幼児期の家庭学習を効果的に行うポイントは?遊びや日常生活を学びに変える
幼児期は子どもの発達において重要な時期であり、家庭学習はその成長を豊かにするための貴重な手段です。幼児期の子どもたちは好奇心旺盛で、スポンジのようにさまざまなことを吸収し、学びます。この記事では、幼児期の家庭学習を効果的に行うためのポイントについてご紹介します。
遊びを通じた家庭学習
幼児期の家庭学習では、遊びを通じて子どもたちが学びを楽しむ方法を見つけることが重要です。絵本、積み木、パズルなど、ご家庭でも取り入れやすい身近な遊びが、どのような家庭学習につながるのかご紹介します。
絵本の読み聞かせ
幼児期における絵本の読み聞かせは、読書能力、語彙力、読解力といった言語発達に良い影響を与えるとされています。※1
例えば、お子さまが恐竜に興味を持っている場合、恐竜が登場する絵本を一緒に読むことで、恐竜の名前や特徴を楽しく覚えることができます。また、登場人物のごっこ遊びを通して物語の内容に共感し、登場人物の気持ちを理解することにもつながります。絵本の読み聞かせによって、子どもたちの情緒的な成長の促進も期待できます。
関連記事:絵本の読み聞かせはどんな効果がある?研究論文や絵本の選び方、読み聞かせのコツについて解説
積み木遊び
積み木遊びは、手指の器用さや空間認識能力、創造性、集中力などを育むために有益です。※2
例えば、お子さまが動物に興味を持っている場合、積み木を動物に見立てて動物園を作ったり、動物の鳴き声を真似しながら遊んだりすることで、想像力が育まれます。また、積み木を積み上げる動作は手指の器用さを育むのに役立ち、年齢の低い子どもでも楽しく取り組めます。積み木遊びを通じて、子どもたちは自分の考えを形にする力を養い、クリエイティブな発想を発展させることができます。
パズル遊び
パズルは子どもたちの論理的思考を養うのに役立ちます。パズル遊びを家庭学習に取り入れ、より学びを深めたい場合は、パズルの図案を工夫してみましょう。例えば、お子さまが自然に興味を持っている場合、自然の風景を描いたパズルを用意して一緒に解くことで、地形や季節の変化について学ぶことにもつながります。また、パズルを通じて自分で問題を解決するという経験は、自己肯定感の向上にも役立ちます。
論理的思考の基礎体験として、パズルは最適です。パズルに取り組むとき、子どもは強制感などを一切感じることなく、「解きたい」という強い意志をもつようになります。さまざまな思考が繰り広げられ、適当な決めつけや曖昧な判断が一か所でもあると問題が解けないという厳密さが、子どもを鍛えるのです。※3
興味関心に基づいたアプローチで家庭学習を促進する
家庭学習では、子どもの興味関心に合わせたアプローチを取り入れることで学びがより効果的になります。2つの例をご紹介します。
車や乗り物に興味を持っている
お子さまが車や乗り物に興味を持っている場合、一緒に自動車の絵を描いたり、おもちゃの車で遊んだりすることで、交通に関する知識を楽しく学べます。また、自動車が走っているところを見学したり、交通安全教室に参加したりすることで安全意識を高めることにもつながります。車の部品や仕組みを細かく説明すれば、子どもたちの興味をさらに引き出すこともできるでしょう。「子どもだから難しいことを説明してもわからないだろう」と決めつけるのはやめて、お子さまの興味関心をより広げていけるようにサポートしてあげましょう。
動物への関心を持っている
お子さまが動物に興味を持っているなら、一緒に動物図鑑を見たり、動物の絵を描いたりすることで、動物の特徴や名前を覚えることができます。動物園や水族館などを訪れて実際に動く動物を見たり、動物と触れ合う喜びを経験したりするのもよいでしょう。さらに、動物の保護活動や絶滅の危機について学ぶことで、環境への理解も深められます。お子さまが今好きなテーマを切り口に、ほかの分野へも興味関心を広げていけるように関連付けを行いましょう。
日常生活を学びの機会に変える
日常生活を学びの機会に変えることで、家庭学習がより実践的になります。普段の生活に取り入れやすい事例を3つご紹介します。
料理
