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小学校受験は早生まれだと不利?子どもの月齢に合わせたお受験対策

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成長著しい乳幼児期は、たった数か月の月齢の差も大きく見えてしまいますよね。特に小学校受験を考えているご家庭では、「うちの子は早生まれだからお受験において不利なのでは?」と心配になるかもしれません。
小学校受験では毎年秋ごろに試験が行われるため、早生まれの子はまだ5歳のうちに選考を受けることになります。春や夏に生まれた子は6歳を過ぎてから受験に臨むことになるので、月齢の差が不利にならないよう考慮されている小学校もあります。
この記事では、早生まれの子の小学校受験や月齢に合わせたお受験対策についてご紹介します。

月齢による能力の差はあるの?

4月生まれの子と3月生まれの子には、月齢でいうと約1年の差があります。成長著しい未就学期においては、体格だけではなく運動能力や理解力など発達の差がみられることもあります。

例えば、幼稚園や保育園で先生の話を聞く場面でも、春や夏に生まれた子たちが一度できちんと聞き取って理解している一方で、秋や冬に生まれた子たちは周りの子の行動を見てようやく理解し行動するといったケースがみられます。もちろんそれぞれの子どもの個性や関係性にもよりますし、月齢が低いからといって必ずしも能力的に未成熟というわけではありませんが、発達の差や経験の差が少なからず影響していると考えられます。

同じ月齢でも発達差があるので、ペーパー問題において最初のころは早生まれの子とそうでない子の間にいくらか差があったとしても、発達によって受験直前の秋ごろには大きな点数の差が見られなくなることもあります。また、言語領域の問題や行動観察の分野においても普段の生活における積み重ねや経験などが影響するため、早生まれであっても決して不利ではないことがあります。

子どもの月齢を考慮した選考を行う小学校もある

縮まっていくものの、全員が同じ時期に行われる小学校受験においてはどうしても差が気になりますよね。結論から言うと、早生まれであることが不利になる学校と不利にならない学校に分かれます。選考を行う小学校自体もその問題を認識しており、生まれ月によって不利にならないよう、入学試験において月齢考慮を実施している学校もあるからです。

月齢考慮の方針は小学校によって異なり、試験自体に月齢ごとの配慮がある場合と、試験結果を選考するときに月齢を考慮する場合があります。以下にいくつか例を挙げます。

  • 月齢を考慮した試験を行い、選考では月齢に関係なく高得点順に合格者が決まる学校(生まれ月によって試験日を変え、難易度が異なるペーパーやテーマが異なる絵画・制作を出題するなど)
  • 試験内容は月齢を考慮しないが、選考の段階で月齢考慮を行う学校(生まれ月によって合格ラインを変えるなど)
  • 月齢を考慮した試験を行い、選考でも月齢を考慮して合格者を決める学校
  • 選考の際、すべての生まれ月からバランスよく合格者を出す学校
  • 辞退者が出た場合に、月齢の低い順に繰り上げて補欠合格者を決める学校
  • 試験および選考いずれも一切の月齢考慮を行わない学校

月齢にあわせて試験時間や問題の難易度を変え、得点の高い子から合格となるケースもあれば、全員が同じ内容の試験を受けて、選考の段階で配点に配慮がなされるケースもあります。早生まれの子がそうでない子より得点が下であっても、合格することがあるのはそのためです。月齢考慮と一言に言っても選考基準はさまざまで、多くの学校では月齢考慮の有無を含め、入試内容や合格基準を公表していませんが、首都圏の国立・私立小学校のうち半数以上は、月齢を考慮した入試を実施しているとされています。

例えば、お茶の水女子大学附属小学校では出願ページが月齢別になっており、4~7月生まれをAグループ、8~11月生まれをBグループ、12~3月生まれをCグループとして別々に試験を実施し、各グループで合格者を選考しています(2023年現在)。※1

このように生まれ月をグループ分けする試験の場合、早生まれの子同士で選考が行われるので、月齢による不利は生じないことがわかります。

ほかにも、首都圏の私立小学校であれば青山学院初等部や慶應義塾幼稚舎が、国立小学校だと筑波大学附属小学校などがさまざまな月齢考慮を実施しているといわれています。
実験の試験概要や選考方法は各学校によって異なるので、入試案内や願書などで情報収集するようにしましょう。

志望校に月齢考慮がなくても心配しすぎなくてOK

もちろん、入試において月齢に応じた配慮を一切行わない小学校もあります。また、選考基準は非常にデリケートな内容なので、月齢ごとの配慮も含めて明確に公表していない学校もあります。そういった学校では4月生まれから3月生まれまですべての子どもが同じ試験内容を受けますが、だからといって早生まれの子が不利だということにはなりません。実際に合格して入学した子どもたちのなかにも、一定の割合で早生まれの子がいます。

また、普段の生活における受け答えや行動観察を重視した試験を行う学校もあります。複雑な課題を出題する学校においても到達不可能な難度ではないため、きちんと情報収集をして勉強を積み重ねれば月齢に関わらず合格できる可能性があります。

