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小学校受験の試験内容とは?ペーパーや行動観察、運動、絵画・工作の対策や勉強方法を解説

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小学校受験では、学校の特色に合わせてさまざまな試験内容が出題されています。例えば、ペーパー試験、行動観察、運動、制作・巧緻性、面接・口頭試問などが挙げられます。ただし、必ずしもすべての項目が出題されるわけではなく、出題傾向は小学校によって異なるため情報収集が欠かせません。
この記事では、小学校受験において一般的によく出題される試験内容をご紹介します。各目の対策や勉強方法についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

ペーパー試験(お話の記憶、図形、数、常識、言語、推理思考)

ペーパー

「お受験」と聞いて多くの方が思い浮かべるのが、紙の試験用紙に書かれた問題を解くペーパー試験でしょう。小学校受験においてもペーパー試験を課す学校は多く、さらにいくつかの出題分野に分けられます。主な出題分野を対策や勉強方法とともにご紹介します。

ペーパー試験の出題分野 ①お話の記憶

お話を聞き取り、その内容に合う回答を選択する問題です。お話は試験会場で読み上げられるほか、録音された音源が再生される場合もあります。言語領域の発達はもちろん、集中力や想像力、話の聞き取りや理解力などが求められ、ペーパー試験を課す多くの学校で取り入れている最重要分野です。
短いもので100文字程度、長いものだと1,000文字を超えるお話が出題されます。お話に登場した情景を記憶し、登場人物が身に着けていたものの色や歩いた道順などが問われるほか、季節の知識や数の問題と組み合わせた問題が出題されることもあります。
学校によっては、「映像の記憶」や「絵の記憶」など視覚的な情報を元に出題するところもあります。

お話の記憶の勉強方法としては、日常的な絵本の読み聞かせが効果的です。お子さまの発達段階や集中力に合わせて適切な長さのお話を選び、読むスピードを調整しながら聞き取れるペースで読み聞かせを行いましょう。
ただ絵本を読むだけではなく、「どんな動物が出てきたかな?」など、お話を振り返るような質問をするのもよいでしょう。絵本を読む前に「どんな動物が出てくるか後で聞くから、お話をよく聞いていてね」と、どこに注目して聞けばよいのかあらかじめ伝えるのもおすすめです。

ペーパー試験の出題分野 ②図形

図形の問題も、多くの学校で出題される頻出分野です。同じ図形を探す「同形発見」、図形を回転させたときにどんな形になるかを選ぶ「回転図形」、鏡で反転させた図形を探す「鏡図形」または「線対象」、複数の絵や形を重ねるとどうなるかを問う「重ね図形」など、さらに細かい単元に分類されます。
複数の選択肢から正しいものを選択して丸をつける回答方式のほか、足りない部分を描き足す形式もあります。

平面、線、展開図などさまざまな図形が出題されるので、空間認知能力や観察力のほか、目に見えない部分を推測する想像力も求められます。積み木やブロック、折り紙、パズルなど立体や平面の具体物を取り入れてそれらの能力を育みましょう。いきなり実際の問題に取り組むのではなく、まずは具体物で遊びながら、図形や空間に慣れることが大切です。その後、単元別の問題集や志望校の過去問にチャレンジし、少しずつ自信をつけていきましょう。

ペーパー試験の出題分野 ③数

ものの数を数える「計数」や、数の大小を比べる「数の比較」がよく出題されています。数式は出題されませんが、10までの数を足したり引いたりする「数の増減」や、割り算の概念を含む「数の分割(分配)」が出題されることもあります。
数の問題では、計数や計算ができるかだけではなく、読解力も求められます。なぜなら、「1+2」や「5-3」といった数式を解く以前に、「1つのりんごに2つのりんごをくわえたらいくつになりますか?」といった出題文章をきちんと理解する必要があるからです。

数の問題の勉強方法としては、おはじきやビー玉などの具体物を使った遊びがおすすめです。おはじきを並べて何個あるか数える練習をしたり、数えた後にさらにおはじきを加えて足し算の練習をしたり、お子さまの発達にあわせて工夫してみてください。

お店屋さんごっこやお買い物ごっこも、よい学びの機会となります。例えば、お父さんやお母さんは「りんごを3つください」と声をかけ、お子さまに「1、2、3」と数えてもらいながらカゴに入れてもらうのもおすすめです。ほかにも、お風呂から上がる前に20まで数える、お手伝いのなかでお皿やおやつを数えて配るなど、日常生活を通して数に親しむのもよいでしょう。

数を数えることができるようになり、簡単な足し算・引き算にも慣れてきたら、実際の問題集や志望校の過去問に挑戦して出題形式に慣れていきましょう。最初はおはじきなどの具体物を使って問題を解き、慣れてきたらペーパー上で解けるように練習します。

ペーパー試験の出題分野 ④常識

常識の問題では、動物・植物などの自然や乗り物・道具などの知識、野菜や果物の旬、季節ごとの行事・イベント、電車に乗るときのマナーなど幅広い内容が出題されます。例えば自然に関する問題では、花と葉っぱの正しい組み合わせを答える形式のほか、描かれている草花のなかから異なる季節のものに丸をつける「仲間外れ」の形式で出題されています。

