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ひらがなを身につける
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小学校入学前に「ひらがな」を身につけるには?楽しく覚えるコツと練習法

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小学校に入る前に、すべての「ひらがな」の読み書きが完璧にできている必要はありません。それでも、未就学児にとって「ひらがな」を覚えることはさまざまなことへの興味を広げるきっかけになり、学習全般のスタートラインとなる大切な準備ステップといえます。しかし、文字を繰り返し書いたり、無理に暗記させたりするだけでは子どもは退屈しがちです。子どもの発達段階や興味・関心に合わせて、楽しく学べる工夫を取り入れることが成功の鍵です。

本記事では、年齢ごとに適したひらがな学習の取り組み方やさまざまな学習アプローチ、具体的な学習ステップやよくあるつまずき例と対策などを解説します。視覚・聴覚・触覚・運動感覚を活かす多感覚アプローチや、運筆や読み聞かせの効果、日常生活での実践、ICTツールの活用法など、子どもが「文字って面白い!」と思える仕掛けもご紹介します。親子でのコミュニケーションを深めながら、スムーズなひらがな習得を目指しましょう。

ひらがな学習は何歳から始めるのがよいか

ひらがな学習を始める時期は、一律に「○歳からがベスト」と定められるものではありません。子ども一人ひとりの発達や言葉への興味、周囲の文字環境など、さまざまな要素が関係します。ただし、概ね3~4歳ごろになると自分の名前を読んでみようとしたり、看板の文字を指差して大人に質問したりするなど、文字への興味・関心を抱く子が増えるとされています。年齢ごとの目安と特徴をご紹介します。

3~4歳

この時期の子どもは語彙が徐々に増え、自分の身の回りにあるものの名前を言葉にする力が育っていきます。「これ、なんて書いてあるの?」「これはどう読むの?」と大人に尋ねることも増え、文字そのものに対して好奇心を示すようになってきます。ただし、まだ集中力が長く続かないため、1回数分程度の短い時間で少しずつ文字を紹介するのが望ましいです。文字の形を見たり、声に出して音を聞いたりする体験を少しずつ積み重ね、あくまで「遊び」の延長として自然に文字に触れることを心がけましょう。

4~5歳

幼稚園や保育園での集団生活を通じて、自分やお友達の名前を書いたり読んだりする機会が増えます。「〇〇ちゃんの名前って『あ』から始まるんだね」「わたしの名前には『さ』が入っているんだ」というように、身近な人や物を通して「文字を知ると便利」「書けたらうれしい」という気づきが高まりやすい時期です。子どもの興味が深まったら、簡単なイラスト付きのひらがなカードを導入するなど、少しずつ学習道具を増やしてもよいでしょう。

5~6歳(小学校入学直前)

小学校入学を意識しはじめる時期になると、「もうすぐ1年生になるんだから、読めるようになりたい」という前向きな動機が生まれる子もいれば、まだ文字にそこまで関心を持たない子もいます。個人差が大きいので、焦って一気に詰め込みすぎないようにしましょう。生活の中でひらがなに触れる機会を増やしてあげたり、子どものペースに合わせて書き取り遊びを取り入れたりすると、スムーズにスタートを切れます。

いずれの年齢でも、子ども本人が文字に興味を示したタイミングで、焦らず取り組むのがポイントです。ここでご紹介した年齢ごとの特徴はあくまで目安にすぎないので、子どもの気持ちや発達段階を見極めながら進めていきましょう。

基本構造やパターンを理解する:ひらがなの「なかま」を感じる

ひらがなは、「あ・か・さ・た・な・は・ま・や・ら・わ」という子音の行と、「あ・い・う・え・お」という母音の段が交差して誕生する五十音と、「ん」で構成されています。子どもにとっては、単なる丸や線の集合に見える文字も「ちゃんと仕組みがあるんだよ」と伝えるだけで、少し興味を持ちやすくなります。具体的な学習方法として、五十音の基本構造やパターンを理解しやすくなる2つのアプローチをご紹介します。

行ごとに学ぶ

いきなり「あ」から「ん」まですべての文字を覚えようとするのではなく、「あ行(あ・い・う・え・お)」「か行(か・き・く・け・こ)」といった行のまとまりごとに学習を進める方法です。同じ母音(あ・い・う・え・お)が繰り返し登場するため、子どもは文字が“なかま”であることを感覚的につかみやすくなります。また、行ごとに「これは〇〇の行だよ」と呼びかけると、文字の関連性を認識しやすくなるのでおすすめです。