つまり、きちんと受験対策をして入試日に学校の求める水準を満たせば、早生まれの子もほかの子たちと同じように合格できる可能性があるということです。

早生まれの子は月齢に合わせたお受験対策を

志望校に月齢考慮があるか否かにかかわらず、早生まれということをふまえて早めに受験対策を始めるのもよいでしょう。小学校受験は「年長の秋」と時期が決まっています。「○○ができるようになってから受験対策を始めよう」と考えていると、4~6月生まれの子どもが2年かけて準備できるところ、1~3月生まれの子どもは1年か1年半ほどしか準備にかけられないということになりかねません。低月齢だからこそ、習得に時間がかかるからこそ、早めにスタートを切ることが肝心です。

もちろん、心身の成長に伴って発達する能力もあるため無理は禁物ですが、早い時期から取り組むことで月齢のギャップを埋めてあげられる可能性もあります。早くから幼児教室に通い始めることで学習の習慣がつき、スムーズに受験準備に移行しやすいのもメリットです。ご家庭では、折り紙や塗り絵、迷路や間違い探しさがしなど、「遊び」の延長から取り組み、家庭学習の時間として習慣づけるのがおすすめです。遊びとして楽しみながら勉強に取り組めることは後々のモチベーションにもつながりますし、お子さまが努力している姿を認めてたくさんほめてあげることで、やる気がアップします。

特に大切なのは、お子さまの自立心を育むことです。小学校受験は親子で臨みますが、実際の試験はお子さまが一人で受け答えし、問題を解いていく必要があります。試験当日に準備してきた実力が発揮できるよう、お子さまが自分の感情をコントロールし自分で考えて取り組めるように、しっかりと自立心を育んでいきましょう。

早生まれの子が受験対策を始めるにあたっては、成長や発達の段階に合わせた準備が必要です。発達段階の特徴とそれぞれの対策の一例をご紹介します。

手先が十分に発達しておらず、器用ではない

指を一本ずつ折り曲げながら、もしくは指を一本ずつ立てながら数を数える。じゃんけんのようにグー・パーを繰り返す。

視野が狭く、全体を見るのが苦手

絵探し絵本を使って、遊びながらトレーニングする。

ほかにも、幼児教室で取り組んでいる課題や遊びを家庭で積極的に取り入れてみるのもおすすめです。同じ教具を用意したり、家庭でできる制作に挑戦したりしてみましょう。

大切なのは、できなかったことを叱ったり、無理やりやらせたりしないことです。

逆に、できないことがあっても「低月齢だから仕方ないよね」という理由で、挑戦する機会を取り上げないようにしましょう。ご両親が「低月齢だから」を理由に諦めてしまうと、お子さまも同じように理由をつけて早い段階でものごとを諦めてしまうクセがついてしまいます。

早生まれの子が月齢の高い子たちと同じことをやろうと努力しているのは、それだけですごいことなのです。発達の段階を見極め、楽しみながら受験対策に臨めるとよいですね。

「お友だちと比べる」のではなく、子どものペースを大切に

小学校受験は、親子ともども多くのプレッシャーがあります。特に、「お友だちと比べる」ことは大きなプレッシャーになりやすく、その比較が必ずしも有意義でないこともあります。子どもの成長や学びのペースは個人差があり、無理に一定の基準に合わせる必要はありません。

特に4~6月生まれの子どもと早生まれの子どもでは、心身の成長の度合いはもちろん、学びのスピードも異なります。早生まれの子どもの場合、日々の学習の成果は7月ごろから徐々に数字や結果として表れることが多いです。ご両親のなかには、成果がなかなか現れないことに焦ってしまう方も少なくないかもしれませんが、ここで大切なのは「決してお子さまを焦らせないこと」です。子どもたちは自分らしさを持って成長し、学びます。お子さまのペースを尊重することで、自分の力を信じ、挑戦する力が身につくのです。

早生まれでも重要なのは情報収集!しっかりと準備して試験に臨もう

ご紹介してきたように、小学校によっては月齢考慮を行っていますが、だからといって「早生まれは月齢考慮のある学校しか合格できない!」というわけでもありません。あくまでも大切なのは、お子さまが入りたい小学校はどこか、志望理由がきちんとあるか、小学校の校風がマッチしているかなどです。そのため、受験対策と並行して入念な情報収集が重要なのです。

また、早生まれではないお子さまをもつ保護者の立場に立ってみれば、「入学後は同じ学年になるのに、生まれ月で考慮するのは不公平ではないか」という意見もありえます。さまざまな考え方や価値観があるので、月齢考慮の有無が学校によって異なるのも当然です。

早生まれは小学校受験において不利だと焦ったり、心配しすぎたりしないようにしましょう。ご両親の不安はお子さまにも伝わります。「早生まれだから不利」というバイアスが影響してしまうことがないよう、お子さまの能力を信じてしっかりと準備を行い、志望校にチャレンジしましょう。

参考資料

※1 お茶の水女子大学附属小学校 入学検定関連 募集要項頒布について

水島 なぎ

水島 なぎ

「書く・編む・正す ことばのよろず屋」を掲げる、フリーランスのライター・編集者。1985年生まれ、京都府在住。同志社大学文学部文化学科美学及び芸術学専攻卒。出版社で資格学習や学参分野のテキスト・問題集を企画編集していた経験をもとに、教育・育児、学術分野などのWebメディアの記事執筆や編集、書籍の編集を手がける。2017年に長女を出産した一児の母。

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