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小学校受験対策「行動観察」編 どんなポイントが評価される?ご家庭でできる行動観察対策のポイントも解説

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小学校受験において、「行動観察」を重視する学校は増加傾向にあります。どのポイントを評価するかは学校によって異なりますが、自由遊びや集団での遊び、勝敗が決まるゲームなどを通して、コミュニケーション能力や協調性、基本的なあいさつや待っている間の態度などに注目して評価されることが多いようです。おうちという慣れた環境で過ごすだけでは身につきにくく、プリント学習や問題集だけでは十分な対策が難しい分野でもあります。
この記事では、行動観察の出題形式や評価ポイントの例、家庭でも取り入れやすいトレーニングなどをご紹介します。

小学校受験の「行動観察」とは

行動観察とは、受験した子どもたちが合格後、小学校生活においてどのような行動を取れるようになるか、先生の指示通りに行動できるかなどを現時点で評価するものと考えられています。明確な出題基準は公表されていませんが、ほとんどの小学校で行動観察の評価が行われており、重視する小学校も増えています。特に、ペーパー試験を課さない「ノンペーパー校」では行動観察と面接などを重視しているとされています。

行動観察の出題方法はさまざまで、学校によって非常に多岐にわたります。よく出題されている形式のなかから、いくつか例を挙げます。

自由遊び

教室や体育館などで子どもたちを自由に遊ばせ、コミュニケーションや協調性を評価します。初対面の子どもに声をかけて一緒に遊べるか、誘われたときの態度や孤立した子への声かけのほか、用意された遊び道具の使い方や譲り合いができているかなどがチェックされます。

集団テスト(集団課題)

チームで指定された課題に取り組んだり、ゲームをしたりします。みんなで相談して決めた歌を歌ったり、ごっこ遊びをしたり、複数人で行うボール送りやジャンケンゲームをしたりと、出題内容は学校によってさまざまです。子ども同士で話し合い、役割分担をしながら課題を進められるか、意見がぶつかったときにどう対応するかなど、集団のなかでのコミュニケーション能力が評価されます。

共同制作

じゃんけんや玉入れなど、勝敗が決まるゲームを集団で行います。ルールをよく聞いて理解できたか、課題への取り組み方や意欲のほか、勝ったとき・負けたときのふるまい方も評価されます。

勝敗のあるゲーム

じゃんけんや玉入れなど、勝敗が決まるゲームを集団で行います。ルールをよく聞いて理解できたか、課題への取り組み方や意欲のほか、勝ったとき・負けたときのふるまい方も評価されます。

共同制作

数人のグループを作り、1つの作品をみんなで制作します。グループ決めの様子、テーマや制作方法について相談できているか、意見が食い違ったときにどうまとめるかなどが行動観察の対象となります。自分の意見を言えること、ほかの人の意見を聞けること、グループ内で相談して解決できることが大事です。また、制作中も道具の貸し借りや協力の様子など、子ども同士のコミュニケーションが評価されます。

学校によっては、グループ制作ではなく「自分が描いていた絵を、時間が来たらほかの受験者と交換し、続きを描く」という方法で出題されることもあります。何を描いていたのかを読み取ることで、自分以外の人の気持ちになれるかどうか、自分以外の観点でものごとを見ることができるかどうかが問われます。

運動

運動の試験中に、同時に行動観察を評価する学校もあります。ほかの子を応援したり、失敗した子を励ましたりする姿勢は高く評価されます。また、自分の順番まで指示された場所で静かに待てるかなども見られています。

行動観察ではどんなポイントが評価されているか

行動観察の加点の基準や試験内容ついてはほとんどの小学校で非公開となっていますが、長年にわたって小学校受験をサポートしている幼児教室には、評価される主なポイントや対策方法に関する知見が集まっています。行動観察で評価されているポイントの例を挙げてみましょう。

  • 基本的なあいさつや返事(礼儀)
  • 指示を聞くときや、待機しているときの姿勢や態度
  • ほかの子どもたちとの協調性
  • 課題に取り組む集中力や持続性(飽きずに取り組めるかどうか)
  • 勝敗や意見のぶつかり合いなど場面に応じたコミュニケーション能力
  • 自分の意見を発言できる提案力や、相手の意見を聞き入れる力
  • ほかの子どもたちと相談・協力しながら取り組む問題解決能力
  • 相手の立場に立って物事を考える思いやりの心