料理は家庭学習に適した体験であり、物の名前や数量、季節や旬などさまざまな知識を学ぶ機会になります。食材の名前を学ぶのはもちろん、夏のくだものや冬の野菜など、季節や旬に触れることができます。例えば、お子さまと一緒にピザを作る場合、材料を計量したり具材の数を数えたりすることで、数や量、形について学ぶこともできます。生地をこねたり広げたりする動作も、手指の器用さを育むチャンスです。
また、料理を通じて食材の栄養価や健康への意識を高めることができます。野菜や果物の栄養について一緒に調べたり、バランスの良い食事の重要性を話し合ったりするのもおすすめです。
さらに、誕生日やクリスマスなどのイベントごとに家族で料理を作ることで、協力やコミュニケーションの重要性を実感できます。
買い物
お買い物にお子さまを連れていくのもおすすめです。商品の値段や支払いのやり取りを見ながら、お金の概念を少しずつ理解できます。例えば、買い物リストを作成して予算内で買い物をする経験は、算数の基本的な概念や判断力を養ったり、責任感や経済的な管理能力を育んだりするのに役立ちます。スーパーマーケットであれば、季節によって入れ替わっていく野菜や果物、魚などを見て、旬を楽しむことができます。さらに、店員さんとのコミュニケーションは、礼儀やマナーを学ぶ機会にもなります。
自然と触れ合う
散歩中にさまざまな草花を見たり、名前を覚えたりすることで、季節感を育み、自然への関心を深められます。お子さまが虫に興味を持っている場合、近所の公園などで虫探しをするのもおすすめです。図鑑だけでなく実際に昆虫と触れ合いながら、その種類や生態について学べます。ご家庭で植物を育てたり、昆虫飼育をしたりするのもよいでしょう。植物の成長や蝶の飛び方などを観察する時間を持つことで、季節の変化を感じ取り、環境への興味を刺激します。自然の中での遊びや発見は、子どもたちの創造性や問題解決能力を向上させるだけでなく、心身の健康にも良い影響を与えます。
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愛情と共感を大切にする
家庭学習において重要なのは、愛情と共感を持ってお子さまをサポートすることです。家庭学習でつまずいてしまったときの接し方の参考にしてください。
難しい問題へのアプローチ
お子さまが困難な問題に取り組んでいる際には、その苦手意識を責めるのではなく、一緒に取り組んで楽しく解決する方法を見つけるようにしましょう。例えば、数の問題に挑戦する際には、問題を絵に描いたり物語にしてみたりすることで、さらなる興味を引き出すことができます。また、誤った答えに対しても否定せず、どこが間違っているのかを一緒に見つけながら、学びを楽しむ姿勢を育てましょう。
感情の理解と受容
幼児期は感情の起伏が激しい時期です。お子さまが自分の気持ちを表現したときは、ご両親は共感的な態度を示しましょう。感情を理解するための手助けができれば、お子さまの自己肯定感を高めることができます。例えば、積み木で遊んでいたお子さまがうまくいかないからと怒り出したときは、悔しい気持ちを受け止めつつ、もう一度チャレンジできるように促したり、積み上げやすくなるよう少しだけ手助けしたりすることで、諦めない力や集中力を育むことができます。
教育系の動画やアプリの適切な管理
最近は、スマートフォンやタブレットを活用した家庭学習も増えており、教育系のアプリや動画は、子どもたちの学習をサポートする優れた手段といえます。例えば、お子さまが天体に興味を持っている場合、宇宙や地球の仕組みをわかりやすく説明してくれるアプリや動画を使って、自然科学の基本を学ぶことができます。図鑑や絵本だけでは理解しにくいポイントも動画だとわかりやすく、興味をもって視聴してくれることでしょう。
その一方で、動画やアプリを制限せず過剰に利用してしまうと、睡眠不足や運動不足、注意力の低下などのリスクを引き起こす可能性があります。家庭学習において動画やアプリを利用する場合、適切な管理が必要です。使用にあたっては、以下のようなポイントに注意しましょう。
時間の制限
動画やアプリを適切に管理するために、1日に使用できる時間の上限を設定しましょう。日本小児科学会によると、幼児期の子どもがテレビやタブレット、アプリなどのメディアに接する時間は、1日に2時間以内が適切とされています。※4
