小学校受験と
幼児教育の
専門メディア

公開日:

塾なし自宅のみで小学校受験の家庭学習を進めるコツ

はてなブックマーク LINE twitter facebook




小学校受験を考えているお父さん・お母さんのなかには、塾や幼児教室にお子さまを通わせたいと考えている方も多いでしょう。しかし、共働きで頻繁な送迎が難しいケースもあります。塾や幼児教室に通うことが負担になり、ご両親やお子さまのストレスとなってしまっては元も子もありません。
家庭学習のみで小学校受験に取り組むには、ご両親の入念な情報収集やご家族の協力、勉強に向き合う環境づくりなどさまざまな努力が求められます。
この記事では、家庭学習のメリット・デメリットや学習のコツをご紹介します。

塾なし家庭学習のメリット・デメリット

家庭学習のメリット・デメリット

塾や幼児教室に通わず家庭学習だけで小学校受験に臨むことには、さまざまなメリットとデメリットがあります。お子さまの特性や家庭環境によって最適な勉強方法は異なるため、ご家族でよく相談しながら自分たちに合う方法を探してみてください。

塾なし家庭学習のメリット

  • 家庭という慣れた環境で学習でき、自宅学習を習慣化できる
  • 塾への送迎が不要なので時間を有効活用できる
  • 費用面:幼児教室や塾に通うための教室代や月謝がかからない

小学校受験対策を行う塾や幼児教室にさまざまな事情で頻繁な送迎が難しい場合は、送迎にかかる時間を勉強に充てられる家庭学習が向いています。ただし、先生の代わりにご両親が学習計画を立ててお子さまを指導する必要があるため、かえって学習や準備にかかる時間が負担になることもあります。お子さまの学習にコミットするだけの十分な時間をご両親が確保できるかどうか、特に共働き家庭の場合はよく検討してください。

塾なし家庭学習のデメリット

  • 家庭では学習に集中できない可能性もある
  • 行動観察や指示行動などは、家庭学習だけでは身につきにくい
  • 試験の出題傾向や年齢考慮、面接のコツなど、幼児教室や受験対策塾で得られる貴重な情報を入手しにくい
  • 費用面:教室代や月謝はかからないが、教材購入やプリント印刷などの費用はかかる

家庭は日常生活を過ごし、遊ぶ場でもあるため、学習に集中できる環境づくりや時間のメリハリが大切です。また、塾や幼児教室ではお友だちや先生とのコミュニケーションを通して、「行動観察」や「指示行動」などに慣れていきます。「非認知能力」はプリント学習だけでは獲得しにくいため、親子だけで完結しがちな家庭学習ではなかなか身につきにくいかもしれません。自宅での過ごし方や生活のなかでの声かけなど、身近なシーンを学びの場ととらえましょう。
特に、倍率の高い難関校を志望している場合は、家庭学習のみでの合格は厳しい道のりとなるでしょう。塾や幼児教室でしっかりと試験対策をしてきたほかの志望者がライバルとなるためです。
情報収集という面でも、家庭学習の場合はご両親が主体となって動かなければなりません。家庭学習のみで小学校受験に臨むためには、学習時間や準備の時間に加えて、情報収集にも時間をかける必要があるということを理解しておきましょう。

家庭学習の向き・不向き

ご両親が共働きかどうか、兄弟姉妹がいるかどうか、さらにお子さまの性格や得意・不得意によって、家庭学習の向き・不向きはあります。ご両親に時間の余裕があり、無理なく適切に学習できるのであれば、家庭学習に取り組むことはできます。
次章からは、家庭学習のさまざまな工夫をご紹介します。

家庭学習で小学校受験に臨む①環境づくり

まずは、お子さまが学習に集中できるよう環境づくりを徹底しましょう。勉強する場所、道具、ご家族の協力、習慣づけという4つの視点でご紹介します。

勉強する場所を決める

「勉強するときはここ」という場所を決めることで、メリハリがつき学習に集中しやすくなります。子ども部屋でもよいですし、キッチンから目の届くリビングで夕食の支度をしながら学習を見守るという方法もよいでしょう。

道具をそろえる

勉強する場所が決まったら、文房具やプリント、問題集などの道具をそろえます。箱などに入れてひとまとめにしておき、お子さまが自分で出し入れできるよう準備しておきましょう。時間内に問題を解く能力を育むためにも、秒針のあるアナログ時計を用意するのがおすすめです。

