筑波大学附属小学校で毎年出題されている「クマ歩き」とは?小学校受験における評価のポイントや家庭での練習方法を紹介
小学校受験では、ペーパー試験や絵画・工作、行動観察などさまざまな分野が出題されます。運動の試験を課す小学校も多く、なかでも「クマ歩き」は筑波大学附属小学校をはじめ、複数の小学校で出題されている特徴的な試験内容といえます。この記事では、クマ歩きのやり方や家庭でできる練習方法、学校側がクマ歩きを通して何を評価ポイントとしているのかなどを解説します。
クマ歩きとは
クマ歩きとは、四つん這いになり、膝を地面に付けずに両手両足を使って歩く運動のことです。その動きが、動物のクマが歩いているように見えることから「クマ歩き」とよばれています。膝を地面に付けない四足歩行運動であり、匍匐前進やハイハイとは異なります。
クマ歩きは、両手両足で体を支えて全身の動きをコントロールする必要があるため、腹筋や背筋も含めた体幹が重要です。
出題方法は小学校によって異なりますが、指定されたコースをクマ歩きで歩いたり、走ったりすることが多いです。 コースの距離も学校によってまちまちですが、30m前後 のことが多く、マット運動や鉄棒などと組み合わせてサーキット形式で行われる学校もあります。
筑波大学附属小学校のほか、多くの小学校で出題されている
クマ歩きは、筑波大学附属小学校で毎年出題されています。筑波大学附属小学校は国立小学校であり、研究テーマのひとつに「運動」があることから、クマ歩きをはじめとする運動の試験が毎年必須となっているようです。 教育研究校として、心身ともに健康でバランスよく発達した児童を入学させたいのだと考えられます。
筑波大学附属小学校では例年、制作の試験の後に受験者を2つのグループに分け、体操と集団活動の試験が並行して行われています。出題形式は年度によって異なり、クマ歩きのほかに前転や鉄棒などを組み合わせて出題されることが多いようです。
また、試験内容の説明方法も年度によって異なります。担当教員が試技をすべて実践する年もあれば、途中まで実践してあとは口頭説明のみという年もあります。待機している間も、静かに待つのか応援しながら待つのかは担当教員によって指示が異なる場合があります。 試験官である担当教員の話を一度で聞き取り、指示された通りに行動できるかどうかも重要といえます。
筑波大学附属小学校といえばクマ歩きというくらいイメージが定着していますが、実はほかの小学校でもクマ歩きは出題されています。例えば、国立小学校ではお茶の水女子大学附属小学校や東京学芸大学附属小金井小学校 、私立小学校では慶應義塾幼稚舎や早稲田実業学校初等部などの大学附属小学校 などでも出題されています。
クマ歩きの評価ポイントは?
クマ歩きは、心身の発達や手足のコントロール、体幹などを総合的に評価するのに役立ちます。実際の小学校受験でも、クマ歩きのタイムが早い子のほうが必ずしも高く評価されるというわけではありません。 出題する小学校では、クマ歩きを通して次のようなことを評価していると考えられます。
- 全身のコントロール
- 基礎体力
- 集中力
- 課題に取り組む姿勢
また、運動学の観点からすると、クマ歩きは反射運動や基本運動の次の段階である協応運動に相当するとされています。協応運動は、より複雑な運動であるでんぐり返しや逆上がりといった熟練運動のベースとなります。クマ歩きを通して、 日常の動作だけでは身につかない協応運動ができているかどうかを見ている可能性もあります。
クマ歩きのコツと声かけのポイント
クマ歩きは匍匐前進やハイハイとは違って、膝を地面に付けない四足歩行です。手足を出す順番を難しく考えるよりも、動物のクマをイメージしながらとにかくやってみて慣れるほうが、子どもにとってはマスターしやすいかもしれません。
クマ歩きのコツや、声かけのポイントを3点ご紹介します。
①両方の手のひらを肩幅に開き地面につけること
手首をケガしないよう、両方の手のひらをしっかりと地面につけるようにしましょう。手をつく位置は、肩幅か肩幅よりやや広めにすると安定します。 両手の感覚が狭すぎたり、開きすぎたりすると、バランスを保ちにくくなるので注意しましょう。指は開きすぎず、指先がやや内側を向くように地面に付くことで、ひじが曲がりにくくなります。
腕で体を支え切れていない子や手の付き方がわからない子には、「手をしっかり地面につけようね」「腕が開きすぎだよ」などの声かけがおすすめです。
②内またにならず、お尻の位置を高くすること
両足をしっかり開き、内またにならないように気を付けましょう。内またになると膝が曲がり、お尻の位置が下がってしまってスムーズに進めなくなります。つま先をやや外に向けるのがポイントです。