歌やリズムを導入する

幼児期の子どもは、音楽やリズムに合わせて体を動かすことが大好きです。五十音を一気に詰め込むより、例えば「あ行」だけの歌を作ってみたり、親子で手を叩きながら「か・き・く・け・こ」と唱えたりしてみると、楽しみながら自然と口に出す機会が増えます。音と文字がセットになると記憶に定着しやすいだけでなく、学習へのハードルが大きく下がるのもメリットです。

あくまでも初めは「ひらがなには仲間やパターンがあるんだね」という気づき程度でOKです。徐々に仕組みを理解してくれば、子どもは自発的に「これは何行?」と興味を持つようになるでしょう。

もちろん、子どもが五十音の構造やパターンにあまり興味を持てない場合は、自分の名前や身近なものの名前などから始めても構いません。実際、小学校でひらがなの書き方を教える際は、五十音順ではなく字形が単純な「つ」「く」「し」「へ」などから始めたり、身近な言葉から始めたりする場合もあります。「この言葉とあの言葉は同じ文字で始まるね」「この文字とこの文字は形が似ているね」などの気づきも、文字への好奇心につながります。

多感覚アプローチ:目・耳・手・体で覚える

子どもが新しい概念を学ぶときは、視覚・聴覚・触覚・運動感覚など、さまざまな感覚を動員したほうが記憶に定着しやすいといわれています。ひらがな学習も、机に向かって「書く・読む」だけにならないよう多感覚的にアプローチしましょう。

視覚(見る)

文字カード+イラスト

「あ」のカードには「あり」の絵、「い」のカードには「いぬ」の絵といったように、文字と具体的な単語・イラストをセットで見せると、子どもは文字と知っているものの名前を結びつけやすくなります。また、カードの色分け(例えば、あ行は赤、か行は青など)をすると、文字グループを視覚的に区別でき、理解が進みやすくなります。

動画や絵本を活用

文字が動いたり変化したりする動画や、ひらがな中心の絵本を見せるのもおすすめです。目で追いやすい大きなフォントやカラフルな挿絵があると、子どもの興味をかき立てやすくなります。

聴覚(聞く)

五十音の歌・リズム

「あ・い・う・え・お、か・き・く・け・こ……」と、単調になりがちな文字の羅列も、リズミカルに唱えたり歌に合わせたりすることで耳と口の運動になります。子どもが大好きなアニメや童謡のメロディを活かし、替え歌のように楽しむのもよいでしょう。

口の動きを大げさに見せる

「あ」は口を大きく開く、「い」は口を横に引くなど、親がわざと大げさな口形をしてみせると、子どもは真似したくなります。「“あ”の時は、あーんと口を開くよ」のように説明しながら、動きや音をセットで教えるとさらに覚えやすくなります。

触覚・運動感覚(触れる・動く)

粘土・砂を使った遊び

紙に鉛筆やペンで書き始める前に、粘土や砂に指で文字の形をなぞる遊びを取り入れるのもよいでしょう。線を引いたり、ぐるっと円を描いたりといった文字の構造を、指先の動きから覚えられます。筆記用具を手に持って書くよりも直感的に、指先の触覚を刺激しながら学べます。

体全体を使って空間に大きく描く

床に新聞紙を広げて大きく文字を書き、その文字の上を歩いたりジャンプしたりしながら「体全体で文字の形を追う」という体感学習も、記憶に残りやすいアクティビティです。運動が得意な子は特に喜んで取り組むでしょう。

運筆

クレヨンや太いペンからスタート

細い鉛筆やペンでは筆圧のコントロールが難しく、書く行為がストレスになりがちです。まずはクレヨンや太めのマーカーで自由に大きな文字を書いて楽しむと、筆記への抵抗感が減ります。

書き順(筆順)の意識づけ

小学校入学後にきちんとした書き順を学ぶことができるので、未就学児の段階では厳密な書き順にはこだわりすぎなくても構いません。ただし、入学後の混乱をできるだけ防ぐためにも、書き順(筆順)を意識することは大切です。簡単な文字(つ・く・し・へ など)から少しずつ始め、「ここから書き始めるよ」「最後はここを止めるよ」と声をかけながら取り組みましょう。子ども本人のモチベーションやひらがなへの興味・関心を大切にしながら、正しい書き順があることも意識づけられるのがよいでしょう。