家族の協力を得る

家庭学習のためにはご両親のサポートはもちろん、兄弟姉妹や祖父母などご家族の協力が欠かせません。最初はお父さんかお母さんのどちらかが主体的に関わり、学習をリードしてあげましょう。もう片方は、家事や学習の準備などほかの部分でサポートします。また、兄弟姉妹がいる場合は、受験するお子さまが勉強しているそばで遊ばないよう、理解してもらい環境づくりに協力してもらいましょう。

学習の習慣をつくる

園から帰宅後に学習する時間を固定して習慣づけます。最初は短い時間からスタートし、少しずつ学習時間を長くしていきます。理想的な学習時間は1日90分程度ですが、まとまった時間が確保しにくい場合は、朝と夜に分けたり、土日のいずれかを勉強する日に充てたりとライフスタイルに合わせて工夫してみてください。
毎日学習を積み重ねることで、継続力や集中力、最後まで諦めずに取り組む意欲が身につきます。これらの力は「非認知能力」ともよばれ、小学校受験において近年重要視されています。学習の習慣は学力向上だけでなく非認知能力を育むことにもつながるため、日々の積み重ねを大切にしてください。

家庭学習で小学校受験に臨む②試験の出題傾向や志望校の情報をリサーチ

塾や幼児教室に通っていれば、先生から志望校の情報や出題傾向を教えてもらうことができます。過去の合格者のデータや先生の経験談は、塾や幼児教室に通う大きなメリットといえるでしょう。
一方、家庭学習のみで小学校受験に臨む場合は、ご両親が積極的に情報収集をしなければなりません。インターネットやSNSが発達した昨今は情報収集がしやすくなっている反面、膨大な情報のなかから正しい情報を見極めるリテラシーも求められます。
志望校を含む複数の小学校の学校説明会・学校見学会に行き、校舎の雰囲気や授業風景、在校生の様子を実際に見ることも大切です。資料請求はもちろん、可能であれば在校生の保護者に話が聞けるとよいでしょう。

また、問題集からの情報収集も重要です。書店やインターネット書店のほか、塾や幼児教室がオンライン販売を行っているケースもあります。
すでに志望校が決まっている場合は、学校別の問題集を使って出題傾向をリサーチしましょう。過去数年分の過去問から、出題傾向が分かります。どのような単元が多く出題されているか、どのような具体物を用いて回答しているかなどは家庭学習用の教材選びにも役立つので、過去問のリサーチは必須といえます。
志望校がまだ決まっていない場合は、分野別の問題集から取り組んでみましょう。多くの小学校受験で出題されるペーパー試験(お話の記憶、図形、数、常識、言語など)の問題集や、さらに細かい単元別の問題集もあります。お子さまの得意分野と苦手分野を分析し、重点的に学習する分野を見極めるのにも役立ちます。

関連記事:小学校受験の家庭学習におすすめの問題集&教材5選

関連記事:私立・国立・都立小学校の試験対策におすすめの教材と問題集

家庭学習を成功させるための3つの工夫

塾や幼児教室ではきちんとできるのに、家庭学習のときにダラけてしまったりふざけてしまったりするお子さまも少なくありません。おうちは安心できる場所であり、お父さん・お母さんへの甘えが生じてしまうのは当然のことです。しかし、小学校受験に臨むためにも、入学後の宿題の習慣づけのためにも、家庭で学習に集中できるように取り組んでいきましょう。家庭学習を成功させるために今すぐ取り入れられる工夫を、3つご紹介します。

お父さん・お母さんが「先生」になりきる

「①環境づくり」でも紹介したように、家庭学習における理想的な学習時間は1日90分程度です。この90分の間だけは、お父さん・お母さんは「先生」になりきり、お子さまには「生徒」として接しましょう。

学習を始める前に、まず「今からお勉強が終わるまで、お母さんは『先生』です」と宣言します。先生と生徒なので、会話もすべて敬語を使用します。勉強する場所にお子さまが「入室」するところから始めると、お互いに気持ちを切り替えやすいです。入室時のあいさつや所作の練習にもなるのでおすすめです。

先生になりきるのは、お子さまにただ厳しく指導することが目的ではありません。親子間でどうしても生じてしまう甘えを断ち切り、お互いに冷静になって勉強に集中するためです。先生になりきっていると、お子さまがダラけたりふざけたりしたときも、感情的に怒らず冷静に注意できるようになります。また、お子さまにとっても勉強時間のメリハリを理解しやすく、集中しやすくなります。

