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巧緻性
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幼児の巧緻性を育むには?メリットや重要性、遊びと学びを融合させたアプローチについて解説

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幼児期は、子どもの発達にとって重要な時期です。この時期に巧緻性を高めることは、子どもの将来の学習や社会生活において大きなメリットをもたらします。また、幼児期に巧緻性を育むことで、子どもの多面的な発達に寄与し、将来の学習能力や問題解決能力、創造性や表現力、自己効力感、社会的なスキルなどを向上させることができます。この記事では、幼児の巧緻性を育むための実践的な方法や活動を探ります。

巧緻性とは何か?

巧緻性とは、手や指の細かい動きをコントロールする能力のことを指します。この能力は、文字を書く、絵を描く、物を組み立てるといった日常生活で使うさまざまなスキルに関係します。子どもの巧緻性は、精密な手の動きを要する活動を通じて発達します。

巧緻性は、感覚運動期といわれる0~1歳ごろから備わり、物をつかむことができるようになります。※1

手指の神経は脳の広範囲の働きに直結しているので、手指を動かすことは脳を活性化するといわれています。そのため、手指を動かすことは年齢を問わず推奨されています。子どもの遊びにおいても、ボール、フープ、ケン玉、こま、あやとりなど、積極的に手指の運動を伴うものが多くあります。※2

巧緻性を育むメリット

巧緻性の発達は、単に手先の器用さが高まるというだけではありません。以下のような多方面にわたるメリットがあります。

学習能力の向上

巧緻性の向上は、子どもの学習能力に大きな影響を与えます。巧緻性が高まると、文字を書く、絵を描くなどの学習活動がスムーズになります。手や指の細かい動きをコントロールできるようになるため、文字や図形を正確に描くことができます。これにより、学習能力が向上するだけでなく、学習への意欲も高まります。子どもが自分の成果を実感し、学習に対する自信を持つことにつながります。

論理的思考や問題解決能力の強化

巧緻性を高める活動は、子どもに論理的思考や問題解決の機会を提供します。細かい手の動きを要求する活動を通じて、子どもは目標を設定し、部品やピースを組み合わせて目的の形や構造を作り上げる方法を考えます。例えば、ブロックやパズルを使って複雑な物を作る際には、どう組み合わせれば最適な形になるのかを考える必要があります。このような活動は、子どもの論理的思考や問題解決能力を養ううえで効果的です。

創造性と表現力の促進

巧緻性の向上は、子どもの創造性と表現力を促進します。巧緻性が高まると、子どもはより複雑で創造的な物を作ることができるようになります。手や指の細かい動きをコントロールできるようになると、細部にまでこだわった作品を作り上げることができます。また、手先の器用さが向上することで、想像力を活かした自己表現が可能となります。絵画や工作などの創造的な活動を通じて、子どもは自分自身のアイデアや感情を表現し、自己表現力を高めることができます。

自己効力感の向上

巧緻性の向上は、子どもの自己効力感を高めます。手先の技術が向上し、細かい作業がうまくできるようになると、子どもは自分の能力に自信を持つようになります。この自己効力感の向上は、子どもが新しい挑戦に積極的に取り組むことを促し、成長するための意欲を高めます。子どもは自分ができることを信じ、困難な課題にも立ち向かう勇気を持てるようになります。

社会的なスキルの発達

巧緻性を要する活動には、ほかの子どもたちや大人との協力が必要なものもあります。例えば、ブロックやパズルを一緒に解いたり、絵を描く活動でアイデアを出し合ったり、共同制作したりといったことなどが挙げられます。これらの活動を通して、子どもはコミュニケーション能力やチームワークの重要性を学びます。ほかの人と協力しながら活動することで、思いやりや配慮の気持ちを育むことができます。

巧緻性に関する研究論文

幼児における手指の巧緻性と計算能力の関係

広島大学の浅川淳司らの研究では、指の認識過程において重要な役割を果たすと考えられる手指の運動に着目しました。広島市内の公立幼稚園に通う年長児48名を対象に、計算能力と手指の巧緻性の関係に関する課題をいくつか行った結果、手指の巧緻性と計算能力との間には有意な強い相関がみられました。

さらにこの相関関係は、月齢と動作性の知的発達得点や月齢と短期記憶容量の得点を統制しても変わらなかったことがわかりました。また、計算能力との相関は、短期記憶容量よりも指の巧緻性のほうが強かったこともわかっています。以上の結果から、就学前の子どもの計算能力には、手指の巧緻性が強く関係していることが示唆されました。※3