そのほかにも、積極性や忍耐力、自分のことは自分でできる生活力、社会性や人間性などが総合的に評価されているようです。指示されたルールをきちんと守れるか、勝敗のあるゲームの場合は勝ったときに相手を思いやれるか、逆に負けたときにふてくされず前向きにとらえられるかなども重要です。制作や運動などの課題を通して行動観察も行われる場合は、道具の扱い方や準備・片付け(洋服をたたむ、袋からものを出したりしまったりする)といった生活技能もチェックされています。

行動観察は合否にどのように影響するか

行動観察の評価基準は明確ではなく、学校によっては点数化していないことも少なくありません。大きく分けて、行動観察には次の2パターンがあると考えられます。

  • その学校にとって魅力的な子を見つける「プラス」の行動観察
  • 点数が競り合ったときに除外する子を決めるための「マイナス」の行動観察

前者の「プラス」の行動観察は、リーダーシップを取れる子やコミュニケーション能力の高い子など、学校に積極的に迎え入れたい子どもを選ぶという視点で評価されます。

後者の「マイナス」の行動観察は、ペーパー試験や運動、制作などで点数が競り合ったときに、行動観察において気になるところがあった受験者を残念ながら落とすという視点で評価されます。具体的には、自分勝手な行動を取る子やルールを守ろうとしない子、悪ふざけが過剰な子は、入学後に授業の妨げになる可能性があると判断され、行動観察における評価が低くなってしまうと考えられます。また、人見知りが激しい子や大人しくて意見が言えない子の場合は、課題に対する積極性が見られています。普段から子ども同士で遊ぶことに慣れておき、ある程度の積極性を身につけられるとよいでしょう。

もちろん、これらの評価はあくまで目安であり、学校によって行動観察の評価基準は異なります。出題傾向や幼児教室でのアドバイスなどを参考にしながら、お子さまに合わせて対策をしていくのがよいでしょう。

集団のなかでリーダーシップを取ったり、誰よりも目立ったりする必要はありません。集団の輪を乱さず「当たり前にできること」を目指しましょう。課題に一生懸命に取り組むあまり、道具の取り合いになったり、順番を守れなかったりすることもあります。意図せずケンカになってしまったときやほかの受験者同士のケンカを見かけたときに、どう対応するかは非常に注目されています。子ども同士で話し合って解決できるかどうか、譲り合いの気持ちを持てるかどうかは、集団生活に求められる社会性を持っているとみなされ、高い評価を得られると考えられています。

逆に、自分勝手な行動を取る子やルールを守ろうとしない子、悪ふざけが過剰な子は、入学後に授業の妨げになる可能性があると判断され、行動観察における評価が低くなってしまうと考えられます。一方、人見知りが激しい子や大人しくて意見が言えない子の場合は、課題に対する積極性が見られています。普段から子ども同士で遊ぶことに慣れておき、ある程度の積極性を身につけられるとよいでしょう。

行動観察対策には幼児教室や模試の利用がおすすめ

行動観察で高い評価を得るためには、志望校でよく出されている課題に慣れておく「課題慣れ」はもちろん、初めての場所でも緊張しない「場慣れ」や、初めてのお友だちとも仲良く遊べる「人慣れ」も重要です。幼児教室に通うと、普段過ごしている家庭とは違う場所で、ほかのお友だちとともにさまざまな課題に取り組めるので、行動観察対策として非常に役立ちます。

幼児教室の行動観察対策クラス

幼児教室のなかには、行動観察対策に特化したクラスを設けているところもあります。具体的には、自由遊びやグループ遊び、制作・巧緻性、ときには体操やお話作りなどさまざまな分野の課題に取り組みながら、行動観察に重要な積極性やコミュニケーション能力、複雑な指示にも対応できる対応力や思考力などを総合的に育みます。
幼児教室に通ったからといってすぐに成果が表れるわけではありませんが、実際の試験を想定した課題を通してさまざまな経験を積み重ねることで、行動観察において欠かせない能力が自然に身についていきます。
幼児教室によっては、志望校別のクラスや難関校向けの総合的な対策ができるクラスが設けられている場合もあり、志望校がある程度決まっている方にもおすすめです。

