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小学校受験対策「絵画・工作」編 評価のポイントやお受験専門の絵画教室の特徴、おうちでできる対策や声かけの工夫も解説

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小学校受験では、指定されたテーマに沿って絵を描く「絵画」や、用意された材料と道具で制作する「工作」などの試験が出題されること学校もあります。絵画・工作は、表現力や巧緻性だけでなく、想像力や伝える力などさまざまなポイントを評価するための試験とされています。この記事では、絵画・工作の出題例や評価ポイント、お受験専門の絵画教室の特徴、家庭でも取り入れやすい対策や声かけの例などをご紹介します。

小学校受験の「絵画・工作」とは

小学校受験では、絵画や工作などの試験が出題されることがあります。例えば、慶応義塾幼稚舎ではペーパー試験や面接はなく、絵画・工作、運動、行動観察の3分野が出題されています。ほかにも、早稲田実業学校初等部や青山学院初等部、東洋英和女学院小学部、筑波大学附属小学校など多くの小学校において絵画・工作が出題されています。

その年や学校によって出題形式は異なりますが、子どもたちに自由に制作させる出題形式もあれば、あらかじめ指定されたテーマに沿って描くパターンもあります。「自分」を含む絵がテーマとして出題されることが多いので、男の子・女の子を描き分け、何らかの行動をしているシーンを描けるようになっておくとよいでしょう。そのほかにも、お母さんやお父さんなどの「家族」や、動物・鳥・虫などの「生き物」、植物や自然を含む「風景」などがテーマに含まれることもあります。課題によっては、行事や季節に関する知識も必要です。円や三角形、四角形などの単純な図形から連想して描く形式や、指定されたテーマからイメージを膨らませて描く「想像画」もよく出題されています。

工作の課題では、指示された通りに制作することはもちろん、ちぎる、折る、はさみで切る、のりで貼る、色を塗るといった、手先や指先を上手に使う巧緻性が求められます。また、あらかじめ制作した工作をもとに「それを使って○○している自分を描きましょう」というような、絵画と工作を組み合わせた出題形式もあります。

また、絵画・工作をグループ制作(共同制作)として出題する小学校もあります。複数の子どもたちで協力してひとつの絵や工作を仕上げ、描いた絵や作った工作をもとに発表するのは、行動観察の一環であるとも考えられます。志望校が決まっている場合は、出題傾向を必ずリサーチしましょう。

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絵画・工作ではどんなポイントが評価されているか

絵画・工作について具体的な評価基準を明示している小学校はほとんどありませんが、想像力や表現力のほか、指示の理解力や巧緻性などが評価されていると考えられています。共同制作の場合は、協調性やリーダーシップのほか、限られた数の道具をゆずり合いながら使えているかなどもチェックされています。

また、制作中にお尋ねがあったり、工作を作った後に工夫したポイントや使い方などを子どもたち自身が説明したりする場面もあります。作品の絵の上手さや工作のテクニックといった作品のクオリティよりも、なぜそれを描いたのか・作ったのか、それを通して何を伝えたいのかなどが注目されていると考えられます。子どもたちが「自分の考え」を持ち、言葉を通してきちんと「伝える力」があるかなども評価されているのです。

普段、おうちでお絵かきや工作をするときは、自由な発想で楽しく取り組めればよいのですが、小学校受験の絵画・工作においては自分の体験や興味に基づき、自分らしい表現ができることも重要となってきます。ご家庭での過ごし方や季節・行事の思い出など、子どもたちのさまざまな経験が制作物に表れるからです。

お受験専門の絵画・工作教室の特徴

幼児教室のなかには、絵画・工作の対策を行うカリキュラムを設けているところもあります。また、お受験専門の絵画教室や、小学校受験対策に特化したクラスがある絵画教室などもあります。

一般的な習い事としての絵画教室には絵を描くことが好きな人が多く、技法やテクニックを教わりながら自由に描くことができます。独創性や個性を伸ばしたり、余暇として楽しんだりするスタンスの教室が多いです。
一方、お受験に特化した絵画教室やカリキュラムでは、絵画や工作が好きな子・得意な子だけではなく苦手な子も大勢います。小学校受験に合格することを目標に掲げ、表現力、巧緻性、指示を聞き取り行動できる力、正しい姿勢や道具の使い方、描いたもの・作ったものについて相手に説明できる言語表現力などを身につけていきます。絵画が苦手な子であっても、受験シーズンまでに必要な能力を育めるよう、巧緻性や道具の使い方などから学び始めて、少しずつ高度な制作ができるようなカリキュラムが組まれているのも特徴です。