膝をついてしまう子や内またが癖になっている子には、「足を開いてね」「お尻が下がってきたよ」などの声かけがよいでしょう。
③あごを上げ、視点はゴール(進行方向)を見ること
手や足を含む姿勢だけでなく、クマ歩きの最中の視点も重要です。顔を前に向けあごを上げることで、クマ歩きの正しい姿勢を維持できます。 視線が下向きになってしまうと、お尻を上げたときに体重が手にかかり、前に転倒しやすくなります。 手や足の動きを見ようとするとあごが引けてしまい、視線も下がるので注意しましょう。
視点が下がってしまう子には、「ゴールを見てね」と声かけをするほか、視点の目安となるようにゴール付近に目印を置くのもおすすめです。
手取り足取り教えるのではなく、繰り返しやってみることが大切
コツや声かけのポイントをご紹介しましたが、お子さんのやる気や集中力を大事にしながら取り組むことも大切です。うまくいかないからと手取り足取り教えるよりも、繰り返しやってみることでだんだんとできるようになります。横向きや後ろ向きなど、遊びの要素を取り入れるのもよいでしょう。 声かけは必要なときだけに簡潔に伝えるようにして、うまくできたときに思い切りほめてあげるようにしましょう。
実際のクマ歩きのお手本は、こちらの動画も参考にしてください。
わかぎり21 クマ歩き 歩き方
YouTube小学校受験 【運動】クマ歩きの基本
「できた!」が増える 筑波大学附属小学校 体育授業のタネあかし ~なわとび・跳び箱運動・鉄棒運動・マット運動~ Disc4 sample
クマ歩きの家庭での練習方法3選
クマ歩きをマスターするには、小学校受験に特化した体操教室や、幼児教室の体操コースなどに通うのがおすすめです。クマ歩きのやり方だけでなく、実際の試験に必要な指示行動の聞き取りや待機中のふるまいなども一緒に学ぶことができるためです。
そのうえで、ご家庭でクマ歩きの練習をする場合は、以下の方法も取り入れてみてください。
手押し車
腕立て伏せの体勢になってもらい、お父さんかお母さんがお子さんの足を持ちます。足首のあたりか、膝が曲がってしまう子の場合はすねのあたりを持ってあげるのもよいでしょう。そのまま腕を交互に出して前に進むのが「手押し車」です。
手押し車は腕で体を支える練習になりますし、腕の力や腹筋を鍛えるのにも役立ちます。手をできるだけ遠くにつくようにすると、前に進みやすくなります。最初はゆっくり進み、慣れてきたら手を素早く前に出す練習も取り入れましょう。 手押し車を行う際は、顔から地面に転ばないように注意してください。
トラのポーズ
マンションなどにお住まいの場合、クマ歩きや手押し車の練習は騒音が気になるかもしれません。そんなときは、クマのポーズのまま片手片足を交互に上げる練習がおすすめです。
まずは、両手両足を地面に付けて肩幅程度に開き、基本のポーズになります。お父さん・お母さんが「右手あげて」「左足あげて」と声をかけ、その手足をピンと伸ばすという練習です。 片手と、その対になる足をピンと伸ばしたときは、ヨガの「トラのポーズ」に似ています。
思い通りに手足を動かす訓練にもなりますし、体幹を鍛えることにもつながります。 おうち遊びの一環として楽しみながら取り組んでみましょう。
日常生活や外遊びもおすすめ
子どものうちは上半身や手を使う経験が少ないため、足と比べて鍛えにくいといえます。例えば、自分の荷物を自分で持たせたり、 買い物に同行してもらい荷物持ちを手伝ってもらったりするのもよいでしょう。
ご家庭でのお手伝いとして、雑巾がけを取り入れるのもおすすめです。 雑巾がけの姿勢はクマ歩きに近く、姿勢や視点を維持する練習にもなります。
また、普段から外遊びをたくさん取り入れましょう。公園の遊具を使ったり、外でのびのびと遊んだりすることで、体を思い切り動かしいろいろな運動に対応できるようになります。外遊びは体幹を鍛えるだけでなく、手足の筋力や基礎体力を育むのにも役立ちます。
クマ歩きの練習は楽しみながら取り組もう
クマ歩きは、筑波大学附属小学校をはじめ国立・私立の小学校受験に特徴的な試験内容といえます。試験対策として取り組むのはもちろん、基礎体力の向上や体幹トレーニングとして、またおうち遊びの一環として取り組むのもよいでしょう。クマさんごっこや競争などを取り入れ、楽しみながら取り組むことで、お子さんのモチベーションも高まります。なお、ご家庭で練習する際には床に物が落ちていないことを確認し、広いスペースを確保して安全に配慮しましょう。
そのほかの運動対策は、こちらの記事もご覧ください。