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アフォーダンスとは?子どもにとってのアフォーダンスや事例、おうちモンテッソーリについて解説

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アフォーダンスとは、環境が動物に与える意味や価値のことであり、人間の認知や行動を誘発する要素です。子どもにとってもアフォーダンスは重要であり、発育や学習に影響を与えます。この記事では、幼児教育の一環として、子どもにとってのアフォーダンスやその活用例についてご紹介します。

アフォーダンスとは

アフォーダンス(affordance)とは、「環境が動物に与え、提供している意味や価値」です。J・ギブソン(1904~1979年)が提唱しました。環境が情報を提供することで、人間の認知や行動が誘われる(アフォードする)ことから、アフォーダンスの概念が確立されました。また、アフォーダンスには「環境と行為の同時性」の特徴があり、例えば「すり抜けられる(隙間)」「登ることができる(壁)」「つかむことができる(もの)」のように、行為と環境を同時に表現していることがわかります。※1

アフォーダンスは、利用者がそれを認識し、適切に活用することで、行動や操作が可能になります。私たちが日常的に行っているさまざまな行動は、物体や環境が持つアフォーダンスによって可能になっています。例えば、椅子に座るという行動は、椅子の形状や高さなどのアフォーダンスによって実現されます。ドアの取っ手を例に挙げると、丸い形状であれば回すという動作が、平らな形状であれば押すという動作が、溝があれば左右に引くという動作が対応します。ただし、ドアの取っ手がアフォードするのは「ドアを開ける」というひとつの行動だけではなく、「ドアを蹴破る」「開くのを待つ」といったさまざまな選択肢が存在します。

また、アフォーダンスは明示的なものだけでなく、暗黙的なものも含んでいます。明示的なアフォーダンスとは、物体や環境が直接的に示す手がかりや機能です。例えば、信号の色や形状は道路横断時のアフォーダンスとして機能します。一方、暗黙的なアフォーダンスとは、周囲の状況や文脈から判断される手がかりや機能です。例えば、道路横断時には車の音や速度なども判断材料となります。

アフォーダンスデザイン

見ただけで役割がわかるデザインや、見ただけで何か決まった扱いをしたくなるデザインのことを、アフォーダンスデザインといいます。

例えば、ペンがあったとして、おそらく大半の人が尖ったほうを紙につけて字を書こうとするでしょう。これはペンの形状が「こっちが書くほうである」と私たちを導いている、つまり外観によってそう使いたくなるような情報をアフォードしているからです。

また、昔のペットボトルはくびれのない寸胴な形でしたが、今では中央上部にくびれた部分を作るのは常識といえます。そのおかげで、私たちはパッと見たときにペットボトルのくびれた部分を持とうとします。これもアフォーダンスデザインの一種です。

アフォーダンスデザインは、文字やサインなどの表記に頼らずに特定の環境を作り出し、人間の行動をある特定の行為に導くことができます。同時にそれは、説明書などが要らないプロダクトであるといえるでしょう。直感的に使用方法がわかると便利な点がたくさんあります。※2

子どもにとってのアフォーダンス

アフォーダンスは、子どもの発育や成長においても非常に重要です。子どもはまだ世界を探索し、新しい経験を通じて学びを得る段階にあります。そのため、幼児教育では、適切なアフォーダンスを持つ環境に身を置くことが大切です。

子どもに対して提供されるアフォーダンスは、子どもの興味や能力に合わせて適切に設計される必要があります。例えば、創造的なおもちゃや教材を提供することは、子どもの創造性や問題解決能力を促進するアフォーダンスとなります。子どもは想像力が豊かで、自分の思いついた遊び方や使い方を試したいという欲求を持っています。幼児期には多様なおもちゃや教材を提供し、自由な発想や表現を引き出すように働きかけましょう。

また、自由な遊びの時間やグループ活動の機会を提供することも、子どもが自己表現や社会性を発展させるためのアフォーダンスとなります。子どもはほかの子どもとの交流を通じて、コミュニケーション能力や協力性を培います。グループ活動では、子ども同士が意見を出し合ったり、協力して課題に取り組んだりすることで、自己肯定感やチームワークを養うことができます。

子どもの発達段階や特性を理解し、適したアフォーダンスを提供するために、観察や対話を通じて彼らの興味や関心を把握することが重要です。子どもは個々に異なるペースで成長し、興味や関心も異なります。そのため、一人ひとりに適したアフォーダンスを提供することが求められます。子どもの行動や反応を観察し、興味を持って取り組んでいることや得意なことを把握することで、適切なサポートや刺激を提供できるようになります。

幼児期におけるアフォーダンスの活用例

遊具・玩具

子どもがアクティブに遊べるよう、さまざまな遊具を提供することで、身体的な発達や運動能力を促進します。例えば、ブランコやすべり台などの遊具を設置すると、子どもたちが楽しみながらバランス感覚や協調性を養うことにつながります。また、室内でも使用できるボールプールやジャングルジムなどの遊具を提供することで、安全な環境で自由に遊べます。室内遊びとしては、子どもの創造性を引き出すために、積み木やぬりえなどを提供するのもよいでしょう。

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自然の多い環境

自然の中で遊ぶことは、子どもの想像力や探求心を刺激し、創造性を育みます。子どもにとって、木々や花々を見たり実際に触れたりすることは、新たな発見や学びの機会となります。そのため、幼児教育では自然環境を活用し、野外活動や自然観察などを取り入れることが大切です。子どもと一緒に自然に触れる機会を提供し、自然の中での体験や観察を通じて興味や関心を引き出しましょう。また、葉っぱや木の枝など自然の素材を使った工作や、草花や野菜を育てる園芸活動なども、子どもの創造性を刺激する有効な方法です。