絵画・工作対策としておうちでもできること

ご家庭で絵画・工作対策をするときのポイントを3つご紹介します。

工作対策では、手指の基本的な動かし方や道具の使い方から身につける

工作のために身につけておきたい手先・指先の動きとしては、ハサミで切る、手でちぎる、のりで貼る、粘土をこねる、紙を折る(折り紙)、ひもをつまむ・通すなどがあります。特に、ハサミとのりは工作の試験において用意されることが多い道具です。お子さまの手の大きさにあった使いやすい道具をそろえ、安全な持ち方や効率のよい動かし方、無駄にしない塗り方などをおうちでも練習しておきましょう。まだ道具がうまく使えない場合は、折り紙やちぎり絵などから始めるのもおすすめです。
なお、実際の試験で用意される可能性が高い工作の材料としては、画用紙、紙コップ(またはプラスチックのカップ)、紙皿、折り紙、モール、ストローなどがあります。お子さまが自分で出し入れしやすいよう箱に入れて、道具と一緒に用意しておきましょう。自分で道具を準備し片付けるという習慣をご家庭で身につけておけば、試験当日も自然に行動できるはずです。

絵画対策では、基本的な図形から練習し、動植物・人物・背景へ発展させる

絵画対策も同様に、えんぴつやペン、クレヨンや絵の具などさまざまな画材を用意し、お子さまが自分で取り出しやすくしておくのがおすすめです。いきなり「〇〇の絵を描こう」とテーマを出すよりも、まずは線を描く、面を塗る、形を描くなど、できることからひとつずつ取り組んでみましょう。絵が苦手なお子さまも簡単なステップから一歩ずつ進めることで自信がつき、絵画対策におけるモチベーションを保てます。

最初は、円、三角、四角といった単純な図形から練習しましょう。それらの形から連想して、まるいもの、三角のもの、四角のものなどへとアレンジしていくことで、表現の幅が広がります。動物や植物などを描く場合は、実物や図鑑などを参考にしながら描くのもおすすめです。ゾウやキリンなど特徴のある動物から描き始め、いぬ・ねこ・うさぎ・くま・きつねなど、「お話の記憶」によく出てくる動物も練習していきましょう。

人物を描く場合は、顔だけではなく全身を描ける必要があります。自分自身を描けるようになったら、お母さん・お父さんやほかの家族を描く練習をします。背の高さ、体形、めがねや髪の毛などのパーツで描き分けましょう。正面だけではなく、横向きや後ろ向きの人物が描けるようになると、さまざまなシーンや行動を描きやすくなります。

絵の主役となる動物や人物が描けるようになったら、背景を描き足す練習をします。室内なら家具や窓、自然や公園なら木・地面・空などが描けると、絵の状況を伝えやすくなります。

できあがった絵や工作を飾り、楽しく取り組めるような声かけを心がける

おうちで取り組んだ絵や工作は、家族が見える場所に飾りましょう。それから、「この絵は何をしているところ?」など質問をして、お子さまの思いを深堀りしていくのがおすすめです。もし気になるところがあっても、「ここはこうしたほうがよかったね」と指摘やダメ出しをするのはやめましょう。絵や工作のよいところを見つけてたくさんほめてあげることで、お子さまはさらに楽しく取り組めるようになります。例えば、「お母さんはこのお花の色が好きだな」とか「お父さんはこの車がかっこいいと思う」など、具体的なポイントを挙げてほめることで、お子さまも積極的に絵や工作について話してくれるようになるはずです。

「楽しい!」という気持ちや「できた!」という達成感は、お子さまのやる気を引き出します。もっと描きたい、もっと作りたいというモチベーションがあれば、ご家庭での絵画・工作対策を続けやすくなります。

絵画・工作対策は勉強のメリハリ作りにもおすすめ

ご家庭で絵画・工作対策を取り入れる際は、例えば「ペーパー試験対策のプリントが終わったらお絵かきの時間だよ」と習慣化するのもよいでしょう。絵画や工作がお子さまにとって息抜きや楽しいごほうびになれば、ご家庭での勉強全体にメリハリが出て、よりよい相乗効果が表れます。

絵画や工作に夢中になれれば、集中力も身につきます。親子で楽しみながら対策ができるよう、環境づくりや声かけを意識してみてください。

水島 なぎ

水島 なぎ

「書く・編む・正す ことばのよろず屋」を掲げる、フリーランスのライター・編集者。1985年生まれ、京都府在住。同志社大学文学部文化学科美学及び芸術学専攻卒。出版社で資格学習や学参分野のテキスト・問題集を企画編集していた経験をもとに、教育・育児、学術分野などのWebメディアの記事執筆や編集、書籍の編集を手がける。2017年に長女を出産した一児の母。

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