを並べたり糸に通したりしながら数えてみましょう。「1、2、3、4、5……あと3つ足してみよう。全部で8つになった!」とビーズの数が増える体験が、数への理解を深めます。

ステップ2.さまざまな素材で足し算のイメージを広げる

具体物として、身近にある食材や自然の素材も活用すると、子どもの興味をさらに引き出せます。りんごやみかんといった果物、公園で拾った落ち葉や小石など、実際の生活や季節を感じられる素材を足し算の学習に組み込むと、新鮮味が加わり「もっと数えてみたい!」という欲求が高まります。

  • 「りんご2個+みかん3個 = 5個」
  • 「落ち葉5枚+2枚拾う = 7枚」
  • 「どんぐり3つ+どんぐり4つ = 7つ」

このように、実際の物を使った体験は記憶に残りやすく、数が増えるイメージをはっきりとつかみやすくなります。

日常生活のなかで「足す」行為を見つける

日常生活においても、「足し算」は頻繁に登場します。家庭のさまざまなシーンに足し算を取り入れるための声かけや、遊びの工夫をご紹介します。

家庭で簡単に取り入れられる足し算

家庭での足し算指導というと、ドリルやプリントを連想する方もいますが、日常のさりげない場面を利用すれば、より自然に計算力を磨けます。例えば、次のようなシーンで声かけをしてみましょう。

  • おやつ時間:「クッキーが3枚あるよ。もう1枚足したら何枚になる?」
  • 買い物帰り:「りんごが2つ、バナナが3本あるね。合計いくつ?」
  • 洗濯物:「靴下が2足あったけど、あと1足見つかったね。全部で何足かな?」
  • 食卓で:「からあげが3つあるよ。もう2つ足したら何個になるかな?」
  • お風呂で:「今、おもちゃが3つ浮かんでいるけど、もう1つ入れたら全部でいくつだろう?」

こうした生活のなかでの足し算は、子どもにとって「勉強している」という意識が薄く、自分の生活に役立つスキルとして自然に定着しやすくなります。保護者が「すごいね、今足し算で数えられたね!」と小さな成功を見逃さずにほめてあげると、子どもは「数えるって楽しい!」と自信を深めることでしょう。日常生活には、実は数を取り扱うチャンスがたくさん転がっています。子どもの興味を損なわない程度にさりげない声かけをするだけで、足し算の練習機会を増やせます。

ごっこ遊びによる実践的な計算

お店屋さんごっこやおままごとは、子どもの想像力を大いに引き出す遊びであり、足し算を取り入れるチャンスも豊富です。

  • お店屋さんごっこ:「りんご1つとバナナ2本を買いにいくよ。全部でいくつ買うのかな?」
  • おままごと:「このお皿にハンバーグが2つ。もう1つお皿にのせたら全部で何個かな?」
  • ケーキ屋さんごっこ:「ショートケーキ3個とチョコケーキ2個をください。合わせて何個かな?」

ごっこ遊びのストーリーに夢中になりながら自然と数を扱う機会を得られるため、計算が苦痛になりにくいのがメリットです。

音楽やリズム、童謡・絵本、手遊びを使ったアプローチ

音楽やリズムに合わせて体を動かしながら学ぶと、知識として定着しやすくなり、子ども自身も楽しく取り組めます。また、童謡や絵本などを通して足し算のイメージを広げたり、手遊びを取り入れたりするのもおすすめです。子どもが楽しみながら前向きに取り組める学習アプローチを3つご紹介します。

音楽やリズムを使ったアプローチ

子どもはリズムに合わせて身体を動かしたり、歌を口ずさんだりすることが大好きです。足し算のフレーズも音楽やリズムと結びつけてあげると、自然に暗唱しはじめ、足し算を遊びのひとつとして吸収します。