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勉強に適した環境

  1. 子どもに合わせた低い机や椅子を用意する
  2. 勉強に適さないものを遠ざける(例:テレビのリモコンを手の届かないところに置く)
  3. 勉強に適したものを近くに配置する(例:文房具や教材をすぐに取れるところに置く)

子どもは好奇心旺盛で、新しい知識を求める欲求があります。図鑑や地図、辞書などがすぐに手に取れる場所にあると、子どもの学習意欲を高めることができます。図鑑は動物や植物についての知識を深めることができますし、地図や辞書を使って地名や言葉の意味を調べるのもおすすめです。図鑑や地図、辞書などを通して、子どもはさまざまな知識を身につけていきます。子ども向けの図鑑や辞書を選ぶ際には、子どもが一人でも読めるように、わかりやすいイラストや言葉が使われているものを選ぶのがよいでしょう。

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アフォーダンスとおうちモンテッソーリ

アフォーダンスは、おうちモンテッソーリを行いたい方にも活用できます。アフォーダスを活用しておうち遊びや「お仕事」をスムーズに行うためのポイントを紹介します。

年齢に合わせてものを出し入れしやすく配置する

0~3歳:部屋に置くものは、子どもが触っていいものだけにします。危険なもの、触って欲しくないものは隠しましょう。また、2歳半頃になると、手先を使って細かい「お仕事」ができるようになるので、机と椅子を用意してあげるのがおすすめです。「お仕事」に適した環境を用意することで、自然と集中力も養われます。※3

3~6歳:この年齢では、目に見えない=存在しないと認識するので、扉やボックスでものを隠すのではなく、視覚優位の時期に合わせた見せる収納にしましょう。また、子どもと共用のものは子どもサイズに統一し、年齢に合わないおもちゃは片付けます。※3

インテリアに使うカラーを厳選する

おもちゃや教具、絵本にはカラフルなものが多いので、おうちのインテリアは少し控えめにするとバランスが良くなります。家具や雑貨に使われているカラーをできるだけ統一して3~4色に絞ることで、子どもの視界が混乱しないように工夫しましょう。※3

ラベリングをする

ものの定位置をわかりやすく表示することで、お片付けがスムーズになります。それぞれのおもちゃや道具を置いておく場所に、もののイラストをラベルとして貼ることで、子どもにも感覚的に理解できます。※3

ものはいつも同じ場所に配置する

子どもは視覚からの情報でものの場所を覚えていきます。「いつものものが、いつもの場所にある」ことは子どもにとって安心感につながります。※3

ものを持ちすぎない

子どもは選択肢が多すぎると頭が混乱し、片付けるのも面倒になってしまいます。所有するものは、子どもが自分で選び取れる量だけにすることが重要です。収納スペースの7~8割を目安に、使わないものや年齢に合わないものは手放すのがおすすめです。※3

できるだけ自然素材を選ぶ

木はぬくもりがあり、ガラスは冷たいといったように、子どもは五感のうち「触れる」という感覚から、ものの情報や性質を学んでいます。自然素材のものを使うことで、感覚器官がより発達します。※3

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キッズデザイン・ラボの『こどもOSランゲージ』

特定非営利活動法人キッズデザイン協議会の、アフォーダンスを活用した事例をご紹介します。キッズデザイン協議会の調査研究部会であるこどもOS研究会では、子どもの行動観察を通して気づいた子どもたちに特有の行為を、代表的な22のデザイン共通言語『こどもOSランゲージ』として抽出し、「プレイフル・デザイン・カード」としてまとめました。子どもに特有の行為から起こる危険を知り、回避するのに役立つので、いくつか紹介します。※4

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通り抜ける路地:住宅の壁の隙間や細い通路を通り抜けたくなる
くぐりぬけ:フェンスの破れ目や生け垣の間などをくぐり抜けたくなる
登らせるかたち:よじ登れそうな場所を見つけると登りたくなる
対岸へ:溝や穴があれば飛び越えたくなる
アンバランス:不安定なところに乗ったり回転したくなる

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まとめ

アフォーダンスの活用により、子どもの成長や学びにさらなる豊かさをもたらしたり、危険を回避したりすることができます。お父さん・お母さんには、お子さんの個別の特性や興味を踏まえながら、適切な環境や教材を提供し、可能性を最大限に引き出すサポートが求められます。子どもにとって魅力的なアフォーダンスを提供し、自己肯定感を高め、学びの喜びを体験できるようにしてあげましょう。

参考資料

※1 寺床勝也, 浅野陽樹, 川西,基博. (2022). アフォーダンス理論による環境と遊びの関わり(Ⅰ) : 幼児向け木育遊具を事例として. 鹿児島大学教育学部研究紀要. 特別号, 1, 79-99.
※2 村田 智明. (2015). 問題解決に効く「行為のデザイン」思考法. CCCメディアハウス.
※3 主婦の友社(編集). (2023). おうちモンテッソーリ インテリアBOOK. 主婦の友社.
※4 特定非営利活動法人キッズデザイン協議会 子どものハザード予測と子どもから学ぶ創造性の研究

プレ・エデュ編集部

Pre edu編集部

Pre eduの企画・執筆・編集をしています。小学校受験や幼児教育に関する情報をお届けします。

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