幼児期における利き手と非利き手の巧緻性の差

島根大学の橋爪一治らの研究では、幼児期における利き手と非利き手の巧緻性の差がどのように変化するのかを調べました。また、潜在的で生活経験的な利き手が、幼児の利き手と非利き手の発達にどのように関係するのかを検討しました。

調査対象は、4歳から6歳の幼児55名および18歳から22歳の大学生25名でした。被験者には、碁盤の目のように5行5列の穴が開いている四角いボードに、25本の棒状のペグを差し込む「ペグボード課題」を与え、右手と左手それぞれの所要時間を測定しました。

その結果、日常的に右利きの幼児は、左右の手指の巧緻性が成長するにつれて差が縮まる傾向がありました。一方、潜在的または生活経験的な利き手が右利きの幼児においては、成長につれて右手の発達は進みましたが、左手の発達はほとんど見られず、右手と左手の差が広がることがわかりました。この研究により、潜在的または生活経験的な利き手が右利きの幼児にとっては、日常的に左手を使うような子育てや保育を取り入れることが重要であると示唆されました。※4

小学生の手指の巧緻性に関する研究

埼玉大学の川端博子らの研究では、2007年7月から11月にかけて、埼玉県と福島県の小学校6年生518名を対象に、糸結びテストと質問紙調査を行いました。この調査により、手指の巧緻性に優れる子どもたちは、遊び・学習・ものづくりへの意識において積極的な参加姿勢が見られました。子どもたちは豊かな体験のなかで手指の巧緻性を高め、さまざまなことができると実感し、それに連動して多方面への積極的な活動姿勢が培われていくことが示されたのです。手指の巧緻性向上の効果と意義を明らかにすることができたといえます。※5

巧緻性を高める遊びの重要性

遊びのなかで手先の動きを磨くことで、子どもの巧緻性の発達を促進させることができます。楽しみながら巧緻性を育むための遊びをいくつか紹介します。

パズル

パズルは、形や色を認識し、適切な場所にピースをはめるために、細かい手の動きを必要とします。パズルを通して、子どもは集中力や問題解決能力を養うことができます。

ブロック

積み木やレゴ®などのブロック遊びは、小さなピースを扱い、構造を作ることで、手先の協調性と創造性を養います。子どもは、ブロックを組み合わせて自分だけの建物や構造物を作ることで、空間認識能力や論理思考力を発展させることができます。

粘土

粘土を使って形を作ることは、指の力を使い分ける能力を高めるだけでなく、創造的な表現を促します。粘土で自由に形を作ることで想像力を養い、空間認識能力を向上させることができます。

絵画

水彩画やクレヨンでの描画は、細かい手の動きを要求し、創造力も養います。画材を握る動作や、筆で色をすくいとる動作、狙った場所を塗る動作など、手指のさまざまな動きや力加減を学ぶことができます。

折り紙

折り紙は、紙を折ることでさまざまな形を作り出す日本の伝統的なアートです。指先を使って正確な折り目をつけたり、角と角または辺と辺を合わせたりする動作を通して、手先の器用さを高めることができます。さらに、複雑な形の折り紙は、空間認識能力を育てるのに役立ちます。お手本通りになっているか見比べることはもちろん、平面の折り紙から立体の作品を作り上げる経験も、図形や空間を認識する能力にとって重要です。

ぬり絵

特定の範囲の色を塗ることで、手の協調性や精密な動きを鍛えます。色の選択や塗り方を通して、子どもの創造性と美的感覚を育くむのはもちろん、集中力の向上やリラックス効果も期待できます。

関連記事:ぬりえが子どもにもたらすメリットとは?選び方やデメリット、親が気をつけることについて解説

あやとり

輪にした一本の糸を使ってさまざまな形を作る遊びで、手と目の協調や細かな手の動きを発展させるのに適しています。また、あやとりは糸を取る順番やパターンを覚える必要があるため、記憶力を鍛える効果もあります。

ビーズ

小さなビーズをテグスなどに通して、ネックレスやブレスレットなどのアクセサリーを作るのもよいでしょう。ビーズをつまむ、糸に通すといった細かな動きは、手の協調性と精密な指の動きを鍛えるのに効果的です。さらに、色や形の組み合わせを考えることで創造性と計画性を育てます。