  • 「1足す1は2、2足す1は3♪」 とリズミカルに繰り返す
  • 手拍子や足踏みを組み合わせながら、「3足す2は5♪」 と身体も一緒に動かす

音や身体の動きを通じた記憶は、視覚的な学びとも相乗効果を生むため、幼児期にはとても効果的です。

童謡や絵本からイメージを広げる

数や動物、果物などが登場する童謡や絵本は、足し算の導入として非常に有効です。物語の世界観を楽しみつつ、数の増減や足し算を自然に体感できます。

  • 「5ひきのかえる」など、動物の増減を描いた童謡を一緒に楽しむ
  • 「はらぺこあおむし」など、ストーリーが進むごとに具体物や登場人物が増える作品では、「最初は1個、次は3個だね。次は何個になると思う?」と声かけをして予想させる
  • 絵本を読み聞かせるときに、「このページにもう1匹動物が来たら全部で何匹になるのかな?」と声かけして一緒に楽しむ

手遊び・指遊びで「自分の体」を使う

子どもにとって最も身近な計算道具は自分の指です。「1、2、3……」と指を1本ずつ数え、さらに1本増やして「何本になった?」と考えることで、目と手の動きが連動し、足し算がより具体的に理解できます。

  • 「3本の指に、もう1本立てたら4本!」
  • 「2+3のときは左手に2本、右手に3本立てるよ。全部数えると5本だね」

このように、手や指をはじめ身体全体を使って五感に訴える遊びを重ねることで、子どもは計算のプロセスを自然に身につけていきます。

段階的なステップで安心感を持たせる

数の数え方や足し算・引き算については、小学校入学後にきちんと教わることになるので、未就学のうちは完璧な理解を目指す必要はありません。もちろん、数への興味が強くどんどん学びたいという子どもの場合は、少しずつ難易度を上げていくのもよいでしょう。モチベーションや意欲を大事にしながら知的好奇心を満たせるような、具体的な学習のステップを3つご紹介します。

シンプルな計算から徐々にレベルアップ(答えが一桁から二桁へ)

足し算を教える際には、まずは小さな成功体験を積ませることが肝心です。まずは、「1+1」や「1+2」など、答えが3以下の問題からスタートし、子どもがすぐに「できた!」と感じられる瞬間を増やします。その後、「2+2」「3+2」「3+3」など、答えが10以下の一桁になる足し算へと広げていきましょう。

一桁の計算

  • 2+2=4:ブロック2個を2セット並べ「全部で4つになったね!」
  • 4+3=7:指を4本+3本立てて「7本になった!」

「7+5=12」や「8+6=14」など、足し算の答えが10を超える(二桁になる)と、繰り上がりの概念を理解しなければならず、難易度が上がります。両手の指では数えきれないので、ブロックなどの具体物を補助として取り入れるのがおすすめです。

二桁の計算(繰り上がり)

  • 7+5=12:まずブロックを7個並べて、5個足します。10のかたまりを意識し、「10+2」の形で「合計12だね」と再確認するのがおすすめです。
  • 9+4=13:指でカウントしにくい場合は、10本まで指を使って「あとの4はどうなる?」とブロックを足して考えるのもよいでしょう。

10という基準で「かたまり」を作る練習を何度か試し、視覚化することで繰り上がり計算への理解が深まっていきます。

具体物からシンボル(数字や記号)への移行

具体物での計算に慣れたら、次は数字や「+」「=」といった記号に親しむ段階へ進めます。例えば、「ブロックを3つ並べる→2つ足す→数える」という計算のあとに、「3+2=5」という数式を紙に書いてみましょう。「具体物による現実の操作」と「抽象的な記号表現」を結びつけるためです。

「3+2=5」の場合、紙に書きながら「ここで足したのは2だよね。=(イコール)という記号は、同じになるって意味なんだ」のように声かけをしましょう。10を超える場合も同様に、7個と5個のブロックを並べ、繰り上がりを理解しやすいよう10個と2個に分けてから、「7+5=12」という数式に書き起こします。「+」や「=」の記号が書かれたカードやシールなど、ビジュアルによる補助も活用してみてください。

