インターナショナルスクールの特徴とは?メリットとデメリット、気になる学費についても解説
国際的な人材に育ってほしいという願いから、インターナショナルスクールへの入学を検討しておられるご両親もいるかもしれません。インターナショナルスクールはもともと日本に住む外国人の子どもたちを対象とした教育施設でしたが、現在は日本人の生徒も多く通っています。英語で授業が行われており、語学力や国際的な感覚などが養えるというメリットがある一方で、高い学費や日本の教育制度との連携の難しさなど、デメリットも少なくありません。小学校選びの参考になるよう、この記事ではインターナショナルスクールのメリットやデメリットなどをご紹介します。
インターナショナルスクールとは
文部科学省によると、インターナショナルスクールとは、外国人児童生徒を対象として主に英語で授業が行われる教育施設をいいます。学校教育法第1条に規定されている学校、いわゆる「一条校」として認められたインターナショナルスクールは、小中高あわせて全国に73校あります(2023年3月現在)。
一方、インターナショナルスクールの多くは学校教育法第134条に規定されている「各種学校」として都道府県知事の認可を受けているスクールであり、なかには無認可のスクールもあります。日本国籍をもつ子どもを、無認可または各種学校扱いのインターナショナルスクールに就学させた場合、保護者は日本の法律で規定された就学義務を履行したことにはならないため注意が必要です。
インターナショナルスクールは基本的に、ご両親の仕事の都合や何らかの理由によって一時的に日本に住んでいる、外国籍をもつ子どもたちが教育を受ける場です。なかには、日本国籍をもつ児童の入学を制限しているスクールもあります。
また、英語「を」学ぶための語学学校とは異なり、インターナショナルスクールはあくまで子どもたちが英語「で」教育を受けることができる学校です。そのため、入学にあたってはお子さま自身が英語で基本的なコミュニケーションが取れることが条件となります。
しかしながら、近年ではインターナショナルスクールに通う日本人児童も増えてきました。例えばご両親が駐在員や貿易関係のお仕事をしているなどの理由で、海外で生まれ育った子どもが、日本に帰国した際にインターナショナルスクールに通うケースもあります。現地でもインターナショナルスクールに通っていた子どもたちが多いため、日本の小学校よりも文化的にもなじみやすく、ご両親が再び海外へ転勤になった場合にも対応しやすいためです。ほかにもインターナショナルスクールには、海外の多くの学校と同様9月に新学期が始まる、幼稚園(プリスクール)から高等学校までの一貫校が多いなどの特徴があります。
インターナショナルスクールのメリット
インターナショナルスクールには、英語で授業が行われること以外にもさまざまなメリットがあります。主なメリットを4つご紹介します。
幼少期から国際感覚を身につけられる
インターナショナルスクールには、さまざまな国籍を持つ子どもたちが集まっています。生徒の国籍の比率はスクールによって異なりますが、欧米諸国や中南米諸国、オーストラリアやアジア圏など、あらゆる国の子どもたちと一緒に学べるのが特徴です。日本人の帰国生徒が多いスクールもあれば、日本人の生徒が一定の人数になるよう制限しているスクールもあります。
幼少期からさまざまな国の人たちと接することで国際感覚が身につき、世界情勢にも興味を持って知見を広げられるようになります。異なる価値観や文化的背景を受容できることは、将来的にグローバルに活躍するための土台となり、お互いを尊重して思いやる心も身につくことでしょう。
国際標準の教育を受けられる
インターナショナルスクールでは、国際標準に即したカリキュラムで授業が行われています。なかには、国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラムの認定を受けているインターナショナルスクールもあります。国際バカロレア(IB)は、多様な文化を理解・尊重し、平和な世界に貢献できるグローバル人材を育成することなどを目的としており、世界159以上の国や地域にある約5,500校において実施されています(2022年5月現在)。
そのほかにも、インターナショナルスクールでは国際的に活躍できる人材の育成に向けて、コミュニケーション力やプレゼン力を磨くようなカリキュラムも多くなっています。ディスカッションやディベート、プレゼンテーションを取り入れた授業や、先生が一方的に教える授業ではなく生徒が積極的に発言する参加型の授業など、一般的な日本の小学校とは異なる授業風景が見られます。他者の意見を認めつつ自分の意見を発言する力や積極性、主体性などを磨くことができます。
また、日本の小学校でも近年ICT教育が進みつつありますが、インターナショナルスクールではよりICT環境が発達しているのも特徴です。パソコンやタブレットなどを使った授業が、低学年のうちから活発に行われています。
少人数制で一人ひとりに配慮が行き届く
インターナショナルスクールは国際標準に基づいているため、1クラスあたりの人数が少ないのも特徴です。
例えば、アメリカ(カリフォルニア州)の小学校では、第1学年~第3学年の1学級あたりの人数は30人が上限とされています。イギリスでは第3学年以降は上限が設けられていませんが、小学校の第1学年~第2学年は1学級あたり30人が上限とされています。ドイツでは第1学年~第4学年までの標準は24人と定められており、18~30人の範囲であることとされています。フランスでは全国で共通の基準は設けられていませんが、教員1人あたりが受け持つ平均児童数は17~20人となっています。一方、日本の小学校は2021年3月の法改正により、1学級あたりの上限を40人から35人に段階的に引き下げることが決まったばかりです。国際的に見ると、より少人数で教育を受けることが当たり前になっていることがわかります。※1