ペーパークラフト

紙を切ったり貼ったりして立体的な模型や装飾品を作るのも、巧緻性を育むのにおすすめです。この活動は、細かい切り抜きや折り曲げなどの動作を通じて、子どもの手の器用さを要求し、完成品を通じて自分の作ったものに対して誇りを感じることができます。手でちぎるのはもちろん、はさみを使って紙を切る動作や、テープを切り取る、のりを塗るなどの動作も効果的です。

下記のサイトでは、無料でペーパークラフトがダウンロードできます。ぜひ、親子で一緒に挑戦してみてください。
Canon Creative Park ペーパークラフト
笹徳印刷 笹徳ペーパークラフト

日常生活のなかでの巧緻性の練習

日常生活のなかにも、巧緻性を鍛えるための機会がたくさんあります。以下に、有効な活動をいくつか紹介します。

料理の手伝い

野菜を切ったり、生地をこねたり、材料を混ぜたりする料理活動は、子どもの手の動きを正確にするのに役立ちます。さまざまな食材を扱うことで、細かな指の動きを養うことができます。

衣服の着脱

ボタンをかけたり、ファスナーを上げたり、くつを脱ぎ履きしたりする練習は、小さな手の動きを必要とし、巧緻性を向上させます。日常的に行う服装の着脱を通して、手の動きの正確さを磨くことができます。

その他の活動

お箸を使って食事をする、洋服をたたむ、ぞうきんや台ふきをしぼる、細かい作業をするといった活動も、巧緻性を鍛えるのに効果的です。

巧緻性を高めるために親ができること

子どもの興味を引き出す

子どもの巧緻性を育むためには、興味を引き出すことが重要です。子どもが特に興味を示す活動に注目しましょう。例えば、絵を描くことが好きな子には色とりどりのクレヨンやペイントを提供し、建物や車に興味がある子にはさまざまな種類のブロックや模型を与えることで、その興味をさらに深めることができます。

巧緻性を高める遊びの工夫

既存のおもちゃやアクティビティに小さな工夫を加えることで、子どもの巧緻性をより一層高めることができます。例えば、粘土遊びに小さなビーズやボタンを加えて細かい装飾をしたり、絵画活動で細いブラシを使用したりすることなどが挙げられます。

定期的な評価とフィードバック

子どもの巧緻性の発達を定期的に観察し、適切なフィードバックを提供することが大切です。小さな進歩も認めてほめることで、子どもの自信を育み、さらなる学習への意欲を高めることができます。

巧緻性を養うための環境作り

子どもが安全に遊べる環境を作ることも重要です。子どもの発達や興味に合わせた適切なおもちゃ、工作の材料・道具、アート用品などを整理し、手の届く場所に置くことで、子どもの自発的な活動を促すことができます。

小学校受験においても巧緻性が求められる

小学校によってさまざまですが、小学校受験において、ペーパー問題のほかに絵画や工作などの課題が出題されることがあります。切る、貼る、塗る、折る、結ぶ、ちぎるなどの作業を通して、手先や指先の器用さである「巧緻性」を評価するための課題だとされています。下記の記事では、巧緻性を育むために家庭でもできることや日常生活に取り入れやすいトレーニングについても紹介しています。

関連記事:小学校受験対策「巧緻性」編 手先の器用さを鍛えるために親子でできること

遊びや日常生活を通して巧緻性を育もう

巧緻性の発達は、子どもの成長にとって重要です。遊びや日常生活を通して、育んでいくことができます。ご両親は、お子さんの興味を引き出し、適切なサポートを提供することで、巧緻性の発達を効果的に促進するよう心掛けましょう。

巧緻性を育むことは、子どもの多面的な発達に関連し、将来の学習おいても大きな効果があります。

参考資料

※1 松尾裕美, 阿南寿美子. (2021). 乳幼児の発達を促す遊び ―遊びの中で育まれる 10 の姿―. 福岡女学院大学紀要・人間関係学部編, 22, 13-19.
※2 野田さとみ. (2009). 手指の運動を伴う遊びが覚醒水準に与える影響について. 名古屋女子大学 紀要, 55, 125〜133.
※3 浅川淳司, 杉村伸一郎. (2009). 幼児における手指の巧緻性と計算能力の関係. 発達心理学研究, 20(3), 243-250.
※4 橋爪一治, 村上美紗. (2016). 幼児期における手指巧緻性の発達過程とラテラリティ : 潜在的利き手の違いによる特徴. 島根大学教育学部 紀要, 50, 123-130.
※5 川端博子, 鳴海多恵子. (2009). 小学生の手指の巧緻性に関する研究―遊びと学習面からの一考察―. 日本家政学会誌, 60(2), 123-131.

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