つまずいたら「戻り学習」を

子どもが大きな数の足し算でつまずいたときは、迷わず具体物に戻って理解を再確認するのが大切です。

  • 指で再カウント:「あと何本増えたかな?」
  • ブロックを手に取って再度計算:「最初は7個で、5個足すよ。今、何個まで足したかな?」

戻り学習によって子どもの不安感を取り除き、「わからなくなってもやり直せばいいんだ」という安心感を育みましょう。失敗してももう一度やり直すことで、達成感を味わえます。

成功をほめてモチベーションを高めることも重要

足し算の学習を進めていくと、「うまくできない」「わからない」といったつまずきから、子どもが嫌がるようになることも少なくありません。学習につまずいたときの対処法や、子どものモチベーションを維持し、学習意欲を高めるための工夫をご紹介します。

子どもが学習を嫌がる場合の対処法

子どもが足し算の学習に対して強い拒否感を示したり、続けるのを嫌がったりするときは、無理に問題を解かせるよりも、一度遊びや日常生活に計算を溶け込ませてみるのが得策です。例えば、次のような遊びやゲームを学習と置き換えてみると、勉強っぽさが薄れます。楽しんでいるうちに計算に触れる機会が増え、足し算の学習への抵抗感を和らげやすくなります。

すごろく

「3が出たね。次に2が出たらどこまで進めるかな?」など、足し算の要素を自然に学べます。また、サイコロを2回振った目を合計してコマを進めるというルールにするのもおすすめです。「3と4が出たから、3+4=7マス進めるね!」など、いつものサイコロよりたくさん進めるので子どもは喜びます。

カードゲーム

「トランプのカードを使って、5を作ってみよう!」などの遊びは、数字に慣れ親しむのに役立ちます。また、トランプのカードや数字カードと「+」「=」カードを組み合わせて、式を作る練習もできます。例えば「2と3があるよ、どこに“+”と“=”を置いたら5ができるかな?」というように、子どもが自分で配置を考える遊びにするとよいでしょう。

すごろくやカードゲームなどの遊びには、足し算を何度も体験できる仕組みが詰まっています。流れのなかで自然と「もう一度計算しよう」と思わせる力があるので、学習意欲が低下したときでも取り入やすいといえります。

肯定的なフィードバックで伸ばす

子どもはお父さん・お母さんからほめられると、自分の取り組みに対して大きな自信を持ちます。正解だったときはもちろん、間違えたときも「惜しいね、あと少し!」と励ましたり、「考え方が面白いね」「一生懸命やったね」と肯定的に受け止めたりすることで、学びへのモチベーションを維持しやすくなります。

そのほかにも、「どういう風に考えたの?」 とプロセスを言語化させる声かけや、「もうちょっとで正解だったよ」 と次の挑戦につなげる声かけもおすすめです。子どもの答えに耳を傾け、答えの見つけ方のプロセスを理解しようとする姿勢を示すと、子どもは「自分のやり方を見てくれているんだ」と安心し、自発的に工夫を重ねるようになります。

学習意欲を保つ環境づくり

家のリビングの一角に、いつでもブロックや数字カードにアクセスできるコーナーを作っておくと、子どもが「今ちょっとやってみたい」という気分になったときにすぐ取り組めます。特に、子どもは自発的な興味が湧いた瞬間が最も学習効果が高いので、そのタイミングを逃さずに済むようにするのが理想的です。

また、お父さん・お母さんからも「こんなのがあるよ、一緒にやってみる?」と誘ってみたり、「どうやって組み合わせるのかな? お母さん(お父さん)もわからないから一緒に考えて!」と声をかけたりするのもよいでしょう。子どもは「お父さん・お母さんも楽しんでいるんだ」と感じ、さらにやる気を高めます。

「数感覚」を育てるのに役立つ学習例とICTツールの紹介

足し算を本当の意味で身につけるためには、ただ「3+2=5」と覚えるだけでなく、「5になるためには、ほかにどんな組み合わせがあるだろう?」といった問いかけを重ねることが重要です。同じ答えになる組み合わせをたくさん見つけることで、子どもの柔軟な数感覚が育まれます。学習例として、数の組み合わせの例や具体的な声かけ例をご紹介します。