勉強時間が終わった後は、「ありがとうございました」とあいさつをして退室します。その後は、必ず先生からお父さん・お母さんに戻り、しっかりとお子さまをほめ、甘やかしてあげましょう。親子間の信頼関係があってこそ、限られた勉強時間のみ先生・生徒の関係性が成立するのです。

今日やるプリントをお子さまに選んでもらう

主体性をもって取り組む場合と、誰かに言われてやらされている場合とでは、勉強の達成感も成果も大きく異なります。お父さん・お母さんが決めたプリントを与えるだけだと、お子さまは受け身になってしまい、「またこれか」「いつまでやるんだろう」と不満を抱いてしまいます。志望校に合格するため、将来のあなたのため、といった目的意識をどれだけ話しても、お子さまには理解しがたくなかなか前向きにはなれません。それよりも、お子さまに主体性をもたせて勉強の主導権を握ってもらうほうが、積極的に取り組みやすくなります。

例えば、今日取り組ませたい単元のプリントを複数用意し、今日やるプリントをお子さま自身に選んでもらいましょう。自分で選択することは主体性をもった学習の第一歩です。

ポイント制でゲーム性を取り入れる

プリントをお子さまに選んでもらう場合、ポイント制を取り入れるのもおすすめです。
例えば、満点なら3点、少し間違えた場合は2点、ほとんどできなくても挑戦したことを評価する意味合いで1点を与えます。合計15点を取ったらクリアとし、その日の勉強をおしまいにします。すべて満点なら5枚分でクリアできるので、お子さまのモチベーションアップにつながります。

あるいは、プリントの難易度別にポイントを振り分けるのもよいでしょう。難しいプリントは3点、普通のプリントは2点、簡単なプリントは1点とし、各グループのなかからお子さまに今日やるプリントを選んでもらいます。クリア点数が15点の場合、難しいプリント5枚に挑戦するか、簡単なプリント15枚で達成感を味わうか、それもお子さま自身が選択します。点数の幅やクリア目標は各ご家庭でアレンジしてみてください。

ポイント制やゲーム性を取り入れることで、お子さまは自分で工夫し、選択しながら積極的に取り組むようになるでしょう。もちろん、ポイントが取れないことでモチベーションが下がってしまう場合はこの方法を中断するなど、お子さまの様子を見ながら調整してください。

毎日の家庭学習だからこそうまくいく「見直し」の習慣づけ

家庭学習は、ペーパー試験の「見直し」を習慣づけるチャンスでもあります。プリントに間違いがあるときも全問正解できたときも、等しく「見直しはしましたか?」と声かけをしましょう。間違いがあるときだけ念を押すように「本当に見直しをしたの?」と声をかけてしまうと、お子さまは「そう言われるのは、どこかに間違いがあるからなんだ」と悟ってしまいます。見直しとは、間違えた箇所を探すことではなく、すべて正解していることを確かめる作業なので、全問正解しているときも等しく見直しをするよう声をかけ、習慣づけていきましょう。

特に、時間内に問題を解けたときも、早めに切り上げて採点するのではなく、必ず時間いっぱい使って何度も見直しをするように声をかけましょう。この習慣は、ペーパー学習だけでなく絵画や工作においても役立ちます。正答があるペーパーと違って、絵画や工作は完成度を高めるためにいくらでも工夫ができます。途中で手を止めてしまうのはもったいないので、どうすればもっと良くなるのか試行錯誤できるよう、時間いっぱい使うことを習慣づけるのがおすすめです。

ライフスタイルに合わせて柔軟に家庭学習を続けよう

最初は家庭学習から始めて、さらにお子さまが学習に意欲を示せば、塾や幼児教室に通い始めるのもよいでしょう。逆に、塾や幼児教室に通ってみてあまりなじめなかったとしても、小学校受験を諦めるのではなく、家庭学習に移行することもできます。頻繁な送迎が親子双方の負担になっている場合は、通塾回数を減らして家庭学習と並行してもよいかもしれません。ご家庭のライフスタイルやお子さまの特性に合わせて、ベストな学習方法を見つけてください。

水島 なぎ

水島 なぎ

「書く・編む・正す ことばのよろず屋」を掲げる、フリーランスのライター・編集者。1985年生まれ、京都府在住。同志社大学文学部文化学科美学及び芸術学専攻卒。出版社で資格学習や学参分野のテキスト・問題集を企画編集していた経験をもとに、教育・育児、学術分野などのWebメディアの記事執筆や編集、書籍の編集を手がける。2017年に長女を出産した一児の母。

Read more