常識の問題を学ぶためには、知識として暗記させたり一方的に教えたりするのではなく、お子さまに実際に体験させるのが一番です。例えば、お散歩をしながら「たんぽぽは春のお花だよ」「夏だからセミが鳴いているね」といった会話を通して、季節感や自然の豊かさを学んでいきましょう。お正月やこどもの日、七夕といった季節の行事をご家庭で祝ったり、バスや電車に乗りながらマナーを教えたりするのも大切です。こういった常識は短期間で詰め込んで覚えるというよりも、普段の日常生活を通して自然に身につくものです。お子さまにさまざまな体験をさせること、親子で積極的に会話することを意識しましょう。

試験対策としては、問題集や志望校の過去問に挑戦して実際の出題方式に慣れる必要があります。正しいものを選択する、正しい順番に並べ替えるなどさまざまな回答方式があるので、実際に解きながら試験の形式に慣れておきましょう。

ペーパー試験の出題分野 ⑤言語

言語の問題では、動植物の名称、しりとり、動詞・助詞の理解、始まりの音・終わりの音、反対言葉、擬音語・擬態語などが出題されます。物の名称を知っているかどうかだけでなく、問題文を理解し、自分の言葉できちんと答える能力も求められます。
日本語の一般常識のほか、表現力を問う学校もあり、複数のイラストを見せて「この絵を使ったお話をつくりましょう」といったお話作りが出題されることもあります。

言語はこれまでに紹介してきた「お話の記憶」や「常識」にも関連するため、特に重点的に対策を行いたい分野です。「図形」や「数」などほかの分野でも問題文を理解するために読解力が求められますし、自分の言葉で答える能力は後に紹介する「面接」にも役立ちます。このように小学校受験の試験内容全般に関わるので、「言語」の分野は早い段階から準備しましょう。

言語の問題の勉強方法として、まずは絵本の読み聞かせや音読、しりとりなどを取り入れてみてください。物の名称を覚えて語彙力を増やすために、お風呂にポスターを貼ったり図鑑をながめたりするのもよいでしょう。
幼稚園や保育園から帰宅した後に一日の振り返りをしたり、お子さまが描いた絵を見ながら「これは何をしているところかな?」と聞き取りを行ったりするのもおすすめです。親子の時間を過ごしながら、お子さまが自分の言葉で話すトレーニングにもなります。

ペーパー試験の出題分野 ⑥推理思考

推理思考では、イラストで示された状況や事象を総合し、法則を理解して、次に起こることを予測(推理)する問題が出題されます。場面の状況を覚える記憶力や、何を問われているかを正確に把握する理解力、次に何が起こるかを予測し考える思考力などが求められます。
観覧車やルーレット、立方体の積み木などをある方向に回転させ、結果を推理する「回転推理」や、シーソー(天秤)に乗ったくだものや動物の重さを推理する「つりあい」、鏡に映ったときの正しいイラストを選択する「鏡図形」、図形の並びや変化の法則性を考える問題など、さまざまなタイプの問題が出題されています。

推理思考の問題を解くためには、空間認識能力が欠かせません。普段から積み木やおもちゃなどの具体物を使う遊びを取り入れるのはもちろん、問題を解くときにも具体物を活用するのがよいでしょう。ペーパーの上だけで説明しても、子どもにとってはなかなか理解しづらいので、観覧車やルーレットなどは紙を丸く切って回転する模型を作ってあげるのもおすすめです。鏡図形の問題は、実際の鏡を用意すると理解が深まります。

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行動観察

ゲームや遊びを通して子どもの行動を観察し、コミュニケーション能力や周囲への配慮、リーダーシップや協調性のほか、あいさつや言葉遣いなどの生活態度、子どもごとの特性などさまざまなポイントに注目して評価します。どのポイントを評価するかは学校によって異なりますが、行動観察を重視する学校は増加傾向にあります。
具体的には、初対面同士の子どもたちを集めてグループを作り、積み木遊びやパズル、ごっこ遊びなどを行います。じゃんけんや玉入れなど、勝敗を決める簡単なゲームが行われることもあります。勝ち負けが決まったときに子どもがどう振る舞うか、気持ちの切り替えができるかなどがポイントとなります。

普段の生活態度がそのまま表れる行動観察は、具体的な勉強方法や試験対策が難しい分野です。社会性を育む機会を設ける必要がありますが、まずは基本的なあいさつや返事ができるようになりましょう。特に、人見知りをしてしまう子の場合は公園や児童館などへ行って、初対面の子どもと遊ぶ機会を作るのもよいでしょう。

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運動/指示行動

ジャンプやスキップ、ケンケンパなどの運動を通して、子どもの運動能力や課題に対して一生懸命に取り組む意欲などをチェックします。さらに、指示を聞き取って行動できるかどうかや、順番を待っているときの態度なども評価ポイントとなります。いすとりゲームや鬼ごっこなどルールのある遊びを取り入れる学校のほか、特定のコースに沿ってさまざまな運動を組み合わせた「サーキット運動」や、両手足を曲げずに床について歩く「クマあるき」など独自の形式で出題されることもあります。