5を作る例

  • 1+4=5, 2+3=5, 5+0=5 など
  • 「4と1ではどっちが大きいかな?」「2と3を合わせても同じ5だね」など、組み合わせを比較するような会話を取り入れましょう。

6を作る例

  • 1+5=6, 2+4=6, 3+3=6 など
  • 「3+3は同じ数字を合わせるんだね」など、数字のつながりを意識した発見につながるよう声かけするのがよいでしょう。

10を作る例

  • 1+9=10, 2+8=10, 3+7=10, 4+6=10, 5+5=10 など
  • 1~9までの数字をすべて使うので、さまざまな組み合わせに気づきやすくなります。「前と後ろを入れ替えても10になるね」「この数字とこの数字は仲良しだね」などの声かけや、数字のペアを探す感覚は、子どもの探究心を刺激します。

ほかにも、「7って2+5や3+4でもできるね。じゃあ1+6はどうかな?」など、たくさんのケースを比べたり繰り返し試したりすることで、「数は分解や組み合わせができる」という感覚が育まれます。

ICT教材やデジタルツールの活用もおすすめ

近年は、幼児向けにも多彩な学習アプリやオンライン教材が提供されています。画面をタッチしてブロックを動かし、足し合わせた数を視覚的・聴覚的にフィードバックしてくれるものや、正解すると可愛いキャラクターが喜んでくれるものなど、魅力的な仕掛けがいっぱいです。

パズル系アプリ

数字パネルと「+」「=」などの記号パネルを指で動かし、並べて式を完成させます。答えが合うと画面が華やかになるなど、ゲーム要素が満載です。

タッチ操作ゲーム

指先でドラッグ&ドロップしながら、「3+2」を「5」のスペースまで移動させます。正解すると音声ガイドが流れ、モチベーションが高まります。

キャラクター学習アプリ

人気キャラクターが足し算の問題を出してくれるほか、成功するとごほうびアイテムが手に入るなど、リワードが明確に設定されています。

デジタルツールを活用する際は、必ずお父さん・お母さんが内容を選別し、時間の管理もサポートしてあげましょう。お父さん・お母さんがアプリの使い方を理解し、「ここはどうするのかな?」「一緒に考えてみよう!」と寄り添いながら取り組めば、子どもは安心して学習を進められます。使い終わったあとに、「今日はこんな問題ができたね」「キャラクターが喜んでいたね!」と振り返ると、学びの定着率がさらにアップするでしょう。

具体物や日常生活を通して数の感覚を自然に学ぼう

幼児期に足し算を習得するためには、数字や記号だけを暗記するのではなく、日常生活や遊びを通じて数を体験させることが大切です。ブロックや果物、落ち葉といった具体物から始まり、歌やリズム、ゲーム、ごっこ遊びなど五感に訴える多様なアプローチを組み合わせれば、子どもは自発的に「足し算って面白い!」と感じるようになります。

段階的なステップを踏むことで、小さな成功体験を積み重ねていくと、子どもは学習に対する自信や意欲を育んでいきます。子どもが足し算の学習に積極的になれない場合は無理強いするのではなく、遊びの要素を取り入れてみたり、しばらく時間を置いたりして柔軟に対応してあげましょう。学習環境を整え、子どもが「もう一回やってみたい!」と思ったときにすぐ取り組めるように用意しておけば、興味や集中力が高まった瞬間を逃さずに済みます。

幼児にとって最初の算数的体験となる足し算が、楽しくワクワクするものであれば、その後の算数・数学の学びもスムーズに広がっていきます。今回ご紹介したヒントを保育や家庭での実践に取り入れ、子どもたちが笑顔で「できた!」と声をあげる瞬間をサポートしてあげましょう。

プレ・エデュ編集部

Pre edu編集部

Pre eduの企画・執筆・編集をしています。小学校受験や幼児教育に関する情報をお届けします。

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