模試を行動観察対策に役立てる

大手幼児教室が主催する模試や、全国規模で開催されている模試を受けるのもよいでしょう。模試を受けることで実際の試験をシミュレーションにもなり、行動観察対策において重要な「課題慣れ」「人慣れ」「場慣れ」のよい機会となります。
また、ペーパーや運動、制作・巧緻性などと同様に、お子さまが現時点で行動観察においてどれくらいの評価が得られそうかの参考にもなります。例えば、理究エデュオが運営する全国規模の模試「全統オープン」では、「行動分野」の能力として社会性と忍耐力を評価します。社会性には言葉遣い、会話、返事、協調性、工夫努力という5項目が、忍耐力には姿勢、落ち着き、集中力、待つ、指示行動という5項目があり、お子さまの能力を把握するのに役立ちます。

行動観察対策としておうちでもできること

幼児教室や模試で対策するほか、日常生活のなかでの積み重ねも欠かせません。おうちでできる行動観察対策の例を2つご紹介します。

「お約束」を取り入れる

小学校受験の試験本番は、試験官である先生からさまざまな指示が出されます。指示をよく聞き、覚え、指示通りに行動できるかどうかも行動観察の一環です。それらを身につけるために、ご家庭で過ごすときに「お約束」を取り入れるのもおすすめです。
例えば、
「あと15分遊んだら、お片付けしようね」
「時計の長い針が12になったらおうちに帰るよ」
のように、時間とともに次の行動を指示します。お子さまが約束通りに行動できたら、しっかりとほめてあげましょう。これを繰り返すことで、時間になったら気持ちを切り替えて次の行動へ移るという訓練になります。

慣れてきたら、いくつもの指示を続けて伝えるのもよいでしょう。
「あと15分遊んだら、お片付けをして、お風呂に入ろうね」
「時計の長い針が12になったらおうちに帰って、手を洗ってからおやつを食べよう。その後はプリントをやるよ」
小学校受験の試験でも、複数の指示が続けて出されます。複数の指示を聞き、覚えて行動できるようになるためには、こういった訓練も役に立ちます。

他人の立場に立って考えるための声かけ

意見のぶつかりあいやケンカが起こったときに相手を思いやれるかどうかは、一朝一夕で身につくものではありません。だからこそ、他人の立場に立って考えられるようになるためには、日ごろから根気強く声かけをしていく必要があります。幼児教室でももちろんそういった経験を積むことはできますが、長い時間を過ごすおうちでの関わり方も大切なのです。

例えば、お友だちに対して何かいけない行動をしてしまったときは
「そんなことをしたらお友だちはどう思うかな?」
「もし自分が同じことをされたらどう思う?」
と、自分の身に置き換えて考えるよう促します。最初のうちは自分の気持ちばかりに目がいってしまうかもしれませんが、少しずつ相手のことを考えられるようになっていくでしょう。

また、お母さん・お父さんがお手本となり、相手を思いやる姿勢や、意見がぶつかったときに話し合いで解決する様子を見せることも大切です。普段からお子さまの話をしっかりと聞き、親の意見を押しつけないようにすると、お子さま自身も人の話をよく聞けるようになります。

さまざまな場所に出向いていろんな経験を積もう

おうちと幼児教室だけでなく、さまざまな場所に出向き、初めてのお友だちと遊んだり異なる世代と交流したりするのもおすすめです。地域のイベントや公園、児童館などに積極的に出向いて、お子さまが多様な価値観と触れあえる機会を増やし、さまざまな経験をさせてあげましょう。

行動観察対策は小学校生活やその後の人生にも役立つ

行動観察に必要な礼儀や生活態度、集団のなかでのコミュニケーション能力は、日ごろの生活や家庭の教育方針、日々のしつけを通して培われるものであり、一朝一夕で身につくものではありません。しかしながら、行動観察対策を通して身につけた能力や資質は、合格するためだけでなく、その後の小学校生活や将来的な人生においても糧になります。すぐに効果を実感できなくても、根気強く指導を続けましょう。

水島 なぎ

水島 なぎ

「書く・編む・正す ことばのよろず屋」を掲げる、フリーランスのライター・編集者。1985年生まれ、京都府在住。同志社大学文学部文化学科美学及び芸術学専攻卒。出版社で資格学習や学参分野のテキスト・問題集を企画編集していた経験をもとに、教育・育児、学術分野などのWebメディアの記事執筆や編集、書籍の編集を手がける。2017年に長女を出産した一児の母。

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