対策としては、まず外遊びやお散歩を通して基礎的な体力づくりに励みましょう。運動系の習い事に通うのもおすすめです。スキップやケンケンパなどの具体的な運動は、発達にあわせて少しずつ訓練します。いきなり難しい課題に挑戦するのではなく、ステップごとに達成できたらほめてあげることも大切です。

なお、運動の試験を通して、試験官の話を一度で聞き取り指示通りに行動できるかどうかを問う「指示行動」を評価する学校もあります。指示行動は「運動」だけではなく、「行動観察」や「制作」の一環として行われることもあります。指示通りに行動する力は短期間で養えるものではないため、普段の日常生活を通して大人の指示を聞き取る力を養いましょう。

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絵画・工作・巧緻性(こうちせい)

絵画や工作を通して、巧緻性や想像力、表現力などを評価します。巧緻性とは、手先や指先をうまく使えるかどうかです。自由に制作させる出題形式もあれば、あらかじめテーマが指定されており、想像力や理解力も合わせて評価する形式もあります。グループ制作を行う試験では、ほかの子どもたちとの協調性やコミュニケーション能力も求められます。さらに、制作中の様子や態度をもとに「行動観察」や「指示行動」の評価を行う学校もあります。
絵画や工作のほかにも、お箸を使って豆を移動させたり、洋服をたたんだりする試験が出題されることもあるため、志望校の出題傾向をリサーチすることが重要です。

道具を使わずにできる巧緻性のトレーニングとして、折り紙やちぎり絵などが挙げられます。発達に応じて、ハサミやノリ、テープなどの道具の使い方も練習していきましょう。
絵画制作が出題されることも多いので、クレヨンや絵の具を使ったカラフルなお絵描きや塗り絵に取り組むのもおすすめです。自由にお絵描きさせたり、あらかじめ「動物」や「花」などのテーマを与えたりするのもよいでしょう。
紐通しや積み木などの遊びも手指のトレーニングになります。蝶々結びが出題されることもあるので、紐やリボンを使ったお人形遊びも効果的です。また、靴のぬぎはきやお着がえ、お箸やスプーンを使った食事などの日常生活も、巧緻性を鍛えるのに役立ちます。

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面接

多くの小学校では、入学試験の一環として面接を行います。子どもひとりで行う面接のほか、保護者のみへの面接や親子が同席して行う親子面接もあります。
志望動機や入学への熱意はもちろん、小学校の校風とご家庭の教育方針がマッチしているかなど、入学後の学校生活を想定して質問されます。

ご両親に対してよく聞かれる質問には、以下のようなものが挙げられます。

  • 志望動機
  • 通学手段
  • 家庭の教育方針
  • 学校生活に期待するもの
  • 子どもの性格や長所・短所
  • 幼稚園での過ごし方や生活面について
  • 子どもが好きなことや得意なこと
  • 親子でどんな遊びや会話をしているか など

ほかにも、お父さん・お母さんがそれぞれご家庭でどんな風に協力しているか、社会問題や教育問題などのトピックスへの興味関心など幅広く尋ねられます。日ごろから家庭内で教育方針についてよく話し合い、時事問題にもアンテナを張っておく必要があります。

また、子どもに対してよく聞かれる質問には、以下のようなものが挙げられます。

  • 名前、年齢、家族構成などの自己紹介
  • 幼稚園の名称、先生やお友だちの名前
  • 好きなものについて(食べ物、絵本、遊びなど)
  • 将来の夢 など
    • ほかにも、「お友だちとケンカしたときはどうしますか?」など普段のコミュニケーション能力に関する質問や、「最近、家族でどこへ出かけましたか?」など家庭生活を尋ねる質問、さらに「電車に乗っているときにやってはいけないことは何ですか?」のような「常識」の問題と組み合わせた質問などもあります。
      回答内容ももちろん大切ですが、質問された内容を聞き取り理解できるか、ハキハキと答えられるか、正しい姿勢で面接に臨めるか、きちんとあいさつができるかなども重要です。

      情報収集と日々の生活の積み重ねが重要

      小学校受験は、親子二人三脚で臨みます。ご両親は志望校や試験内容への情報収集はもちろん、勉強の計画や環境づくり、勉強の習慣づけなどをサポートしましょう。
      試験対策として特に重要なのは、志望校の情報収集です。なかにはペーパー試験がなく運動や制作、行動観察や面接などを重視するノンペーパー校もあり、プリント学習だけでは十分な対策が難しいケースもあります。どういった試験内容でどのような対策が必要かを知るためにも、志望校の情報収集を十分に行いましょう。

水島 なぎ

水島 なぎ

「書く・編む・正す ことばのよろず屋」を掲げる、フリーランスのライター・編集者。1985年生まれ、京都府在住。同志社大学文学部文化学科美学及び芸術学専攻卒。出版社で資格学習や学参分野のテキスト・問題集を企画編集していた経験をもとに、教育・育児、学術分野などのWebメディアの記事執筆や編集、書籍の編集を手がける。2017年に長女を出産した一児の母。

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