関連記事:運筆は必要?運筆の目的やメリット、苦手な原因、教え方について解説

日常生活との関連づけ:身近なものからスタート

文字への興味を育むための方法として、日常生活にも取り入れやすい学習アプローチを3つご紹介します。

読み聞かせの活用

絵本の読み聞かせは、語彙力や想像力を育てるだけでなく、「文字」を知りたいと思わせる大きなきっかけになります。絵本の文章を指でゆっくり追いながら読んであげると、子どもは「この文字はこう読むんだ」と自然に目で追うようになります。物語に夢中になる一方で、「文字が物語を作っているんだ!」ということを発見できれば、ひらがな学習への大きなモチベーションとなるでしょう。

関連記事:絵本の読み聞かせはどんな効果がある?研究論文や絵本の選び方、読み聞かせのコツについて解説

家の中・お散歩での「文字探しゲーム」

学んだひらがなを探す「文字探しゲーム」は、日常生活にも取り入れやすい遊びです。具体的には、今日覚えた「か」という文字を、家の中のパッケージやポスター、リモコン、家具などから探してみるという遊びです。3分以内に何個探せるか、どちらが先に10個探せるか、といったゲーム性を取り入れるのもよいでしょう。「ここに『か』があるよ!」と見つけたときに「すごいね!」とほめてあげると、「文字を探すのは面白い」と感じて文字への興味が増します。

家の中だけでなく、散歩先で探すのもおすすめです。看板や自動販売機、道路標識、お店のチラシなど、意外なところにひらがなが書かれています。公園で遊びながら「ここにも『い』があるよ」「『え』があった!」と見つけるだけでも、子どもは学んだ文字が生活の中で活きていると実感できます。

簡単な言葉づくり

文字のカードやマグネットなどを組み合わせて、簡単な言葉を作る遊びを取り入れるのもよいでしょう。「いぬ」「ねこ」「あめ」「うみ」など、2~3文字からなる単語は、読めたときの達成感が大きく、「こんな簡単な文字でもちゃんと意味を作れるんだ!」と子どもは驚きます。
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また、名前や身近な単語を作ったり、書いたりするのもよいでしょう。子どもは自分の名前や家族の名前に強い関心を持つため、「お母さんの名前はこう書くんだよ」「〇〇ちゃんの名前は、この文字が入っているよ」と伝えると、喜んで文字を覚えようとします。好きな食べ物やキャラクター名など、子どもの興味や関心のある言葉もよいでしょう。

短時間の小刻み学習と反復が重要

未就学児に長時間の座り学習を強いると、疲れて嫌がるようになってしまいます。そのため、「短時間+少量」の学習を習慣化し、こまめに復習するのがおすすめです。毎日少しずつ文字に触れることで、自然と覚えられるようになり、挫折しにくくなるでしょう。

1回5~10分で1日3~5文字を学ぶのが目安

学んだ文字は、次の日にもう一度確認し、週末にまとめてクイズ形式で出題してみると、子どももゲーム感覚で取り組めます。

週末のまとめ&クイズ

週末に、学習のまとめとしてクイズに取り組むのもよいでしょう。例えば、「今週は『あ』『い』『う』『え』『お』を覚えたよね。どこにあるかな?」というようにランダムにカードを並べて読ませるなど、親子で遊びながら確認します。上手に読めたら「すごいね!」とほめてあげると、自信につながります。

具体的なステップアップ例

ステップ1:音や形に慣れる

行ごとに「声に出して読む」「イラストカードで覚える」「歌に合わせて覚える」など、子どもが楽しめる要素を多く取り入れながら、文字の音や形に慣れていきましょう。

ステップ2:自分や家族の名前を書く

「あなたの名前はこう書くよ」「お父さんの名前は、た・か・し、だね」と、自分や家族の名前を書いてみるのもよいでしょう。身近な名前ほど子どもは親近感を覚えます。子どもの書いてみたい意欲を刺激することにもつながります。

