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ぬりえが子どもにもたらすメリットとは?選び方やデメリット、親が気をつけることについて解説

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ぬりえは子どもの好きな遊びのひとつですが、ただ楽しいだけではありません。実は、ぬりえは運筆力や色彩感覚、集中力を育み、親子のコミュニケーションを深める遊びでもあります。この記事では、ぬりえのメリットとその選び方、取り組むときにご両親が気をつけることについて詳しくご紹介します。

ぬりえとは

『幼児保育学辞典』によると、「ぬりえ」とは、画用紙に絵が輪郭だけ描かれていて、それに色を塗って埋めていくことを示しています。古くは明治期からすでに普及していたというぬりえは、幼年時から楽しむことができる遊びです。※1、2

初めてクレヨンや色鉛筆を手にする小さな子どもたちにとって、色を塗ることは新しい体験です。画用紙に広がる輪郭線は各々が独自の形を形成し、特定の物や事象を示しています。それらを色とりどりの色で埋める作業は、子どもが形や色を理解し、自分自身で表現する機会を提供します。

ぬりえにはたくさんのメリットがある

ぬりえは楽しいだけでなく、子どもの成長と学習においてさまざまなメリットがあります。

手軽に取り組みやすく達成感を得られやすい

絵柄によって意欲を高められ、抵抗感がなく取り組みやすいのがぬりえの特徴です。また、自分の好きな色を何でも塗ることができるので満足感が得られやすいといえます。今後、子どもが「自分でも描いてみよう」と考えるきっかけにもなります。※1、2

運筆力が身につく

文字の書けない子どもも、ぬりえを通して筆を持ち、正確に色を塗る技術を学びます。子どもが小さな手でクレヨンを握り、色を塗る過程で、手先の微妙な動きをコントロールする能力が養われます。これは後々、筆記技術と細かい手先の動きを要する活動にとって重要な土台となります。※2

色彩感覚が身につく

色彩感覚は、子どもたちが自分たちの周りの世界を理解し、それを表現するための重要な要素です。さまざまな色を使うことで、子どもたちは色と感情や対象物との関連性を学びます。赤は暖かさや強い感情を象徴し、青は落ち着きや広大さを表現します。ぬりえを通して、このような色の関連性を学ぶことに集中できます。

集中力が身につく

ぬりえは、一つの遊びに集中する練習にもなります。細部まで丁寧に色を塗ることで、子どもたちは自分の注意を定めた作業に持続的に向ける能力を獲得します。集中力は学校生活や日常生活において、注意力を維持する能力を養うのに重要です。※1

ぬりえの選び方

ぬりえを選ぶ際は、子どもの年齢や興味、能力に応じて選ぶことが大切です。簡単すぎるものも、難しすぎるものも子どもの興味を失わせてしまうかもしれません。また、子どもが好きなキャラクターや動物、自然などをテーマにしたぬりえを選ぶと、より楽しみながら取り組むことができます。

ただし、キャラクターや動物、自然などの具象的図案の場合、実物の色に基づいた色を正解、そうでない色を不正解としてしまうと、子どもの自由な創造性が阻害されてしまうおそれがあります。正解の色を強制してしまうことで、子どもが想像力を失ってしまわないよう配慮しましょう。ときには、マンダラぬりえなどの幾何学的な図形によって構成された抽象的図案を取り入れ、自由な発想で配色を楽しむこともおすすめです。※2

ぬりえは何歳から?

ぬりえは、子どもがお絵描きに興味を持ちはじめる時期から取り組むことができます。一般的には、色の名前を覚えるようになる2歳ごろから簡単なぬりえを始める子どもが多いといわれています。このころになると、子どもたちは大まかな形を認識しはじめ、クレヨンや色鉛筆で色を塗ることを楽しみます。

しかし、最初は紙の範囲内に色を塗るのは難しいかもしれません。そのため、初期のぬりえ活動では子どもが自由に色を塗ることを奨励します。これにより、運筆の基本を学び、色と形に親しむことができます。

ぬりえは、子どもの成長とともにより複雑なものへと移行します。年齢と能力に応じて図案の難易度を選び、子ども自身がぬりえを楽しみながら取り組むことが重要です。

ぬりえのデメリットとは?

ぬりえには子どもにとって多くのメリットがある一方で、美術教育学者であるLowenfeldをはじめとする研究者たちは、次のようなデメリットもあると述べています。

創造性の抑制:ぬりえは物の輪郭を与えるので、子どもたちの創意工夫が抑制される可能性があると指摘しています。

表現力の阻害:子どもたちは自由な描画を通じて自己表現のスキルを磨きますが、すでに形状が指定されているぬりえでは、自分で形を生み出す機会が奪われる可能性があります。

限定的なルールへの固執:ぬりえは、特定の線の中に色を塗ることを要求します。その結果、子どもたちは「線の内側に留まる」という無意識のルールに固執する可能性があります。

もちろん、この研究者たちも、すべての子どもがぬりえによって創造性を失うとは断言していません。また、発達心理学者であるGardnerは、初めは模倣でも後から創造的になっていく可能性があると考えています。輪郭(模倣するもの)を子どもに与えることが、必ずしも悪影響ばかりであるとはいえません。※2、3、4

ぬりえに取り組むときにご両親が気をつけること

ぬりえによって子どもたちの創造性や表現力を阻害しないために、ご両親が気をつけることは主に3つあります。

子どもの自由を尊重する

ぬりえを通じた教育において注意すべきなのは、子どもの自由な表現を尊重することです。「木は緑でなければならない」といった決まりを作るのではなく、子どもが自由に色を選ぶことを奨励しましょう。そうすることで、子どもは自分自身の創造力と表現力を育てることができます。

子どもの達成したことをほめる

それぞれの作品を完成させることは子どもに達成感を与えます。そのため、ぬりえが完成した際には、達成したことをほめて子どもの努力を認めてください。たとえ小さな成功であっても、子どもの自信を育み、次に向けた意欲を高める大切な瞬間です。

一緒に楽しむ

お母さん・お父さん自身が子どもと一緒にぬりえを楽しむことも重要です。子どもが難しく感じる部分を一緒に考え、その問題を解決するためのサポートを提供しましょう。また、一緒にぬりえを楽しみながら完成させることで、親子のコミュニケーションを深め、絆を強めることができます。

ご両親は、子どもたちが表現する喜びを共有し、その一部になることができます。ただのぬりえの時間ではなく、親子間の貴重な絆を深める絶好の機会でもあるのです。ご両親の存在が子どもにとって安心感を与え、より自由な表現を促す一方で、お母さん・お父さん自身も子どもの成長と創造性を目の当たりにすることができます。

参考資料

※1 小川直茂. (2020). 塗り絵と色彩教育に関する一考察, 70, 15-18.
※2 小田久美子. (1998). 日本国内の塗り絵の出版状況と幼児教育への浸透, 277, 60-65.
※3 Lowenfeld, V. (1947). Creative And Mental Growth, The Macmillan Company.
※4 Brittain. W. L. (1979). Creativity, Art, and the Young Child, Macmillan Publishing Co., Inc.

プレ・エデュ編集部

Pre edu編集部

Pre eduの企画・執筆・編集をしています。小学校受験や幼児教育に関する情報をお届けします。

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