インターナショナルスクールでは国際標準に基づき少人数制を取り入れているところが多く、先生1人あたりに対して生徒は8~16人といったスクールもあります。帰国子女が多いことや、多国籍の生徒が集まっている分、学習の進度や学力がそろいにくいこともあり、生徒に応じた指導ができるような体制になっているのです。少人数制だからこそ子どもたち一人ひとりに目が行き届くのも、インターナショナルスクールのメリットといえます。
海外進学の道が開ける
インターナショナルスクールの高等学校を卒業した生徒の8割以上が、海外の大学へ進学しているといわれています。
例えば、IB認定を受けているインターナショナルスクールの場合、国際的に通用する大学入学資格である「国際バカロレア資格」を高校卒業と同時に取得できます。バカロレアのカリキュラムには、3~12歳を対象としたPYP(プライマリーイヤーズ・プログラム)、11~16歳と対象としたMYP(ミドルイヤーズ・プログラム)、16~19歳を対象としたDP(ディプロマ)という3つの課程があります。高校過程にあたるDPを履修するだけで取得するのは難しいとされており、海外進学を見据えて小学校あるいはプリスクールからインターナショナルスクールに通わせるご家庭もあります。
インターナショナルスクールのデメリット
インターナショナルスクールにはさまざまなメリットがある一方で、国際標準であるがゆえのデメリットも少なくありません。インターナショナルスクールへの入学を検討するにあたっては、次のようなポイントに注意しながら、必ず情報収集をしてください。
日本の学校への転校や進学が難しいケースも
インターナショナルスクールのメリットとして「海外進学の道が開ける」と挙げましたが、一方で日本の小学校への転校や、日本の中学校・高等学校・大学への進学は難しくなる場合もあります。特に、学校教育法第1条に規定されている「一条校」以外のスクールに通っている場合は義務教育を受けたことにならないため、公立の中学校への編入が認められないケースもあるため注意が必要です。※2、3
ただし、インターナショナルスクールから海外の大学への進学は比較的スムーズとされています。日本の大学へ進学する場合も、以前は大学検定試験取得が必要でしたが、現在は国際バカロレア入試やAO入試などで認められるようになってきました。インターナショナルスクールに通う場合は、小学校の先にある中学、高等学校、そして大学という長い目でお子さまの進路を想定しておきましょう。
インターナショナルスクールの学費が高額
学校にもよりますが、インターナショナルスクールの学費は非常に高額です。多くは日本政府が認めた学校ではないため、運営費の大部分を保護者や日本にある外国企業などが担っています。年間で約150~200万円、高等学校課程になると年間で約200~250万円かかるところもあります。これに加えて、入学費や教材費、給食費、スクールバス運営費などの諸費用がかかります。
文部科学省が行った「子どもの学習費調査」によると、令和3年度における年間あたりの学習費は、公立小学校で約35.3万円(学校教育費 6.6万円、学校給食費 3.9万円、学校外活動費24.8万円)、私立小学校で約166.7万円(学校教育費 96.1万円、学校給食費 4.5万円、学校外活動費66.1万円)とされています。※4
インターナショナルスクールは、私立小学校と比べても高い学費がかかることがわかります。
ご両親の英語力と日本語学習のフォロー
お子さまにも基本的な英語力は必要ですが、先生や学校側とコミュニケーションを取り、お子さまの学習をフォローするためにご両親にも一定の英語力が求められます。円滑な学校生活のために、ご両親のいずれか(または両方)が英語でコミュニケーションができることを入学条件のひとつとして挙げているインターナショナルスクールもあります。
英語力に加えて、お子さまの日本語学習をご両親がフォローしてあげる必要もあります。インターナショナルスクールでも日本語は習いますが、あくまで外国語学習の扱いです。漢字や作文、敬語などの日本語や日本の文化については、各ご家庭でフォローするのがよいでしょう。
インターナショナルスクールに通っている子どもたちのなかには、日本語も英語もどちらも十分に発達しないセミリンガル(ダブル・リミテッド)という状態になってしまうケースもあります。お子さまをバイリンガルに育てたい場合や、日本の大学へ進学したり日本で就職したりする可能性がある場合は、日本語や日本の文化についても学んでおくことが望ましいです。
インターナショナルスクールは情報収集が肝心
インターナショナルスクールへの入学を検討している場合は、志望校が一条校にあたるかどうか、国際バカロレア認定を得ているかどうかを確認することをおすすめします。高額な学費を無理なく払えることはもちろん、中学・高等学校・大学にわたる進路の見通しについても、ご家庭で検討しておくとよいでしょう。ハードルもいくつかありますが、お子さまが将来グローバル人材として成長し、世界に羽ばたくための第一歩となる可能性もあります。情報収集をしながら教育方針を話し合い、検討するようにしましょう。
参考資料
※1 文部科学省 学級規模の基準と実際[国際比較]
※2 文部科学省 学齢児童生徒をいわゆるインターナショナルスクールに通わせた場合の就学義務について
※3 文部科学省 小学校等の課程を修了していない者の中学校等入学に関する取扱いについて(通知)
※4 文部科学省 令和3年度子供の学習費調査