ステップ3:身近な単語や短い文

「ねこ」「いぬ」「あめ」などの短い単語から始め、慣れてきたら、ひらがなだけの「おはよう」「いただきます」などの長い単語にも挑戦します。

ステップ4:簡単な文章や絵本へ

ひらがなの多い絵本を少しずつ自分で読めるようになると、子どもは大きな達成感を味わい、さらに学習意欲を高めていきます。

よくあるつまずき例とモチベーションアップの工夫

ひらがな学習を進める上で、子どもがつまずきやすいポイントはいくつかあります。まずは、よくあるつまずき例とその対策を3つご紹介します。

よくあるつまずき例と対策

鏡文字

小さな子どもに多い現象で、「さ」と「ち」を左右反転して書いたり、「し」のはらいを左側に書いたり、「す」の円を左側ではなく右側に書いたりするのが典型例です。正しい書き順を意識すると同時に、「右から始まるよ」「左に曲がるよ」と実演しながら修正していきましょう。

似た文字の混同

例えば「ぬ」と「め」、「ね」と「れ」など、形が似ている文字を混同してしまうこともよくあります。形が似ている文字は、並べて比べながら「ここが曲線、こっちはまっすぐ」など具体的に違いを説明します。間違いさがしの要領で、「この文字床の文字は、どこが違うかな?」と子ども本人に違いを説明してもらうのもよいでしょう。

学習量が多くて嫌がるようになる

学習の時間や文字数を増やしすぎると、子どもが飽きたり嫌がったりすることも少なくありません。「今日はこれくらいでおしまい」と区切りを決め、次の学習を楽しみに待たせる工夫が必要です。

モチベーションアップの工夫

続いて、子どものひらがな学習へのモチベーションを高める工夫を2つご紹介します。

ごほうびシステム

覚えた文字1つにつきシールを貼る「できたよシート」を壁や冷蔵庫に貼ると、毎日の小さな成長が目で見てわかります。シールが増えるたびに「すごいね、こんなに覚えたんだ!」と声をかけることで、子どもは「やればやるほどできるようになる」と実感しやすくなります。

文字を使ったゲーム

ひらがなかるた、ビンゴ、フラッシュカードなど、読める文字が増えるほど有利になる遊びは、学んだ成果をすぐに体感できるため、子どものやる気を引き上げるのに効果的です。兄弟や友達と一緒に遊ぶと、ゲーム感が増してさらに盛り上がります。

ICTツールの活用もおすすめ

現代では、教育アプリやオンライン教材、YouTubeの学習コンテンツなどが充実しています。これらのICTツールを効果的に取り入れることで、紙と鉛筆以外の方法でも効果的にひらがなに触れられる機会を作れます。ただし、アプリや動画を利用するときは視力への負担や時間管理に注意しながら、適切に取り入れましょう。

音声・アニメーション

文字をタップすると正しい発音が流れたり、アニメーションで書き順が示されたりするアプリは、目と耳の両方から覚えられる利点があります。子どもにとってはゲーム感覚で楽しく学べるため、飽きにくいのも特徴です。

進捗管理とモチベーション

学習記録がグラフや数字で可視化されると、「今日はここまでできたね」「あと少しで全部クリアだよ」と励ましやすくなり、子ども自身もモチベーションを保ちやすいです。

外出先での学習

車やバスでの移動中、病院の待ち時間など、ちょっとしたスキマ時間にもひらがなに触れられます。日常的な接触を増やすことで、記憶の定着を促進できます。

発達段階や興味に合わせてひらがな学習に取り組もう

ひらがな学習は、子どもが文字への興味を示したタイミングで始めるのが理想的です。年齢はあくまで目安ととらえ、子どものペースや発達段階を大切にしながら、楽しく無理なく進めましょう。大切なのは、視覚・聴覚・触覚・運動感覚など多感覚的にアプローチし、日常生活の中で文字の存在を意識させることです。読み聞かせや文字探しゲーム、ごほうびシステムなどを取り入れながら、「文字がわかると面白い!」「書けるようになると楽しい!」という肯定的な気持ちを引き出していきましょう。

また、最初は運筆や書き順にはこだわりすぎず、クレヨンなどでのびのびと書くところから始めましょう。ICTツールを活用しながら、遊び感覚で継続しやすい環境を整えてあげると効果的です。

鏡文字や似た文字の混同などはよくあるつまずきなので、焦らずに取り組みましょう。入学後に正しい書き順や書き方をきちんと教われるので、うまく書くことにこだわりすぎず、モチベーション維持を優先することも大切です。ひとつひとつできるようになるたびに、たくさんほめたり一緒に喜んだりしながら、子どもが「もっとやってみたい!」と思えるようなサポートを心がけていきましょう。

プレ・エデュ編集部

Pre edu編集部

Pre eduの企画・執筆・編集をしています。小学校受験や幼児教育に関する情報をお届けします。

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