ほかにも、3歳から就学前の児童において視聴時間が3時間以上の子どもたちは、2時間以内の子どもたちと比べてコミュニケーションや言語発達の遅れ、情緒不安定などが見られたという報告もあります。※5
スマートフォンやタブレットを使用する場合には、お子さまと一緒にルールを決め、タイマーや専用のアプリを使って時間を制限するのがよいでしょう。
内容の選択
適切な内容の教育アプリや動画は、有意義な学びの機会になります。例えば、幼児向けの学習アプリには、基本的な数や文字の認識、色や形の理解などが学べるものがあります。動画を視聴する際には、信頼性のある教育機関や公共放送の提供する内容を選ぶことで、子どもたちの知識や価値観の形成にプラスの影響を与えられます。
親子での利用
アプリや動画を教育的なアクティビティに変えるためにも、親子で一緒に利用するようにしましょう。お子さまがアプリや動画を利用する際にご両親が見守ったり、視聴後に内容について一緒に話し合ったりすることで、理解力やコミュニケーション力の向上につながります。また、ご両親がスマートフォンやタブレットを見ながらダラダラと過ごしている姿をできるだけ見せないように心がけることで模範となり、適切な管理につなげやすくなります。
学習したがらない場合の対応ポイント
お子さまが学習に対して興味を持たない場合、ご両親が以下のようなアプローチを取り入れることで、学習意欲を引き出すことができます。
ゲームやアプリを取り入れる
ゲームやアプリを通して遊びながら学ぶことで、学習への抵抗を減らすことができます。例えば、算数が苦手なお子さまの場合には、数字や形を使ったゲームやアプリを取り入れながら、楽しく学ぶ機会を提供しましょう。
ポジティブなフィードバック
学習に取り組んだ後は、ご両親からポジティブなフィードバックを与えましょう。お子さまが自信を持って取り組むためには、成功や努力を称賛し、成長をサポートすることが大切です。失敗してもよいというメッセージを伝え、お子さまの学習意欲を損なわないように心がけましょう。
楽しい学習環境の提供
学習する場所や時間を楽しい雰囲気にすることで、学習意欲を高められます。専用の学習スペースを作ったり、好みの文房具を用意したりしながら、学習へのモチベーションを高めましょう。
自分で選ぶ機会を与える
お子さまに学習内容を選ばせることで、自主性を尊重し、自分の学びたいことに向き合う機会を与えられます。学習テーマをいくつか提示して、お子さまが好きなものを選ぶよう促し、学習への積極的な姿勢を引き出しましょう。
学習の目的を伝える
お子さまに学習の目的や重要性を伝えましょう。例えば、数字は日常生活で役立ちますし、将来の職業にも活かせます。学習の目的をお子さまが理解すると、学習への意欲が増す場合があります。
共感と理解
お子さまが学習に対して抵抗を示したときは、共感的な態度を持って理解し、気持ちに寄り添うことが大切です。学習に対するネガティブな感情を否定せず、一緒に原因を見つけ、解決策を一緒に考えながら、学習意欲を高められるよう寄り添いましょう。
一人ひとりの子どもに合わせた家庭学習を
家庭学習は個々の子どもに合わせたアプローチが重要であり、お子さまの興味や個性を尊重しながら、楽しく学ぶ環境を提供することが肝心です。対話と共感を大切にし、お子さまが学習を楽しむ姿勢を育むことで、持続的な学びの喜びを築いていきましょう。
参考資料
※1 足立 幸子. (2004). 国際学術誌における読み聞かせ研究レビュー. 国語科教育, 55, 52-59.
※2 林 秀紀. (2021). 木製玩具のデザインが子どもの発達に及ぼす教育的効果の検証と考察. 日本感性工学会論文誌, 20, 347-355.
※3 高濱 正伸(著). (2007). 算数脳がグングン育つ「手づくりパズル」のすすめ!!. 草思社.
※4 公益社団法人日本小児科医会 子どもとスマホ・メディア
※5 甲斐 鈴恵. (2019). 子どもの電子メディア接触に関する保護者の意識 ―認定こども園などに通う子どもの保護者を対象に―. 日本小児看護学会誌, 28, 325-332.